CASE:2 白石真白 1/4
そのたなびく黒髪の少女は犯された。
高校生にもならない少女は、強引にマンションの一室に連れ去られ、翌日、近くのゴミ捨て場で発見された。
犯した男はすでに逃走。
さらに妊娠してしまっていた。
しかして、その少女はこの子を育てることを決意した。
かろうじて出産には成功。体が少し大人びていたのもあったのだろう、健康的な女児だった。
少女は鬱になってしまった。
責任の重さを痛感し、「もう私には耐えられない」
女児が退院できてすぐ、捨てることを決めた。
そして、自殺すると。
そう考えてからは実行が早かった。
拾ってくださいと書かれた段ボールの中に女児を入れる。
そしてそのまま帰る。そして死ぬ。
それだけを、するはずだった。
「あの……なにをしてるんですか?」
別に反応しなければいいはずだった。
少女は反応してしまった。
刃物は持っていた。だからこそ。
「あんたを殺して私も死ぬぅ!!!」
「え?ええ!?おちついてください!!」
少女と、『白石陽』を名乗る男児との出会いはあまりにも唐突で悲惨なものだった。
その後、少女は落ち着き、女児を抱えて公園のベンチに男児と共に座っていた。
「……ごめんね、脅かしちゃって」
「みられたくなかったんだよね。こっちもごめん」
二人はそれ以降なにも言わず、ただ座っていた。
この赤ちゃんを捨てるのか、それすら聞き出せなくなった陽。
少女は気づいた。彼ならきっとーー
「ねえ、君さ、この子を育ててくれない?」
「はい?」
疑問に思う彼に、女児を押し付け、
「大丈夫!君なら無事に育てられる!だって君は優しいんだから!」
そう言って、彼女は長い黒髪を揺らして去って行った。
「……何だったんだろう……」
陽は呆然とする他無かった。
ーー本当に、この世からも去って行くとは、思っていなかったのだから。