ステルス ~その読者、忍びの技を使い痕跡を残さず~
少し前に「なろう」の評価状況を集計するアプリを作ってテストしました。さらっと情報を収集してみると、たった一人で1800以上の小説に評価を入れている恐るべきお方がおりました。凄まじいです。ジャンルは恋愛物が中心でした。
ちなみに、今更言うことではありませんが「なろう」のポイントは、評価ポイントとブックマーク数です。そして日刊ランキングに載るのは、読者が心を一つに合わせて、「生まれた日は違えども評価のときは同じ日、同じ時を願わん」が叶ったときです。桃園の誓いというやつですね。
さて、この「なろう」のポイントですが、実は機能しているとは言いがたい状況です。小説を公開している著者の中には、ブックマーク数よりもユニークユーザ数が圧倒的に多いことを疑問に思った方もいるでしょう。
「なろう」の小説を読む場合、ログインしなくても本文を取得することが可能です。ブラウザから小説を読む場合は、一作品だけならブラウザのブックマーク機能を使っても十分事足りるでしょう。しかし連載中の複数の小説を読もうと思ったら、「なろう」にログインして、ブックマークを付けて更新情報を見た方が楽なのは言うまでもありません。
さて、これを前提に、ユニークの方が圧倒的に多い理由を考えてみます。
1 Google等のボットが定期定期にクロールしている
2 同じ読者が時間帯や場所でIPアドレスが切り替わり、複数カウントされている
3 更新された小説から見に来て、そのまま去っていく一見さん
4 ブラウザのブックマーク機能を使っている
5 専用アプリでデータを取得している
1のボットは日に多くても日に10程度です。2はまあそういうものです。3は時間帯によりけりですが、タイトルに興味を引くようなものを付けていない限りは、せいぜい10から20です。4はなんとも言えません。そして想定よりも多いユニークユーザの要因はほとんどが5だと思われます。「なろう」の公式機能を使わず、アプリ側の機能で運用している場合です。
アプリだと何故ブックマークが増えないのでしょう? いくつかのアプリを検証してみましたが、「なろう」のブックマークと連携している物は皆無、ログインする必要の無いものばかりなのです。
アプリを利用した場合、公式のブックマーク機能を使わなくても、アプリ側の機能で用が足りてしまいます。その結果ログインする必要もなくなり、公式のブックマーク機能は使われなくなります。これがステルスという状況です。
もし私がリーダーアプリを作るとすれば、こういう問題を防ぐため、必ず公式ブックマーク機能を連携させた物を作ります。しかしそれをやろうとすると、それなりに手間が増えます。認証を通した後に発行されるクッキーのハッシュを管理したり、ブックマーク情報ページのHTMLの字句解析等をやらなければなりません。
自分の小説のアクセス状況を収集するアプリを作ったときに、その辺りは検証しました。作ったのは「なろうステート」というAndroidアプリですが、インストール数が7で絶賛爆死中です。小説も細々なら、アプリも細々です。ちなみに貼り付けてある広告から50円ぐらいの収益を生み出しました。自販機のジュースも買えませんね。
リーダー側のアプリ作成を作成する場合、「なろう」には公式でアプリ用のAPIが公開されています。しかし機能が中途半端なのです。残念なことに公式ブックマークとの連携機能などありません。結果としてアプリ作者は、公開されているAPIの範囲でリーダーアプリを作り、ステルス状態を生み出すのです。
この状況から分かる通り、私のようにランキングにも載らず、細々と小説を書いている人間にとって気にすべきなのは、ポイントが増えたかどうかではありません。ユニークユーザ数、そして最新話のアクセス数です。これが日ごとに伸びないなら、ぶっちゃけ読まれていないのです。ブックマーク数は、読者の中で公式機能を利用している人の数に過ぎないのです。
だからブックマーク数なんて気にする必要は無いのです。「おぉぉ、今日はブックマークが6も増えてる」とか喜んでも意味は無いのです。「今日は1つも増えなかった」とか残念がる必要も無いのです。
ブックマークに意味は無いんですよ? 無いんですよ?




