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僕が恋した白い肌。  作者: RYO
15/17

14話 心のアザ

「私、知ってたの。桔梗が……病気を患ってること。」


「……病気?」


 確かに栞はそう言った。

 病気、か。俺も薄々気づいていた。あの急に変わる性格や意味深な言動。まさか本当に病気だったとはな。


「ど、どういうことだよ?」


 日向は理解が出来ないようだ。


「私、まだ何も桔梗について知らないなと思って桔梗がお風呂に入っている時にこっそり桔梗のバッグを漁ってみたの。」


 栞は下を向きながら続く。


「そしたら1枚の紙があって、『診断結果』って書いてあった。そこに……」


 栞は口をパクパクさせて言いづらいような仕草をして、決心したように顔を上げた。


「桔梗の口から言った方がいいけど、私、言っちゃうね。」


「あぁ。」


 俺に続いて日向と沢くんも頷く。


「診断結果には『解離性同一性障害』って書いてあったの。」


「かいりせい……?」


 沢くんがリピートする。

 逆に日向は黙り込んでいる。


「『解離性同一性障害』は多重人格みたいなものね。テレビとかで見たことない?」


 思い返してみる。


「あぁ、テレビでやってたな。思い込みや感情が成長して2つ目の人格が出来ちまうやつか。」


「うん、そんなところね」


 確かに東さんは急におかしな言動や行動を起こすことが頻繁にある。まるで人が変わったかのように。


「かいり……せい。」


 声のした方を見ると、そこには目が虚ろになっている沢くんがいた。


「どうした?沢くん。」


 まるで人が変わったように負のオーラが出ている沢くんに正直戸惑っている。


「い……嫌だ。」


 沢くんの首がカクンと落ちた。


「いきなりどした?沢くん。」


 日向も心配そうに顔を覗き込んでいる。


「ごめんなさい。」


「え?」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 沢くんの声が海の家の中に呪文のように広がる。


「おいおい落ち着け沢くん!」


 突然すぎて状況が理解できない。


「やだぁ……痛くしないで……」


 沢くんは頭を押さえて膝をお腹に近づけて、まるでいじめられている子どものように震えている。


「沢くん……」


 栞は立ち上がって怯えた沢くんの前にしゃがむ。


「沢くんに何があったのか私は知らないけど、私たち沢くんに痛くなんてしないし、別に怖い人じゃないわ。」


「……本当に?」


「えぇ。だからそのウェットスーツを脱いでみて。」


「……え?」


 唐突な問いかけに思わず俺が驚いてしまう。

 そんな俺の驚きには意図もせず、沢くんは黒いウェットスーツを脱ぎ出した。


「お、おまえ!これ!」


 ひなたが驚くのも当然だ。

 沢くんの上半身には無数のアザが広がっていた。

 もしかしていじめかなにかか?


「僕。お母さんがそのかいり……かいり……」


「解離性同一性障害よ」


「そうそれ。その病気なんだ。お母さん優しいんだよ!……でもいつも夜になるといきなり人が変わったように手をあげてくる。」


 それがそのアザにつながっているのか。なんて酷い話だ。暴力を振ってくる相手が親で、しかもその行動は本当の母親がしたいことではない、ということだ。


「沢くんはどうしたいの?」


「え?」


 またまた栞の急な問いかけに今度は沢くんも驚く。


「お母さんにどうして欲しいの?」


「ぼ、僕は……」


 沢くんはしおりの顔を見ては目を逸らして、もじもじしてる。


「言いたいことは言ってみろ!言わなきゃ何も始まらないぜ?」


 日向は腕を組みながら鼻を高くしてドヤ顔している。


「う、うん。ありがと。えと、にっしー」


「に、にっしーね。」


 日向の反応も気にせずに沢くんは決心したように深呼吸した。


「僕、お母さんと一緒に美味しいご飯が食べたい!」


「その夢、絶対叶えようね!」


「うわぁぁ!?」


 予想外の方向からした声に思わずおかしな声が出てしまった。

 声の主は東さんだった。


「あ、東さん!?大丈夫なんですか!?」


「うん、見ての通りデージョブだ!」


 えっへんとその小さな胸を張っている。

 こいつってこんなキャラだっけ。


「でもほんとに無事で良かったわ。」


 栞は涙目になりながらも笑顔を見せた。

 そしてここにいる俺以外の4人が俺の事を見てきた。

 はぁ、やらなくちゃいけないのかあれを。


「部長命令だ!直ちに沢くんの願いを叶えろ!」


「「「「おーーー!!」」」」


 今日は今日で、少し暗くなった海の周りをパシャ、パシャと、カメラのシャッターを押す音がなっていた。

読んで頂き、ありがとうございます!

次話投稿、楽しみにしていてください。

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