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僕が恋した白い肌。  作者: RYO
3/17

2話 夢の続き

「あいつって何歳に見えるか?」

 

  何を言っているのだろうと思った。


「同い年じゃないんですか?」


  東さんは確かに2Aと言っていたはずだ。


「あいつは…去年も2Aに居たんだ。」


「へ?」


  もっと何を言っているのか分からなくなってきた。


「いや、去年も2Aにいたって事は」


  留年ってことなのか?

  Sコースは元々年に何人かは留年するって聞いてるけど。


「留年では無いと、カズが言っていた。」


「じゃ、じゃあどうして?」


「それは俺にも分からない。ただ…」


  留年でもなく2年間2年生を続けるって、どういうことだよ。


「あいつは6年前に1度…いや、いい。まぁ、取り敢えずあの女には注意をしておけ。」


「は、はぁ。」




  不完全燃焼だった。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「バブーー」


 ん?なんだ?


  朝の日差しが部屋の窓から俺の目を焼き尽くす。


「まぶっ!?」


  俺は慌てて体を起こす。

  そこで見た光景とは…。


「バブーーーーーーーーっ!!」


「う、うわぁぁぁーあ!?」


  幼児服を来た蒼弥先輩が指をしゃぶりながら幼児言語を喋りながら俺にのしかかってきた。


「先輩。」


「バブ?」


「流石にキモいです。」


「…………っ!?」


  先輩はするりと体を起こし、部屋の隅へと逃げ、何かを呟いている。


「はぁ、先輩?今日から朝練じゃないんですか?」


  なんかめちゃくちゃ落ち込んで体育座りしている先輩に向かって頭に手を当てて言った。


「…………い……だ。」


  いだ?


「……い…………やだ!!!」


「はぁ、そんなこと言ってもあなたはうちのサッカー部のエースなんですからね。」


「元だ。」


  そう。

  引退はしているが、こう見えて蒼弥先輩は1年の頃からエースを勝ち取り、地区予選敗退のチームを全国上位まで引っ張って行った超すごい人なのだ。今では朝練まで行って後輩の面倒を見ている。


 それに比べて俺は……


  去年から何ひとつ目標を成し遂げられず、唯一頑張ってきたトランペットも最近サボり気味だ。


「じゃあ『先輩!あなたはキモくなんてない!』って言って!」


  はァ、なんなんだこの人。多重人格ってやつか。でもやらないとこの人は元に戻らないってことを俺は知っている。


「先輩、あなたはキモくなんてありませんよ。…これでいいですか?」


  すると蒼弥先輩はぬくぬくと起き上がってやっと顔を上げた。


「……………………マジ!?」


「自分が言わせたんだろが!!てかまともな服着ろ!!!」


  赤ちゃん服を脱いでいる先輩はめっちゃ笑顔だった。


なんか、ホモビじゃね?(苦笑)



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



  ぼっち朝食を済ませ、新学期の授業が始まる。


  とは言っても俺は窓側の1番後ろの席で空を眺めているだけだ。

  とてもぼっちを満喫している。


  そんな影の薄い俺だが、ある特性がある。それは…


  噂が異常に早く回る、という特性だ。


  俺にこの特性が付与されたのは、蒼弥先輩と一般寮の部屋が同じになった時だ。

  この奈津高校の女子は結構肉食系らしく、カッコイイ男を一目見ると、謎の執着心が湧いて、ストーキングするらしい。なにそれこわい。

  だからその的がよく蒼弥先輩に向くのは十分わかる。ただ……


「なんで俺にまで向くんだよ。」


  勿論、俺がかっこいい男っていう訳では無いのだが、蒼弥先輩にくっついてる人、つまりかっこいい人の周りの人間までストーカー被害に会う、という事だ。

  つまり、俺は常に監視されてると思ってもいい。

  幸い、俺には喋る友達も中々少ないし直接知らない人に『ねーねー、田嶋先輩とどういう関係なの君?(怒)』という展開はないが、1部の人間は聞いてくる。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「おい莉久!!!お前あの東 桔梗様と保険室でいちゃこらしてたって事はホントか?!」


  ほらいた。


「はぁ、違うよ日向。」


  放課後にさしかかり、寮に戻ろうとしていたところ、俺は吹部仲間で唯一話せる2Dの西織(にしおり) 日向(ひなた)に呼ばれていた。こいつはこの学校の情報屋で、噂を広めるのは大体こいつなんだが、腐れ縁で幼稚園からずっと一緒なのだ。

  全く俺も運が悪い。


「じゃあどういう関係なんだよ!あの桔梗様と!!」


「なんもないよ別に、なんか話しかけられて……」


「なっ!?!?あの桔梗様から!?」


「一緒に、ちょっとな。」


「いいいいいいいいっしょにぃぃぃぃいい!?ききょうさまとぉぉおおお!?」


「そうだ。保険室に行くことになった。」


「ほほほほほほほほけんしつぅぅぅぅうう!?ききょうさまとぉぉおおお!?」


「そうだ。俺が鼻血出したからな。」


「ははははははははなじぃぃぃぃぃいい!?ききょうさまとぉぉおおお!?」


「いや東さんは出してないぞ。」


「だだだだだだだだしたぁぁぁぁぁああ!?ききょうさまにぃぃいいい!?」


「何をだ!!!てか日向!さっきから桔梗様、桔梗様って、お前の中の東さんはどんだけ地位が高いんだよ!?」


  これまでこいつと話をしてきた中で、東 桔梗というフレーズは触れていなかった筈だが、そんなに有名なのだろうか。


「そんなの……」


「?そんなの?」


「ご飯9割のお弁当の中に入っている、1割のウインナーぐらいに決まってるだろうがァーー!」


「分かりずれーよ!!」


「ぐへ」


  そう言って俺は日向の頭をチョップした。

  なんで俺の周りにはこんな変人たちしか居ないんだ…。


「はぁ。んで、なんだよ。」


「?何がだよ」


  こいつが俺のとこに来る時の理由は大体決まっている。


「また俺を吹部に戻しに来たのか?」


  それは、俺が2年になってから1回も行っていない吹部に顔くらい出せというものだ。まぁ、ずっと断っているが。


「え?……いや、うん。そうそう!お前ー絶対戻ってきた方がいいことあるぞ?」


「例えば?」


「あ、あれだよ、ほら!かなでちゃん!あの子可愛いだろ!?もしかしたら仲良くなって付き合えるかもしれねぇだろ?」


  ん?なんか変な感じだ。

  日向の細かいところには昔からつるんでいる分、よく気づく。

  今も日向は隠し事する時によくやる、『右手で後頭部をかく』動作をしていることに気がつく。


「はぁ。ハッキリいえよ。」


  呆れたように、心底真顔で言った。


「え?………ぷっ!やっぱ莉久はすげーな。」


「お前がなんか隠してんのなんてばればれだ。」


「そうだな。俺達の友情に隠し事なんてなしだ!」


  なんか男の友情みたいなこと言われるとちょいと照れる。

  あれ?なんかホモビじゃね?(苦笑)


「で、何の用なんだ?」


「お前、さ」


 今度は日向が真剣な顔つきになった。


「昔俺たちとよく遊んでた女の子覚えてるか?」


  唐突な質問にちょっと動揺したが、思い返してみる。でも


「ちょっと覚えてないな。」


「だよな。」


  日向はどこか浮かない表情で顎のニキビを触っていた。


「他を当たって見たらどうだ?俺以外にもお前には沢山いるだろ?友達。」


  皮肉にもこいつには沢山の友達というものがいる。まぁ、昔からつるんでいる友達なんてこの学校に居るか知らんが。


「いや、それがだな、夢を見たんだ。」


「……っ」


  俺も最近同じ夢をよく見る。

  ただ、その夢と俺の関係性はないと思うのだが。


「そこにその女の子と、俺と、小さい頃の莉久が居たんだ。」


「なっ!?」


「その3人で一緒に遊んだ後に俺は何かを思いついたようにその場を去る……すると、いつの間にか俺は起きてるんだ。」


  あぁ。そうだ。俺と見た夢とほぼ一緒だ。

  でも……


「俺も最近よくお前と同じような夢を見る。ただ、俺の夢には日向は出てこないな。」


「そうか。……っといけね!俺、部活始まるわ。お前もたまには顔出せよ!相談乗ってくれて、ありがとな!」


  日向は左手に付けた高級そうなピカピカ光る腕時計をちらっと見て飛び出していってしまった。


「女の子か。」


  気にならないと言ったら嘘になる。なんで俺と日向の夢に出てくるのだろうか。なんで俺の夢には日向が出てこないのだろうか。


「ん?なんだって?」


「うーん。実はさぁ、ってええ?!」


  声がした方に振り向くとそこには金髪ポニテ裏生徒会長がいた。


「う、裏……じゃなくて、東さん!?どうしてここに?」


  金髪の馬の尻尾を揺らし、笑顔満点でこっちを見てくる。


「いやー……はぁ。昨日のことが気になってねー。もう、学校中探したよ莉久くん。」


  言葉通り、ちょっと息を切らして、それでもしっかり明るい笑顔で、でもちょっと怒り気味で話しかけてくる。うん。可愛い。

  美少女に学校中探し回られる平凡男子。うん。いい。


「き、昨日のこととはなんの事だ?」


「え、あんなに派手に鼻血散らかしてもう忘れたの?」


「あぁ、そんなこともあったな。」


  そう言えば、昨日目の前の美少女に興奮して鼻血垂らしまくったな。

  あー、今思うと情けな俺。


「そんなことじゃないよ!こちとら出血多量で死んじゃったのかと思ったよ!」


  またちょいと頬を膨らませて、腰に手を当てて顔を近づけてくる。

  あぁ、めっちゃいい。


「まぁ、たまにあるんだ。そういうこと。」


  何だこの誤魔化し。


「いやたまにでも駄目だよ。しっかりご飯食べてるの?」


  今度は心底心配そうな顔で覗き込んでくる。

  あぁ、今なら死ねる。


「いや、まぁ。」


「莉久くんって寮生活?」


  なんでこんなことを聞くのだろう。


「まぁ、そうだな。」


「お昼ご飯はどうしてるの?」


「…」


  これが狙いか。


「はぁ、まさか食べてないとかないよね。」


「…」


  省エネ(ただ単に金がないだけ)生活には必要事項だ。


「はぁ。いいわ、作ってきてあげる。」

 

  ん?今なんて?


「明日、昼休み屋上でね。」


「は、はぁ。」


  そう言って彼女は金色の尻尾を振りながら階段を下って行ってしまった。




  最高のお言葉を、俺はあほ面で返してしまったようだ。

 







読んでいただき、誠に感謝致します。

次話投稿楽しみにしていてください!!

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