第一話 人生終了!?
よろしくお願いします!
……「悪いのぅ。その代わりちょいとばかり能力を強くしといてやったわい。まぁこれで勘弁してくれい」……
「っと、今日はここまでにするか」
キーボードを閉まい、疲れた腕を揉みほぐした。ライトノベルを書き始めて五年。前作がそこそこのヒットをしたもののアニメ化などはまだまだ遠い話で学生時代に夢見ていた憧れの作家とは程遠い。しかし同じ頃に書き始めた仲間はもう五人も残っていないことを考えれば着々と進歩していっているということなのだろうか。前作までは学園ラブコメを書き続けていたが自信を持って書いた前作が書籍化したもののたったの二冊で終わるという結果になり学園ラブコメを書く元気はなくなった。とはいえ何も書かないわけにはいかないので時代の流れにのった異世界系統の作品を書き始めたところだ。
「しかし異世界系の話はどうやってもありきたりになっちゃうんだよな……」
異世界系の話を書き始めたのはいいものの俺は早速その洗礼を受けているのだった。
「疲れたし、少し休むか」
机に突っ伏し、溜まった疲れを吐き出すように俺は深い深い眠りについた。
目が覚めるとそこは異世界だった。
「こ、ここは?」
見たこともない景色、あぁそうか机で寝たまま夢をみているのか。
「ほっほう!目を覚ましたかえ」
目の前ににこにこと笑った白髪の老人が立っている。
「儂は神じゃ。ちょっとした手違いでお主を死なせてもうた。すまんの!わはははは」
しかし、よくできた夢だなぁこの老人も本当に触ってるみたいだ。
「な、何をする無礼者!儂の顔を叩くでない!よいかお主は死んだのじゃ、いい加減理解せい」
そうか、俺死んだのか。。。
「って信じるわけねぇだろ!!!大体どこだよここは!この内装が妙に金ぴかに輝いてる神殿は!」
まてよ、ここどこかで見たような気がする。いや、見たことはない。だけどこの状況どこかで……一体どこだ?
「どこも何もここはお主が創った世界じゃろが」
は?こいつは何を言ってん……っ!そうだ!ここは確かに俺が創った世界、俺が書いてる小説の話そのままじゃないか!この老人もこの景色もこの状況もまさしく俺の小説の通りだ。
「そうか、俺は自分の小説の夢を見ているのか」
「夢じゃないと言っとろうが」
う、何だ?腹が灼けるように痛い―――――槍?この老人が俺の腹に槍を刺しているのか!?
「や、やめ……し、死ぬ」
おいおい待てよやばいこれはまじで死ぬ、まさか本当に夢じゃないのか?
「ようやくわかったようじゃの」
老人は槍を抜くと俺の腹に杖を置き、何かを唱えた。すると傷が癒え痛みもなくなった。
「どういうことだよ」
「魔法を使っただけじゃよ」
「違う、そうじゃねぇ!ここはどこで俺はどうなってんだって聞いてんだ!」
これが夢じゃないなら俺は一体どうなってる!?何が起きてるんだ?
「さっき自分でも言ってたじゃろ。ここはお主が創りだした世界。そしてお主は儂の勘違いで死んでしもうたんだ。だから生き返らせようとしたんじゃがお主の世界でお主はもう完全に死んだことになっててのう。いや、悪い!儂が悪かったから殴るのはやめてくれい!」
渋々殴るのを止め冷静に聞いた。
「それでせめてもの償いに俺の創った世界に連れてきたってことか?」
にこにこ笑っているのがムカつくがぐっとこらえて答えを待った。
「そうじゃ。ここはお主が創った世界。いや、まだ創りきられてない世界じゃ」
そうだ、あの話はまだ序盤だったはず。つまりこの世界はまだここの場所しかないことになるのか?
「じゃが心配は要らん、儂が世界の基盤は創っておいた。じゃがお主が自分で創りたいかもしれんからの、世界の創造ノートをやろう。これがあればお主は自由にこの世界を創り変えられる。いや世界だけじゃないぞ。未来も過去も何もかも全て書き換えられるのじゃ。つまりこの世界はお主の書く通りになる。お主はこの世界の神じゃ」
この世界の神?ってか何だ!そのチート能力!近年のライトノベル業界随一の最強系能力じゃねぇか!
「あとそうじゃお主の能力はもともと乱数調整で最強にしてあるから書き換えたければ書き換えておくれ」
おいおい、人間の能力って神が乱数調整してたのかよ。実世界での俺はなんだ!スライムみたいな調整か!?
「いや、いい。俺はこの世界で最強を極めてやるよ。もともとライトノベルが大好きだからなこういう展開を待ってたのかもしれない」
そうか、俺はこの世界に憧れてたんだ。胸が熱い。鼓動が高鳴る。さぁ早く!新しい世界へ!
ズドッ
「ここが……俺の世界!」
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