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宇宙漂流記  作者: 夜神 颯冶
タイムクライム  
15/17

12:33

 

「あっ大丈夫だよ。

 ありがとう」



そう言って立ち上がると、

俺はおもむろに少女の頭をでた。



少女の頭に手がれようとした瞬間、

少女の頭につけていたリボンが、

突然僕からのがれるように上空にっていた。



舞うと言うのは浮遊ふゆうしてると言う意味じゃなく、

そのまんまちょうのように優美ゆうびに羽を羽ばたかせ、

飛んでいたのだ。



少女の頭に手を置いたまま唖然あぜんとそれを

見つめていると、

少女がつぶやいた。



『リボンめずらしい?』



「リボンはめずらしくないけど飛ぶのはね。

 君のリボン飛ぶんだね」



初対面で変な会話だが、事実だからしかたない。



『リボン飛ぶ常識じょうしき

 認識にんしきあらためる』



彼女は当然だと言わんばかりに、

こちらを見つめていた。



いや実際は機械のゴーグルで、

目線はわからないのだが。



「了解。

 リボンは飛ぶと認識」



そう言いながらも呆気あっけにとられている俺に、

彼女は小さく不満ふまんをぶつけた。



『手をどけて』



少女のその言葉に、

自分が少女の頭に手をのせたままだったのに気付き、

あわてて手を引っ込める。



「ごめん」



認識にんしきあらためる。

 あなたは危険人物。認識』



第一印象最悪!?



・・・



「あのさあ、僕は時輪ときわ彼方かなた

 ここの生徒であやしい者じゃないよ・・・ 」



・・・



ますますあやしくなってしまった・・・



「君の名は・・・ 」



『お父さんが不審者ふしんしゃには名前を教えたら

 ダメだって』



ノォぉぉお────────!!



苦悶くもんする俺をじっと見つめたまま彼女は、

静かに続けた。



『追いかけなくていいの?』



その言葉にふとわれにかえる。



そうだ、チェンバーを盗まれたんだった!?



辺りを見渡すとすでに盗人少年の姿は、

その場から消えていた。



慌てて辺りを見渡す俺を、

少女がツンツンとつついてきた。



信じられない場所からその刺激を感じる。



彼女は僕の股間こかんの辺りをつついていた。



「はっにゃ!?」



国際交流になれてない僕は変な声を出して、

飛びのいてしまった。



彼女の国ではこれが普通なのか?



彼女は???マークを浮かべ、

そんな僕の股間のあった辺りを見つめたまま

喋っていた。



「どうしたの?」



その不自然さにある仮説が浮かんだ。



「君、もしかして目が見えないの?」



『うん、見えないけど見える』



まるで謎かけのような答えがかえってきた。



「見えないけど見えるとは?」



彼女は自分の装着したゴーグル型機械を指差す。



『これ。バイザー。

 目は見えないけどこれしてると、

 映像が直接脳に電気信号として送られ、

 脳内で像をつくって見えるようになる。

 でも欠陥けっかんもある。近くは見にくい』



医療大国いりょうたいこくキューバの技術には、

そんなものがあると聞いた事はあるが、

見るのは初めてだ。



不便ふべんじゃない?」



『不便? 大丈夫。

 普通に裸眼らがんで見てる人より良く見える。

 たとえばその人の骨の形とか、内臓の形、

 生殖器せいしょくきの形もわかる』



プライバシーゼロ!?



『カナタ、

 それより疑問ぎもんの答え、まだ聞いてない』



いや、今はそれより犯人を追いかけなければ。



股間こかんおさ悶絶もんぜつしてたのはなぜ?』



少女の稚拙ちせつで純真なその質問に、

回りの目が集まる。



まて!まて!まて!


ストップ、ストップ!?



だが彼女の疑問は止まらなかった。



想定そうていされる可能性は44個。

 1つ、

 あなたは幼女に性的興奮せいてきこうふんを覚える変態。

 2つ、

 あなたは幼児おさなごをこよなく愛する変態。

 3つ、

 あなたは幼女を見て妄想を膨らませる変態。

 4つ、

 あなたは・・・ 』



「もういい、もういい!」



彼女はどうしても僕を変態にしたいらしいが、

今は彼女に付き合っているひまはない。



「ごめん、もう行くよ」



駆け出そうとする僕を見て彼女がつぶやいた。



『逃げた』



「逃げてない、犯人を追いかけて!」



そう言ってから犯人の居場所がわからない事に気づいた。



そんな僕を彼女は疑うようにじっと見つめ、

つぶやいた。



『犯人そっちじゃない』



そう言って少女は上空を指差した。


だが、むろんそこに少年の姿はない。



「えっ誰もいないよ?」



『違う。リボン見る』



彼女の指の先にはリボンの蝶が舞っていた。



『あのリボンについて行く。

 案内してくれる』



上空を浮遊するリボンの蝶は、

少女の言葉に呼応こうおうするように、

優雅ゆうがに進み始めた。



医療大国の技術半端(はんぱ)ねぇ。


 

 

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