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01.諦観と達観の娘

 魔族との共存により魔法で発展してきた大国、ベーゼンド王国。クラウン子爵家は爵位こそ低いが国の中心に数えられる一族である。その当代子爵家の末姫、エリス・クラウンは夢を見る。物心着く頃から幾たびも同じ夢を見る。否、同じというのには語弊があるかもしれない。それは別の国、というよりも別の世界で、別の自分として生きる夢だった。

 夢の中の世界では、『にほん』という国でどこにでもいるような少女だった。極々普通に学生時代を過ごし、幾つかの恋とともに大人になった。『ぶらっくきぎょう』というのに就職して体を壊して退職し、どうにか別の仕事を手に入れ、そこで出逢った男性と恋に落ち、結婚した。子供には恵まれなかったが、幸せな一生を過ごした、と、思う。夢はいつも断片的で、昨日は幼子だったかと思えば今日は男性と肩を並べて働く大人の姿だったりした。規則性はない。

 夢を何度も繰り返し見ながら成長したエリスは、どこか年齢よりも達観した少女に成長した。世界は違えど、別の人生を一つ追体験しながら育つのだ。致し方ないことだろう。前世と思しき記憶を夢で見たなどと言えば大人たちがどのような反応をするか、想像に容易い。元々クラウン家は文官の多い一族だ。ひっそりと口を噤んだエリスを、家族含め皆が、文官の一族の末姫に相応しい大人しい娘と見た。

「あら、エリス。ここにいたの?」

「…お兄様。」

 十六歳のエリスは、普段は王都にある貴族の子等が通う学園に通っている。全寮制だが、社交シーズンに限り学園は長い休みに入り、生徒たちは家に帰る。エリスも帰省真っ只中で、今は自室の次にエリスがくつろげる空間、図書室にこもっていた。そこにやって来たのは、エリスの兄、次期クラウン家当主のライル・クラウンだった。

「お母様がドレスを見立てたいと探していたわよ。そろそろ隠れていないで出て行って差し上げなさいな。」

「…嫌です。乗り気ではないのですから、ドレスなど不要です。」

「あのね、貴女はそれで良いけれど、クラウン家の面子に関わるのだから、きちんと新しいものを仕立てなさい。何着も作れだなんて私は言わないから。」

「…そうですね、お兄様はそうおっしゃいますよね。」

「それに可愛い妹のドレス姿、兄たるもの当然見たいものよ?」

 窓際のロッキングチェアに腰掛け、数冊の分厚い本を読みふけっていたエリスは渋々といった面持ちで重い腰を上げた。紅茶色の髪に、淡い桃色の瞳。絶世の美少女ではないものの、あと数年、学園を卒業する頃には少なからず縁談が数件は飛び込んでくるだろう見目をしている。だが、重ねて言うがあくまでも美少女と呼べるほどではない。エリスは知っている。自分が所謂、『もぶきゃら』という存在である事を。

 ため息混じりに立ち上がったエリスを仕方なさそうに見守るライルは、パッと見れば女性に見えるほど整った顔立ちをしている。本人曰くその女性的な顔立ちを活かすために、男性にしては長い髪を緩く、うなじが隠れるよう片耳の下に寄せて一本に結わえているから余計だ。身に纏うものも、成人男性の割には華奢な意匠のものをライルは好んで身につけ、かつ、口調も女性的だ。人によっては癖が強く感じるだろうが、その強い癖こそ彼が現在、次期当主という立場でありながら宰相補佐を務めるに足る要素として成立していた。

 読み切った本を片付けるエリスを横目に、久方ぶりに足を踏み入れた図書室でライルは知らぬ間に増えている蔵書に指を這わす。

「お兄様。」

「なあに、私の可愛いエリス。」

 いつの間にかエリスはライルの正面に立っている。凛として自分を見詰める少女は、確かに自分の妹であるはずだが、知らぬ間に伸びた身長や昨年の帰省時よりも大人びた顔立ちにライルは少しばかり寂しさを覚えた。

「…わたくしが以前にお話しした夢物語の話を、お兄様は覚えておいでですか。」

「…ええ、勿論よ。」

「ならば、申し上げます。夢で読んだ物語がありました。それに出てきた人々に。お会い致しました。」

「…それは、」

「ですが、夢の中の物語と酷似しているものの、ただ似ているだけ、のような気も致します。しばらくは静観しますが…お兄様のお手を煩わせるような事態が起きるやもしれません。」

「エリス、それは…。」

「…今はこれ以上申し上げられませんが…ただ、夢物語の話をただお一人、聞いてくださったお兄様にだけは、お伝えしなければと思いました。片隅に覚えておいて頂ければと。」

 言いたいことだけを言い切って、エリスはドレスの裾をつまみ、深々と頭を下げた。動揺した面持ちで、何を言うべきか悩んでいるだろうライルを置いて、エリスは一つ笑みをこぼすと図書室を退室した。向かうのは勿論、兄にお小言をもらったきっかけ、母の元である。

「…『聖女と清らなる恋』、ヒロインがもうすぐ転入してくるのですね…。」

 母の待ち構える応接室へ向かう途中の渡り廊下、クラウン家の庭師が丹精込めて作り上げた庭園を窓越しに眺めながらポツリと呟く。

 エリスは前世を追体験した。その夢の中で、前世の自分が友人に勧められるがままプレイした唯一の乙女ゲームこそ、エリスが口にした『聖女と清らなる恋』である。

 魔族と人が共存する世界で、とある貴族令嬢が巫女として国に仕える聖女であったことを、ある年のシーズン、唐突に知ることになる。それをきっかけに縁遠かった王都の学園に転入した聖女は、学園内の少し影のある男子生徒たちと縁深く関わっていくことになる。その男子生徒たちこそが、攻略対象であり、魔族の血を引く青年だ。聖女と魔族の血、立場の違いから葛藤しながらも結ばれ…歴代最高の巫女として君臨する聖女となる、というのが大まかなストーリーだ。

 前世と違い、今世には魔法や魔族といったものが極々普通に存在する。ベーゼンド王国は、建国初期から、魔族と共存し人々の魔力の恩恵を受けながら成長してきた国だ。貴族社会にも魔族の血は混ざっており、魔族の血が混ざる者は混魔と呼ばれる。クラウン家はその筆頭だ。三代目当主が人魚の姫君を妻に迎え入れて以降、数代おきに人魚の一族と交わっている。

 エリスは夢の中でもこのゲームをプレイしたから、自覚がある。自分は『もぶきゃら』だ。とあるキャラクターのルートを選択すると、途中スチルに後ろ姿が小さく描かれはしたが、その程度の存在だ。

 ゲームのヒロインでもある聖女は、百年に一度しか生まれぬ、魔の力を抑える聖なる力を持つ娘のことだ。その清き御心で、悪しき存在を滅する力を持つという。聖女の力は、世界を浄化するためならば魔族含め人々を消し去るだろう。だがそれと同時に、神の審判のような、過ぎたる力ゆえに信仰の象徴でもある。

「フルール嬢は…一体どのような方なのでしょうね。」

 ゲームのヒロインであり、つい先日聖女であると発覚したのが、グローリア・フルール侯爵令嬢だ。フルール侯爵家の次女であり、第一王子の婚約者候補に二つ上の姉君と並んで名前を挙げられている。そんな聖女様は、自身の力が判明したため、エリスの通う学園に編入してくるという。ベーゼンド王国の貴族は、学園に通うか家庭教師をつけるかのどちらかで学問を習得する。混魔を筆頭に魔力を強く持つ貴族達ほど、その制御を覚えさせるためにも学園に入学させ、名門貴族ほど、貴族としての立ち居振る舞いをしっかりと身につけるためか家庭教師をつけることが多い。ヒロインはこれまで後者だったが、聖女である以上その力を制御できるようになる必要性があると国に判断された形だ。

「エリス様!奥様がお探しでいらっしゃいますよ。」

「…ええ、お兄様から伺ったわ。」

 母が待つサロンからたった今出てきたメイドが、エリスの姿を見て声を上げる。まだ年若いメイドだ。声のボリュームだけは恐らく後からメイド長に指摘されるのだろうが、ハキハキとして愛想も良く、エリスも好感を持っている。やんわりと笑みを浮かべて頷けば、メイドは花がほころんだように微笑み、サロンの扉を恭しく開けた。

「どうぞ、エリス様。中で奥様がお待ちでございます。」

「ありがとう。シュリル。」

「!」

 まさか名前を呼ばれるとは思っても見なかったのだろう。クラウン家のメイドの中で最も若いシュリルは、目を丸く見開いて、驚いた様子だった。それに小さく笑って、エリスはドレスの裾を翻し、憂鬱な衣装合わせの場、母が占拠するサロンへ足を踏み入れた。

「お母様、お呼びですか。」

「お呼びですか、ではないわ。エリスったら。貴女のためのドレスを仕立てるのよ、貴女が同席せずしてどうするのです。」

「…申し訳ございません。」

 エリスの叔母は国有数の人気デザイナーだ。母と、母が呼びつけた叔母が聞き分けなのない子供を見るような眼差しで自分を見つめるのを感じながら、シュリルに向けた笑みを引っ込め、あくまでも淡々と無表情にエリスは深く腰を折った。面倒ごとはとにかく流してしまうのが一番手っ取り早い。貴族間のやりとりではそうもいかないが、家族だけの場であればそれが有用な手段であるとエリスは幼い頃から知っていた。可愛げのない子供だと自覚はしているが、いかんせん、人生二周目。年頃の娘らしくふわりふわりと幼く振舞うこともできないままいる。

「まあ、いいわ。こうして来てくれたのだもの。去年は結局、プレタポルテだけで過ごしてしまっていたのだから、今年こそは仕立てさせて頂戴ね。」

「はい、叔母様。よろしくお願い致します。」

「ふふ、何色がいいかしらね。エリスは可愛らしい顔立ちだから、淡い色味がきっと似合うわ!」

「いいわね、淡い色味で、流行りの腰周りからふんわりしたドレスなんて似合うのではないかしら。」

 諦めの色を唇の端に乗せて微笑み会釈するエリスに、母と叔母は色めき立ってドレスを思案しだす。多少なりとも愛想笑いを身に付けられていたのだなとエリスは自分自身の成長を若干感じた。肌の色味と合わせるために何枚もの布地が肩口に掛けられる。淡い色味、と最初に盛り上がっただけあって、全て

パステルカラーだった。流石に唇の端を引きつらせつつ、ちらりと叔母の持参した布地に視線をやる。

「叔母様、あの色味はいかがでしょう。」

「どれ?…これ?ダメよ、こんな渋い色。」

「そうよエリス。こういう暗い色味は若いうちから着るものではないわ。」

 あれがいい、とエリスが指し示したのは、渋い藤色だった。光沢があり、光加減では鈍い金にも見える。若い娘には淡い色と信じて疑わない母と叔母は声を揃えてダメだダメだというが、エリスにはその色が自分に似合うであろうと直感で思っていた。そもそも、淡い色味を着るとエリスは目の色彩が淡いためか、必要以上に儚く見えるのだ。似合わないわけではないが、存在感も消える。目立ちたくないが故にいいといえばいいのだが、なんとなく可愛らしいだけのドレスに抵抗もある。

「せめて合わせるだけでも、いけませんか。」

「ダメよ。いい色味だけれど、エリスには似合わないわ。」

「…さようですか。」

 強く言い切る母に、エリスはそっと口をつぐんだ。もうどうにでもしてくれ。自分の意見は聞かれず、かつ、そこまで似合うわけでもないドレスを仕立てるだけならばプレタポルテを纏うのとなんら変わらない。

 エリスは母が苦手だ。嫌いではない、愛していると胸を張ってはっきり言える。だが、母は自分の考え方、価値観が全てだと思っている節がある。もしくは家族ならば、血が繋がっているならば皆同じ考え方、価値観だろうと信じて疑わない。エリスの非凡さをいの一番に全否定し、エリスが『大人しいだけの文官一族の娘』という皮を被るようになった一因が、母だ。ローリヤ・クラウン。クラウン家何人目かの、人魚の一族の姫君。

 エリスがそこから口をつぐんだことに、母も叔母も、ついぞ採寸直前まで気が付かなかった。エリスの趣味ではない淡いサックスブルーのシフォンの布地、上半身はすっきりとしたデザインだが随所にリボンが散らしてあり、腰のあたりから大きなリボンとドレープで広がった形の、ふんわりとしたドレス。エリスのためと言いながら母と叔母がああでもないこうでもないと考え出したのは、エリスからすればどこが自分に似合うのか一切分からないものだった。

「どう?エリス。」

「わたくしにはドレスの事は分かりませんから。」

「そんなこと言わないで、ねえ、もう少しリボンを足しましょうか。そうだわ、胸元を編み上げにしましょう!どうかしら?」

「いいわね、デコルテラインが綺麗に見えるように、上半身はなるべくすっきりさせていた方が似合うわ。繊細なリボンを散らすのではなく、サテンのリボンで編み上げにしましょう。」

「……。」

 結局、自分の意見など二人とも聞きやしない。諦観の表情で、エリスは描き上げられていくデザイン画を眺めていた。本当はエリスにだって着てみたいドレスのデザインはある。それも、今年叔母が出したデザインで気に入ったものがあった。けれど叔母はともかく母は絶対的に否定するだろう。分かりきった意見を言うだけ無駄だ。ため息を吐きそうになるのを必死に飲み込みながら、ますます盛り上がっていく二人をエリスはただただ眺めていた。

「ああ、ほら、また私たちだけで盛り上がってしまったわ。ねえエリス。私は今年こそ貴女が気にいるものを作りたいのよ。意見を聞かせてほしいの。」

「叔母様がこう言ってくれているのだから、エリス。貴女だって好みがあるでしょう?」

 デザインをほぼほぼ完成させた上で、ニコニコと上機嫌にこちらを伺う二人に、エリスは今度こそため息をついた。二人は、二人の好みが一切合切エリスの好みと合致しないのを知らないのだ。エリスが生まれてこれまで知ろうとしてこなかったという証明でもある。

「まあ、ため息なんてはしたないわ。疲れてしまったの?」

「…わたくしの意見や好みを、お二人が反映させてくださったことがありません。ですので、期待もしませんし、勝手にしていただければ幸いです。」

「エリス?」

「わたくしは不要でしょうから、下がらせていただきます。どうせ好みでないドレスを着るのであれば、プレタポルテで充分です。失礼致します。」

「え、エリス?どうしたの、何がいけなかったの?」

「そうよ、好みでないのなら、どこが嫌なのか教えて頂戴。ね?」

 静かに立ち上がり、エリスは裾をつまんで礼をした。それは家族に対してというより、目上の人間に対して礼を尽くす、といったていであったが故に、母と叔母はいい加減に、自分たちが何かを誤ったのだと気づいたらしい。分かりやすく慌てる二人に、エリスは無表情を取り繕うことなく突き放す。

「どこが嫌かお分かりにならないのが全ての答えでしょう。わたくしがいつそうしたドレスが好みだと言ったのです。いつ淡い色味が好きだと言ったのでしょう。」

「エリス…貴女は叔母様の好意をなんだと思っているのです!口を慎みなさい!」

「これ以上なく慎んだ結果です、お母様。」

「ま、まあまあ。姉様も、エリスも、落ち着いて頂戴。」

「叔母様、わたくしは落ち着いています。落ち着いているからこそ、どうでもいいと申し上げているのです。」

「エリス!!」

 どうでもいい、そう発した瞬間、母からぶわりと魔力が発せられた。怒りで抑えきれない魔力が身のうちから迸ったらしい。二人をどうにかして諌めようとしていた叔母は、どこまでも淡々としているエリスと、怒る姉に途方に暮れた顔を浮かべている。親子喧嘩に巻き込んで申し訳ないとは思いつつ、ここまでうっかり言ってしまったのだから中途半端に引くのも後々面倒だとエリスは腹を括った。ここで好みの差を理解してもらって、ドレスをわざわざ仕立てようとするのをやめてもらえれば御の字だ。

「わたくしは淡い色の服は好みません。ドレスも、フリルとリボンの多いものは好みません。デザインでいえば今年叔母様が発表されたAラインのドレスがとても素敵だと思いましたが、お母様は若い娘向きではないと仰っておりましたので、その好みを口にしたところで形にならないとわかっていました。色味に関して言えば、お二人は既にお忘れのようですがわたくしは既に好みを意見しております。否定されましたが。故にわたくしは、お二人に自分の意見を、好みを述べるのを諦めているのです。どうでもいいと感じるのも道理ではないでしょうか。」

 終始淡々としてはいたが、母と叔母に反論の隙も与えず捲し立てたエリスは、一週間分くらいは話したような心持ちだった。ふう、と息を吐き、うっすらと寄せてしまっていた眉間のシワを解いては無表情に戻る。

「それではわたくしは下がらせていただきます。お兄様のお顔は立てましたから。」

 暗に、ドレスの採寸に足を運んだのは兄に乞われたからだと二人に告げ、エリスは静かにサロンを退出した。廊下に一人きりになった瞬間らどっと疲労感が襲いかかる。使用人の気配も近くになかったため、深く溜め息を吐く。

「なんだ、辛気臭い面だな。」

「っ!」

 人の気配は一切なかった。唐突に背後から声を掛けられ、エリスは勢いよく振り返る。すると廊下の少し先に、ひとつ黒い影がゆらりと立ち上っていた。ゆらゆらと影は煙のように燻り、数度の瞬きのあとエリスのよく見知った青年に形を変えた。青みがかった黒髪に、白っぽい虹彩の瞳を持つ青年。

「カルロス様…いつから居たのですか。」

「今し方だ。執事長には会った。どうにもエリス嬢が面倒ごとに巻き込まれているらしいと知って待っていてやったんだ。」

「そうでしたか。…それならばわざわざ隠れなくてもよろしいでしょうに。」

「なんだ、俺がここに控えていてエリス嬢は溜め息を吐けたのか?」

「…分かりました。わたくしを慮ってのことだったのだと理解しましょう。」

 ここではなんだから、とエリスはカルロスと呼んだ青年を庭園に誘う。カルロスはカルロスで、サロンが埋まっているならば庭園だろうと察していたらしい。勝手知ったる何とやら、さっさと歩き出した。

 カルロス・ボーデン。黒と白しか色を持たない彼は、エリスの所謂幼馴染である。そして彼こそ、エリスが自分が『もぶきゃら』だと自覚する所以である。つまるところ、エリスが物心つく前からめいっぱい関わってしまっていた、攻略キャラクターの一人だ。童話の中ではフランケンシュタインのような描かれ方をする者達、カルロス曰く亡者を操る魔族の血を引いている。

 そして、実を言うとエリスが関わる攻略キャラクターはカルロスだけではない。

「……人生は、上手くいかないものですね。」

 前世ですら腐る程呟いた、今世のエリスの口癖。嘆息して、諦めたような笑みを口元にだけ浮かべて。エリスは気を取り直したようにカルロスの後を追った。

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