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僕、時輪彼方は、
腕のバイタルチェッカーを見つめていた。
バイタルチェッカーのもう1つの機能として
、半径10メートル以内の生徒の写真と名前
国籍などのプロフィールが表示されるのだ。
近い順に表示され、ページをめくれば、
次に近い生徒がその距離と一緒に表示される。
僕はそれで、近くにいる生徒達のプロフィールを
確認していた。
そこで唐突に、僕にもう突進して来る生徒が
表示されているのに気づいた。
その距離の数字が急速に下がっていく。
80、70、60、50、40・・・
僕が慌てて避けるように前を向いた時には、
その姿は無く、疑問と同時に激しい衝撃が
下半身にぶつかるのを感じていた。
バランスを崩し僕はその場に転がり、
膝をついていた。
目の前には同じように転がった、
見た目10才前後の少年がいた。
下級生だろうか?
服の画像が乱れ揺れている。
大丈夫と手を差し出そうとして、
言葉を飲み込んだ。
倒れこんだアジア系の顔立ちの少年が、
キッこちらを睨んでいたからだ。
一瞬こちらに非があったのではと逡巡する。
その時少年の腕にしたバイタルチェッカーが、
点灯し鳴り始めた。
そして腕輪から女性の声が響く。
【柳・宋さん】
少年はめんどくさそうに、その腕輪に話しかけた。
「その声は、Eさんか」
【コロニー内は走らないでください】
「知ってるか、Eさん。
悪政は革命するためにあるんだぜ!」
悪びれるでもなく不敵にそう言い放つ少年。
【ジンクー、あなたの価値観は聞いてません】
「俺をその名で呼ぶなよポンコツ」
そのやり取りに出た名に一瞬止まる。
人空まさかな・・・
人空・・・それはまだ朝鮮が、
北朝鮮と韓国に別れていた時代。
謎のハッカーとして突如現れ、
ハッキングで北朝鮮を攻撃し、事実上弱体化して、
南北統一のきっかけをつくった人物のハンドルネーム。
これには日本も、
対岸の火事とばかりも言ってられない、
影響を受けている。
このハッカーが日本人の名前を名のったため、
脳筋の北朝鮮は日本を敵対視し、
バンバン核を撃ち込んできたのだ。
おかげで東京の地下には、
大型の地下シェルター都市が出来ることとなった。