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宇宙漂流記  作者: 夜神 颯冶
タイムクライム  
14/17

12:24

 

同時にその気に乗じて、

中国が北海道に攻め寄せ日本は戦略上、

北海道を捨て本土防衛につとめる。



北海道民は全て本土に避難ひなん



事実上北海道は中国の占領かに置かれた。



これがのちに中国の経済を圧迫することになり、

中国の経済は急速に衰退すいたいしていく要因よういんになった。



日本本土と目と鼻の先に陣地をかまえたため、

その防衛に中国本土より兵器を常に送り補充し、

その糧食りょうしょくをも運ばなければいけなくなったのだ。


日本はすぐに攻めれる位置であり、

中国がこれを守り維持いじしようとすれば、

海をへだはるか先にある陣地まで兵器と兵士、

その食糧までも運ばなければいけない。


特に食糧はつねに運び続けなければいけないのである。



中国には北海道の過酷かこくな大地で農作物を作る、

ノウハウがなかったのである。



また日本軍が田畑に塩をまき作れないようにして、

撤退てったいもしていた。


そのため膨大ぼうだいに膨れ上がった防衛費は、

中国経済を圧迫し、5年後中国は北海道から撤退てったいした。



だがそれでも中国経済の衰退すいたいはとまらず、

かつてアジア1の経済国だった中国は、

今やアジア1の借金国に成り下がっている。



そんな事を考えながら少年の童顔を見つめている間も、

二人のやり取りは続いていた。



【あなたの行動はコローニー規約第5条に違反・・・ 】



「くやしかったらポンコツも、

 ここまで駆けて来いよ!!」



少年は言いたい事だけを言って、

唐突とうとつに通信を遮断しゃだんした。



そしてふたたびその矛先ほこさきをこちらにむける。



「なんだよ!」



呆然ぼうぜんと少年を見つめていたことに気付いて、

少し恥ずかしくなった。



こんな子供に伝説のハッカーを重ねるなんて。



「君は迷子じゃないよな?」



彼方かなたに悪気はなかったのだが、

少年はその言葉が琴線きせんれたのか、

たちまち顔がけわしくなった。



「俺がチビだっていいたいのか!?」



見た目以上にガキなのか?



「そんなつもりはないが、

 ただ重力が稀薄きはくなコローニー内で走るのは、

 感心しないぞ。

 重力板から足が外れて飛んでいく可能性もある」



「俺がそんな事も知らないガキだと。

 つまり俺がミスしたと言いたいのか?」



「そうじゃないのか?」



「問題ない。

 計算通り」



何が計算通りなのか見当もつかないが、

ガキの理論に付き合うつもりはない。



「そうか、わかったじゃあな」



おざなりにその場から立ち去ろうと

立ち上がろうとした俺に、

見せつけるように少年は、

手にしたチェンバーをかかげて見せた。



〔チェンバー/無重力空間内での移動を

 スムーズに行うために開発された、

 とってのような口の形をしている。

 片手で持ちレバーを引くとワイヤーが打ち出され、

 そのワイヤーの先端せんたんに取り付けられた吸盤きゅうばんが、

 物に張り付く。

 再びチェンバーの横についたボタンを親指で押すと、

 ワイヤが巻き取られ、

 吸盤が張り付いた場所まで人を運んでくれる〕



少年はそれを天井に打ち出し、

華麗かれいに上空に舞い上がった。



宇宙空間ではチェンバーは必需品ではあるが、

ここは地球の2分の1とは言え重力があり、

無重力空間内での運用を前提ぜんていとして、

開発されたチェンバーの吸盤きゅうばんは、

その重量を支えきれず、外れる事が多々ある。



そのため地球上での使用は原則げんそく禁じられている。



日本製ならともかく。


外国製のチェンバーは性能が低い。



地球上での使用は禁じられているため、

市場にも出回らず、外国製のチェンバーは

ほぼ手に入らない。



つまり彼のチェンバーは日本製ではない。



吹き抜けのフロアーは天井まで

10m近くある。



「危ないぞ!?」



思わず出た言葉を少年はあざ笑うように、

上空から叫んだ。



「まだ気づかない。

自分の腰を見てみろよ」



そう言われて初めて自分の右腰に下げていた

チェンバーが無くなっている事に気づいた。



あのクソガキ!!



『大丈夫?』



床に座り込んで悶絶もんぜつする俺に、

唐突とうとつに小さな声がかけられた。



小さな影がさす先には、

目元めもとを機械のゴーグルでおおった、

小さな少女がたたずんでいた。



目元を隠した大きな金属のゴーグルの合間あいまから、

長い黒髪がれていた。



小さな頭にこれまた不釣り合いなほどの大きな

リボンが乗っかっている少女が。



少女はぬいぐるみを抱えたまま立ち止まり、

座り込んだ俺をじっと見つめていた。



冷たい金属のゴーグルに、

そんな自分の姿が写り込んでいた。


 



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