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The Higher World 〜ARゲームの隻眼勇者〜  作者: 松風京四郎
第一章 TSS (The Sparkle Story)編
7/10

初めての実践戦闘

エンカウントしたモンスターは、チュートリアルと同じ、ゴブリンだ。

だが、チュートリアルと違うのは、ゴブリンが武器を持ち、動いていることだ。


「うわ、なんか強そうだな〜」

「ううっ、チュートリアルの時とは全然違うではないか」

「大丈夫だって」


三者三様、意見はまとまらないが、戦うしかない。


「シャアアアアア!」


奇声をあげて襲ってきたゴブリンは、俺の懐へ素早く忍び寄る。


「おおっ、と。危ない。ダメージ食らうところだった」


俺はギリギリのところで、体を横に反らし躱した。


「リュート、お前が引きつけてくれ! 俺とサキでなんとかする」

「わっ、わかった」


リュートは、槍を振り回し、ゴブリンを挑発する。

すると、途端に方向を変え、リュートに襲いかかる。


「うわぁ、きた!」

「バカっ! それでいいんだよ」

「行くよー、やー!」


サキによって放たれた、矢がゴブリンの体に突き刺さる。

それに伴い、ゴブリンの体力ゲージが半分程減った。


「いいぞ、次は俺が…」


そう言って、勢いよく飛び出すと通行人の警告が、動きを遮る。


「くそっ。難しい」


俺がもたついている間に、懐に飛び込んだゴブリンが俺に攻撃してきた。


「痛っ! ここまで、リアルなのかよ」


ダメージを受けると、視界の右上に映る俺の体力ゲージが少し減っていた。


「ミル! 瀕死になったら、ペナルティだよー。注意して」

「わかってる。だが、通行人の警戒音とこの武器の重さが、結構やばい」


武器によって変わるが、一つ一つそれなりの重量感がある。これは、スティックそのものの重さではなく、THWが感じさせている擬似的な重量感らしい。


「まだ、やり続けなくちゃいけないのか?」


遠くでリュートが駄々をこねる。


「わかってる。やってやらあ!」


俺はそう叫ぶと、片手に伝わる剣の重みを感じながら、ゴブリンにぶつかりに行った。




俺の攻撃にゴブリンは、余裕の表情で躱す。


「くそっ、あたらねぇ。サキ、援護頼む」

「了解ー。えりゃっ!」


放たれた矢は、ゴブリンを掠めて通り過ぎてしまった。


「ごめん! 失敗した」

「心配するな。今ので、注意がそれた。俺がやる!」

「通行人が近くにいます。注意してください!」


電子的な声で、画面と脳内に注意が促される。


「ちっ、またか」


俺は仕方なく、動きを緩める。

それを見計らったように、ゴブリンが襲いかかる。


「うっ、痛い。ちっ、どうしたら?」


苛立ちが思考を鈍くし、動きがどんどん浅はかになっていく。

それに勢いづくように、ゴブリンも攻撃を強めてくる。


「仕方ない。あれを使うか……」


俺はくだらない結論を頭で確定させ、左目を開いた。

ゲーム画面も通用しないらしいこの目が、荒廃した景色を生み出す。

俺はそこに映る通行人の姿と、右目に映るゴブリンの姿とを重ね合わせる。


「突っ切っていくぞ!」


左目を閉じ、目に映った景色を反芻(はんすう)して、通行人の位置を思い出す。

その位置を、右目の景色で捉え、走り出す。


「オラァーーー!」


トップスピードで駆け出した俺は、警告音がなる暇もなく、通行人の間を縫って進み、ゴブリンに横払いの一閃を投じた。


「ギャアアアアアア!」


凄まじい勢いで、払われた初期装備の木の剣の一撃は、ゴブリンの胴体を真っ二つに割り、断末魔の声をあげながら、体力ゲージをゼロにした。


「やったね。ミル」

「やっと終わったのか。はあ〜」


二人が思い思いに、賞賛の声をあげる。


「報酬 10ゴールド EXP 50。レベル2に上がりました」


機械的な音が、俺達の戦いの戦利品を教えてくれる。画面に映る、所持金とレベルの欄が上がったのを確認した。


「今回は使ってしまったが、二度と使うのはやめよう。他のプレイヤーに悪い」


俺は戦いを終え、自分の目を封じ、戒めることを決定した。

これは、このゲームのチート。つまり、ただのズルになるからだ。


「じゃあ、行こう! 私達の拠点、コトーに!」


サキの声に頷き、眼前に見える街に歩み始めた。

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