CASE:内藤蛍 3/3
事務所兼新宅が完成した、そう聞いてやって来ると、そこには豪邸が建っていた。
真白が株ともう一つの投資に手を出した結果、シャレにならない金額が生まれた……らしい。
持っているのも少し問題だと思った真白は、
「いっそのこと豪邸みたいにしちゃいましょう!」
陽は「それいいんじゃないかな?」とあっさり承諾。
馬鹿にならない土地代と建築費用を差し引いて、さらに研究施設をまとめ買いしても、一般家庭の貯金よりも多いという。
「……ヤバイもん建てたわね……」
そう呆然としてるのを聞きつけたのか、二人が手を振ってきた。
「あんたら……よくそんなのにしたわね……」
見た目は最近の日本の建築物、という形をしているが、規模が違う。
「三階建てで……これどれくらいの広さなんだ?」
「そんなの……知らないわよ……」
当事者が知らないのに、そんなこと知るわけがない。
そう思いながら家に入る。
その中は基本的な家だが、それでも広さが違う。
「何L?」
「知らん。全部真白に任せた」
「ええ……」
真白の秀才には眼を見張るが、それに任せっきりになる兄を真白はどう思ってるのか。
「……真白ちゃん、お兄ちゃんどう思う?」
「え?私のこと頼りにしてくれるから嬉しくて嬉しくて……そしたらもう何でも頑張っちゃって……」
その言葉を聞いて、思い出すのは初めて家庭教師をした時。
『ケイさん、お兄ち……兄さんのことどう思います?』
その真白の言葉に、
『ん?いい人だと思うよ。穏やかで。けどまあ、私はああいう人を異性としては見れないかな……』
そう返した。すると、
『そうですか……もし、兄さんへ害を与えると言うのなら、私は許しませんよ。それだけは、それだけは覚えておいてくださいね』
悪寒がした。殺気を感じた。
彼女を怒らせてはいけない。それだけを理解した。
ーー真白にとって陽という存在は救世主であり、妄信的に愛するに値する人物である。
……害なすものは殺してもいいと考えているのだろう。
内面的な狂気を孕み、兄を純粋に愛するからこそ、兄に褒められるのが嬉しいと感じ、誰よりも兄のために努力するのだろう。ーーケイは、内面の狂気が表層に現れることが無いように、と切実に願った。
「それじゃあ改めて、よろしくお願いします。ケイさん」
そう言って二人は頭を下げた。
「……よろしくね、二人とも。軽い感じで呼んでいいから」
赤髪を揺らし、クスリと笑って。