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The Higher World 〜ARゲームの隻眼勇者〜  作者: 松風京四郎
第一章 TSS (The Sparkle Story)編
6/10

剣と魔法のAR世界

電子的な光が消え、現れた景色は中世ヨーロッパのような景色であった。

いわゆる、よくあるファンタジーの世界観だ。

だが、違うとこもある。全く雰囲気は違うが、元々あった建物や道路の面影がある。

幹線道路を行き交う自動車は、ヨーロッパ調の馬車や人力車に姿を変え、コンクリートと鉄で構成されたビル群は、同じ高さの石とレンガでできた建物に置き換えられていた。


「よくできてるな〜」

「それはもちろん、衛星写真の地図を元に作られてるからね」


俺が景色に圧倒されていると、見知らぬ金髪のプレイヤーが話しかけてきた。


「どちらさんですか?」

「ひどい。幼なじみの顔、忘れるなんて」


いや、外国人留学生の幼なじみなんて、特殊な存在なんていなかったはずだが。


「私だよー、私。美咲だよー」


一瞬の間があり、口を開く。


「気づくわけない」

「ひどい!」


彼女は頬を膨らませる。


「だって、その髪型で、その胸でわかるわけないだろう」


彼女の黒髪は、腰まで伸びた金髪になり、小さい胸は、不自然なほど膨らんでいた。眼鏡も外れている。


「ゲーム内だけでも、憧れのボディになりたいじゃん。少しは夢みさせてよ」


彼女は泣きそうな表情で、訴えかける。


「お前の夢は知ったこっちゃないが、俺は今どう行動すればいい?」


彼女の泣き姿を完全無視して答える。


「そうねー、とりあえず龍斗君と合流しよう。そこで決めればいいと思う」

「なら、とりあえずここで待っとくか」

「うん」


俺達は、龍斗が設定を終えるまでの間、会話をして待つことにした。




「売り出されて僅かなのに、結構人がいるな」

「そうだね。まあ、ずっと前から期待されてたゲームだから、当然っちゃ当然だけど」

「確か、あの人達ってこれをプレイしている人達なんだろ?」

「うん、プレイヤー以外の普通の通行人達は、私達の目には映らないはずだよ」

「なら、一つ気になったんだが、その通行人に俺達がぶつかることはないのか?」

「それなら、心配ないはずだよ。HTWが近くの人を認識して、通行人には警告を、プレイヤーには通行人の位置を知らせるようになってるから」

「そんな機能もあるのか。値段の価値は流石にあるな」

「おお、充。そこにいたか」


見覚えのある長身の男が話しかけてきた。


「龍斗、何してる。遅いぞ」


龍斗は、悔しそうな顔を浮かべながら答えた。


「チュートリアルの戦いで、全く上手くいかなくてな。時間がかかってしまったんだ」

「なぜ動かない相手に、時間がかかるんだ」

「確かに」

「何? あいつは動いていなかったのか? 気付かなかった」


動いていたのがモンスターではなく、無駄に右往左往していた龍斗の方だったらしい。これは、先行き不安だ。


「じゃあ、皆揃ったことだし、とりあえずパーティを組もう!」


元気な声で美咲が提案する。


「とりあえず、充君と龍斗君のプロフィールを見せて。私も送るから」

「どうやって送るんだ?」

「THWを使えば、チャットとかプロフィール紹介とかができるよ」

「わかった」

「了解だ」


俺達三人は、互いにプロフィールを明け渡す。


「充君は、戦士で片手剣使いね。典型的な前衛職だねー。名前はミルだから、ゲーム中はミルって呼ぶね」

「ああ、わかった。お前の名前はサキで、魔道士で弓使いか。あまり馴染みがない組み合わせだな」

「うん。このゲームは、どの職業でも武器を扱うことが出来て、それぞれに利点と弱点があるんだけど、それを考慮してこの組み合わせにしたの。基本的に攻撃魔法で中距離を、弓で遠距離を攻めていくつもりだよ」

「そうか。なら、後衛がいいかな」

「そうだね。で、一番初心者の龍斗君は、騎士で槍使いだね。防御力が高そうだから、前衛と中衛の間ぐらいで、モンスターを引きつけてもらおうかな」


すると、龍斗はなぜか焦りの表情を見せる。


「俺は、一番安全そうだから、それを選んだのだが……」

「ある意味、一番危ない役どころだな」

「そうだねー」

「失敗した。やり直したい」


龍斗がそう呟く中、俺は名前を確認する。


「えーっと、名前はリュート……? って、まんまじゃないか」

「えっ、ダメだったのか?」

「いや〜、ダメってことはないと思うけど、バレたりしたら色々大変だと思うよ」

「そんな……」

「まあ、やってしまったものは仕方がない。とりあえず、さっきの役回りで戦うとするか」

「そうだね」


項垂(うなだ)れている、リュートを無視し、勝手な了承を得ると、俺達は歩き始めた。




俺は、コンクリートから改変された土の感触を確かめながら、近くに見える街に向かって歩いていた。


「本当に、土の上を歩いてるみたいだ」

「THWで、触覚を管理しているおかげだね」

「街の景色も、まるで違う。仮想の世界に飛び込んだみたいだ」


俺達は会話を楽しみながら、ゲームのクオリティの高さに感心していた。


「これが、通行人の表示か。わかりやすくていい」

「ちょっと、視界の邪魔になるときもあるけどね」


通行人は画面の左上のマップに赤い点で表示され、近くに来るたび視界に大きく、赤い点が映し出された。


「シャアアアアア!」


気を抜いていると、突然威嚇の声が響いた。

聞き覚えのある、その声は、どう見ても俺たちの方に向けられていた。


「モンスターが来るよっ!」


そのサキの声と共に、初めての戦闘が幕を開けた。





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