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僕が恋した白い肌。  作者: RYO
2/17

1話 出会いと日常

「よう…フッ」


 俺が二段ベッドの下から顔を出すと、そこには俺より歳が1つ上のルームメイト、田嶋(たじま)蒼弥(そうや)先輩が二段ベッドの前で笑みを浮かべていた。


 蒼弥先輩は常に学年一の成績を保持していて、ルックスもかなりいいし、スポーツも万能だ。つまり女子にモテモテ。その名前から想像しての通り、髪は蒼い。その完璧すぎる風貌から、俺達が通っているこの私立奈津(なつ)高等学校のプリンスとも言われている。ただ……


「あ、おはようございます蒼弥先輩」


「ん、おはよ。…フッ今日は起きるの早くないか?…フッ」


「…そんなことより何やってるんですか先輩?」


「…フッ…決まってるだろ?…フッ…筋…フッ…トレ…フッ…ダッ!!」


「ちょっとフッフうるさくて何言ってるか分からないんですけど。」


「…なん…フッ…ども…フッ…言わっ…フッ…せるっ…フッ…な…フッ…っ!!」


「いやまだ2回目なんですけど!?てか最後『な』と『っ』が『フッ』で別れちゃってるんですけど大丈夫ですか!?」


「…フッ…フッ…フッ…フッ…フッ…フッ…フッ…!」


「だ、ダメだこりゃ。」


 そう。

 この先輩はルックスも学力もスポーツも万能なくせに、異常なまでに変態なのだ。


 今もどこから持ってきたのか分からない中華鍋を両手に持ち、更に、股にもう一本挟んで高速スクワットをしている。しかも全裸で。


 とてもじゃないが、朝から見たくない光景ベスト16には入っていると思う。


「はぁ、先輩。取り敢えず服は来て下さいよ。」


「ムフッ…何故だ!?き、緊急事態か!?」


「いや『むっ』と『フッ』が混ざって変な感じになっちゃってるし、むしろ今あんたがしてること自体が俺にとっては緊急事態なんですけどぉ!?」


 そう言って俺が毎朝のように突っ込んでくれて満足したのか、しょうがないなーと言うばかりに、渋々、中華鍋を3本置いて先輩の服を着させてあげて、グッチョブサインを俺にしてきた。


「いや何がグッチョブやねん!?なんであんたの服を中華鍋に着させてあげるねん!?アホを通り越したチンパンジーかあんたは!?」


「何てこというんだ!?」


 いや、ちょっと言いすぎたか。これ、キレてるよな完全に。先輩の眉間にはシワが寄っている。


「……。」


「……。」


 しばらく見つめ合う。


「……。」


「……。」


 謝った方がいいのかな。


「……。」


「……。」


 ふと先輩の口が動く。


「チンパンジーに失礼だろうがァ!?」


「あんたは早く服を着ろ!!」


 こんなんが毎日朝起きる度にいるとかもう耐えられん。

 こんなはずじゃなかったのに。俺の高校生活は。


 部屋の窓に目を向ける。



 今日もいい天気だ。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


天草(あまくさ)先生!」


 俺は寮で朝食を済ませたあと、急いで職員室の天草先生の所へと向かった。

 天草先生は音楽の教師で、俺の所属している吹奏楽部の顧問と俺のクラス、2Cの担任だ。


「?何よ新学期早々慌てて。」


 そう。今日から二学期の始まりなのだ。


「これです。」


 俺はバシッと、来る時に手でぐしゃぐしゃにしてしまった紙を1枚机の上に広げた。


「?何ー?これぇー?私に渡されてもぉー、何したらいいかわかんなぁい。」


「あんた仕事増やしたくないだけだろ!それと30超えたおばさんがそんな口調で喋らないで…ウグッ」


 ぐっと頬をつねられた。


「まだ9歳よ!!」


「盛りすぎだ!!」


 そう言うと天草先生はそっと手を離し、俺が持ってきた紙を持ち上げた。


「退寮許可証?」


「はい。俺がこの一般寮に入ってからというもの、ろくなことが起きないんですよ。」


「ほう?例えば?」


「毎朝蒼弥先輩に全裸見せられたり」


「私も見てみたいわ」


「月一で『おい莉久、女子寮覗かないか』とか言われてついて行ったら俺だけビンタされたり」


「青春ね」


「クラスで『あいつってあの田嶋先輩といつもイチャイチャしてるんだってよ』とか噂されるし」


「ホモビね」


「先生」


「ん?」


「真面目に聞いてます?」


「いたってホモビよ。」


「そうですか。良かった。って誰がホモビじゃい!」


「だってあなた田嶋との甘酸っぱい思い出を語ってるだけじゃない。」


「どこが甘酸っぱいんですか!?」


「待ったー。照れちゃってー。プップー」


 いら


「んま、でもあんたのことを考えるとこの届け出は受け取れないわね。」


「え、ちょっと!?」


 そう言って先生は『私も忙しいからまた今度』と、そそくさ教室へ向かってしまった。


 俺のことを考えるってなんなんだろう。

 そんなことを考えてるうちにキンコンと予鈴が鳴った。


「いっけね。遅刻遅刻。」


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ねーねー、花宮くん。」


 始業式とホームルームが終わり、寮に戻ろうとして廊下を歩いていたところ、1人の女子に声をかけられた。


 制服に茶色いセーター&ミニスカ&黒タイツ、手首には白色のブレスレットを付けているとても夏とは思えない服装の金髪ポニテの美少女だった。


「…………カワイイ……」


 思わず声が漏れてしまった。


「ん?なんか言った?」


 上目遣いでこっちを覗いてくる。

 グッ……カワイイ

 まぁ、何はともあれ良かった。

 聞こえてなかったようだ。


「いやいや、別に。なんの用です?」


 こう言ってもなんだが、俺はクラスでぼっちなので、学校の生徒(特に女子!)と喋るのはレアな展開だ。

 喋れる相手がいない訳でもないが、特に面白い話ができる訳でもない。

 うちのクラスは陽キャがわんさかいるので俺みたいな性格のやつは馴染みにくい。


「まず自己紹介からしてもいいかな?」


「あ、あぁ。」


 そう言えばこの子の名前を聞いていなかった。クラスには居ないと思うが……


「私はね、(あずま) 桔梗(ききょう)って言うの。2Aだよ。」


 どうりで見たことの無い顔だった。

 この学校は大まかに3つのコースで別れている。

 超難関大学に合格するためのコース、『Sコース』。これが学年のAクラスとBクラス。

 難関大学合格もしくは就職するための検定を取ることが出来るコースが『A+αコース』。これが学年のCクラスからHクラスまで。

 完全に就職を考えて、検定を取りに行くのが『Zコース』。これは学年でIクラスからLクラスと決まっているが、自宅での学習も可能なようで、Zコースの半分の生徒は学校に来ていないらしい。


 ってことはこの子はSコースってことか。東 桔梗。どこかで聞いたことのあるような、ないような…。


「そっちは?」


「え?」


あかん、話なんも聞いとらんかった!どんな話してたっけ?


「うーんと、俺はあれだよあれ。カレーライス。」


「え?……カレーライスさん?」


「あれ?好きな食べ物聞いてるんじゃなかったっけ?」


「…ぷっ!……あははっっ!」


 東さんがいきなり笑いだした。

 なんか状況がよくわかんない。


「君の名前だよ!な・ま・え!……ぶっ!あはっ!名前聞いたのにカレーライスて!!」


「あ、あぁ名前か、ごめん。あんま女の人と話すの慣れてなくって。」


「それにしてもカレーライス……ぷはっ!」


 まだ笑ってるよこの人……


「てか君、顔真っ赤っかだよ、大丈夫?」

 

 まだちょっと涙目の東さんが聞いてくる。


「…え?」


 自分でも気づかないうちにめっちゃ照れてた。


「意外と面白いんだねー、君って。話しかけてみて良かったー。本当はもっと怖い人かと思ったよ。」


「そ、そうですか。」


 やばい。


 なんか照れるーーーー/////


「んで、名前!」


「ひゃい!僕は、いや、俺は花宮(はなみや) 莉久(りく)です。2Cです。」


「じゃあ莉久くん。い、言いずらいんだけどさ。」


「ひゃい!」


 な、何の用だろう!?


 ま、まさかここここここここ告白とか?!


 ひ、ひひひ一目惚れだったら有り得るかもしれん!!


 いやいやまさか笑


 ルックス、成績、運動神経全てにおいて平凡な俺だぞ?


 それがこんなか、かかか可愛いお、おお女の子と付き合ってもいいのでしょうか!?!?


 神様ーーーーーーーっ!!



「ほ、保健室行こっか。」


「……え?」



 気づけば俺の足元は血の海になっていた。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「……ってことがありまして。」


「ふむ。嫌な予感がするぞ。」


 俺は保健室で治療をしてもらった後、東さんと別れ、寮室に戻った。

 そこで蒼弥先輩に向かい合って相談に乗ってもらっていた。


「嫌な予感、ってなんですか。」


「んで、その女はなんて言う名前なんだ?莉久。」


 俺の質問にも答えずに、先輩は質問を投げかけてくる。


「確か、東 桔梗さんです。」


「…ッ!?!?」


「いやそんな驚くことですか!?そんなすごい人なんですか?確かに可愛かったですけど。」


 蒼弥先輩はとても苦しいような、哀しいような表情で頭をかいている。

 東さんは本当に可愛かったが、Sコースの美女で金髪ポニテということしか俺の記憶には残っていない。


「……生徒会長だ。」


「いやいや、何言ってるんですか。2年生はまだ生徒会長にはなれませんよ?生徒会長は蒼弥先輩の友達なんですよね?よく自慢してくるじゃないですか。」


 確か名前は…カ…カ……


「違う!」


 ん?先輩の様子が変だ。

 いつもの、『なぁ莉久〜突っ込んでくれよ』オーラはない。


「あいつは……()生徒会長だ!!」


「裏生徒会長ッ?!」


 噂では聞いたことがある。

 家の莫大な財力を使ってこの学校に資金を譲り、学校側をも尻に敷いているという、実質この学校で1番の権力を持っている人材だ。


「でも、そんな怖い感じはしませんでしたよ?」


 むしろ優しそうな気がしたが…


「そうだろうな。俺も始めはそうだった…。」


 先輩は東さんに関わったことがあるのだろうか。


「あれは去年の今頃の話だ。当時、俺の親友のカズ、現生徒会長が選挙活動に明け暮れていた頃だ。あいつは急に転校してきたんだ。お前、あいつ、何歳に見えるか?」


「……え?」


 急な問いかけに唖然とする。


「俺と同い年じゃないんですか?」


 だって今日も自分は2Aだって名乗っていたじゃないか。


「あいつは……去年も2Aに居たんだ。」


「…………へ?」




 



読んでいただき、ありがとうございました!

次話投稿楽しみにしていてください!!



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