表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吾輩は猫かもしんにゃい  作者: 天竜川来良
2/2

一章 黄色ずきんちゃん

一章 黄色ずきんちゃん


 カワセミの鳴く森で、ネロは首を伸ばした。

 香水が風に流れて、ふわりとネロの鼻先をくすぐる。薔薇の香り。

 ネロの心もまた、花が咲き乱れていた。

「あんた……意外と根性あるのね」

 ぽきりと枝を踏みならし、その人は、キノコの群生する赤や黄色の草むらを背後に振り返った。

 魔女ハルン。

 猫が恋心を寄せる相手。

「にゃん!」

 歓喜で飛び上がって小躍りする。

『当然ニャ。我輩を使い魔にしてもらうまで、ずっと追いかけるニャ!』

 ネロの両脇にそっと手が添えられ、抱き上げられた。

 ハルンの頬が急速に近づいてきて、ネロはハッと息を止め――

 ごす。

 情け容赦ない頭突きを食らい、子猫は砂上に倒れた。

ハルンは大げさにのけぞって叫んだ。

「っかーー、痛いじゃないの!」

『おまえがやったんニャ!』

「あんたがしつこいせいよ! 何度言ったらわかるのよ、私の住居、ペット禁止なんだってば!」

『にゃにゃー! 頼む、我輩は町を歩くだけですぐ猫ハンターに捕まる! もとの生活に逆戻りニャア!』

 爪で砂を掻き、ネロは懇願する。

 が、ハルンは溜め息を一つ。桃色の髪をかき上げる。

「それは、かわいそうだと思うけどさ……」

けだるい仕草一つにも釘付けで、ネロは胸が苦しい。ただでさえ速い猫の心音が、とんとんと加速する。

 ハルンは、花のようにきれいだった。

 イチゴ味の綿飴みたいな髪、ローズティのような魔性めいた緋色の瞳。背丈の高いスタイルに、シックなロングスカートがよく似合っている。

『なぁハルン、我輩に名前つけてくれたニャ。ネロって! つまりあなたは名付け親ニャ!』

「あぁ、あれはねー……」

『あれは?』

「猫を、なまって言っちゃったのよ」

『そんにゃーっ!』

「それに、昔からの伝統で魔女の使い魔と言えば、黒猫かカラスって決まってんのよ。白毛のあんたじゃ絵にならないって」

『そんな理由でー?』

 理不尽に身を震わせている間にハルンは歩き出した。

 にゃっと鳴き、あきらめず、その背中を追う。

「あーもう、めんどくさいなー」

 しばらく進むと突然に、ハルンがこちらに舞い戻ってきた。木陰の下で、ネロを抱き上げる。

「――ネロ。私に突き従い、私と運命をともに、主従関係を結べ」

ネロは目を見開く。

主従関係――

それは使い魔の契約だった!

抵抗する暇もないほどスマートに、猫は抱き抱えられた。猫の鼻に魔女のキスが落ちる。

照れる余裕もない。次にハルンは、顔に似合わぬ皺の多い手を、ネロの唇に押し当てた。

「のんで。魔女のミルク」

 ぶっきらぼうに言い放つ。

 大昔からの伝統で決まっている儀式だ。魔女の体内から分泌される【魔女のミルク】を使い魔が飲むことで、魔力と生命が使い魔に分け与えられる。

 ネロはかしこまって、おずおずと指先を舐めた。

 鉄の味がする。初めて知った。魔女のミルクというものは、血だった。

 ほんの微量の、ハルンの血だ。

鉄のにおいがする。

すると首に焼き付くような痛みを感じた。

なんだ、これ?

手探りで触れようとしたが、熱くてとても無理だった。

ハルンが手鏡を差し出して見せてくれた。

ネロの首元に、さくらの花びらのマークが刻まれていた。

「ふふ、かわいいでしょ? それが使い魔の刻印よ。私のものという証」

ハルンの指が刻印を一撫でする。急に照れくさくなって頬をかいた。

「あ、ありがと……我輩、ハルンの役に立てるように、がんばる」

「そう?」

 首の後ろを掻いてハルンは思案した。その手が背中に伸びるが、身体が硬い彼女は思う場所に届かないようだ。

「我輩だったら、いくらでも背中掻いてやれる!」

「ちょ、やだやだ飛びかかんないでよもー」

 ジャンプして肩にしがみついてきたネロを振り払って、ハルンは品定めする目つきで言った。

「なに勘違いしてるの? 確かに使い魔にしたけど、私とはここでお別れよ」

「はぁっ?」

 ハルンはネロの身をぞんざいに土の上に降ろした。

「あなたはもう猫じゃない。【猫魔】なの」

【猫魔】とは、人間の言葉を操り、寿命も妖怪のように延びて、果てには魔力を行使する。

 猫でなく、人間でもない。

【猫の妖魔】だ――

ネロはヒッと喉を鳴らした。

「もうペット業者にも猫ハンターにもつかまらない。誰も手出しできない。それに人間の言葉をしゃべれるようになったから、これからは仕事の取引もできるでしょ。マギルドで仕事をもらって、一人で立派に生きていってちょうだい。そうだ、ちょうどいい仕事があったわよ。泥棒退治の。私が引き受けた案件だけどあんたに譲ってあげる。せめてものセンベツにね。先方には連絡しておくから、よろしくぅ」

「そ、そんな、まって――」

混乱して目がぐるぐるした。

人間の言葉を喋れるようになった……?

「そんなまさか……ってホントだニャ!」

「じゃ、ばいばい!」

 ハルンはホウキを出現させると、スカートをまくってふくらはぎに軟膏を塗った。

【魔女の軟膏】……魔女が空を飛ぶための塗り薬だ。普通の人が処方したら、毒にやられて全身がしびれて果てには死ぬというあの……。

「ハルン!」

 契約を交わした魔女と使い魔は、本来、離れられないのでは……?

 しかしハルンはホウキに乗って加速し、あっさりとネロを残して振り切っていってしまった。



 世界の中心地オメガ大陸から陸続きで、南東にコブのように突き出ているのが【アルファ半島】と呼ばれるこの地域である。

 西は温暖なプリベラ市、東は秋冷のイヴェール市。ふたつの主要都市は離れていて、間に広い街道、放牧地や小さな町村が点在している。

とりわけ有名なのが、プリベラ市だ。世界中で需要のある野菜『チェチェ』の生産地として、安定した経済力を持っている。

ハルンはプリベラのお抱えの魔女だ。

この地域の天候・気候をバランスの良いものに保ち、植物がすくすく育つための最高の環境にする。

そうすることで各地の気候を生かした特産品や伝統、風景が生まれ、観光地として人を寄せている。

ハルンはたった一人で、市全土の天候を穏やかに定めているのである。

嵐がふけば天の怒りなだめすかして静め、太陽が輝きすぎて土壌が干上がりそうになれば雨を乞い降らせ、台風が接近すれば進路を海側にそらせる。

毎日、毎夜。【風見の塔】の天辺から空模様を観察し、風と対話し、ハルンが細やかに気を配って天候を安定させ、人々が安心して暮らせる街を守っているのだ。

豊穣の神のごとく。

そんな重要な仕事をするハルンを尊敬し、手伝いをしたいと心から志願したのだ。

なのに、この仕打ち。

ネロは転がっている細い枝を踏んで、ぽきりと折った。

「くそっ! 絶対に我輩を、正式な使い魔として認めさせてやるニャ――っ!」


ネロは息弾ませて、一気に森を抜ける。

見晴らしのいい緑の丘が広がり、その一段下に町が見えてきた。

ここはプラト地区。プリベラ市の郊外だ。住宅地と農業地が中心の町で、大きな森林や公園もある。

ネロは生まれたときから、こんな風に歩き回る自由がなかった。

初めて得た自由のプレゼントに、足が地面からふわふわと浮いているようだった。

 目抜き通りをあるく。周囲の通行人は足を止めて、物珍しそうな目でネロを振り返ってきたが、つかまえようとする者はいなかった。【猫魔】を畏怖し、本当に手出しできないようだ。

今のネロには、エサや宿を与えてくれる飼い主が存在しないのだ。自分で生計を立て、強く生きていかねばならない。

 彼は迷わずまっすぐに、裏路地へ進む。

 湿った日陰の路地では、野良猫が散歩していたが、ネロは目を合わせずにきびきびと歩いた。ネロは猫魔になったのだ、もう彼ら猫とは同種ではない。

ネロは属する故郷のない、よるべない半端物になってしまった。自分で望んだとはいえ……。

 どきどきしながら細道をいくと、怪しげな赤黒い麻のカーテンを張った露店にぶつかる。

『マギルド』のプラト支部。

 マギルドとは、その名の通り魔女に仕事をあっせんする仲介業者のネットワークだ。

魔法の才覚があるかどうかは百パーセント血筋で決定され、後天的に能力を得ることはできない、と言われている。とは言え、生まれ持ったものだけで甘い汁を吸えるわけではない。

魔女を志す者は親許を離れ旅立つ。師匠を見つけ弟子入りし、最初は炊事洗濯から始まって、長年の修行に励んだ末に、一人前の職業魔女として生活できるのだ。いわば鍛冶職人のようなもの。

マギルドに足を踏み入れる。

「あらぁ、まあ……」

水晶玉の整理をしていたらしい年嵩の魔女は、ネロの姿を見て目を丸くした。

「珍しいお客様ねえ。ガット・アイで【猫魔】だなんて、半世紀ぶりくらいに見たわね」

 ネロが使い魔の刻印を首に持っているため、見た目でわかるのだ。

「こんちは。我輩は猫魔のネロだ……仕事を紹介してほしい」

笑い皺のくっきりとついた、人の良さそうな魔女は、にっこりと首を揺すった。

「ハルンから話は聞いてるよ。あんた、かわいそうに、【はぐれ魔】なんだってね」

「にゃ?」

 はぐれ魔とは、魔女が引退もしくは失踪・死去などで使い魔の面倒が見られなくなったとき、主人を失って孤立状態の使い魔を指すという。

 ストレスや悲しみから暴れることがあり、たいがいはどこかの魔女に拾ってもらうのだという。

「あぁ。まあそんなようなもんニャ……」

 自分で捨てたくせに、この言いぐさ。

 絶対にハルンを見返してぎゃふんと言わせてやるニャと、ネロは誓った。

ハルンの置き土産の仕事。それは――

『チェチェ畑に、泥棒の常習犯が出現する。つかまえてほしい』

 という依頼内容だった。

 チェチェとは、プリベラ市のほこる特産品の緑野菜のこと。

 見た目はキャベツに似ているがキャベツよりも青々として甘く、栄養価が非常に高い。

デリケートで栽培が難しく、滅多に手に入らない高級食材として有名だ。

地元民は、ふだんは普通のキャベツや白菜を食べ、お祭りやお祝いといった『ハレ』の儀式には必ずチェチェを煮込んだスープを食べる。昔からの習わしだ。

ネロはまだ口にしたことがない。とくに、三日三晩煮込んで味がしみ込んだスープは天国に昇るほどの美味らしく、あこがれの味だ。

「そのチェチェ泥棒はスイスイ逃げて一向に捕まらないから、幽霊だって噂なのよ」

「んにゃあああっ?」

 誰もが寝静まる晩にチェチェが盗まれるので、一晩かけて張り込みをしなければならない。

「やっぱりやめとくかい?」

ネロは、テーブルクロスの裾の布に身体を寄せて、ぶるっと震えた。

「に、にゃんでもないぞ! 我輩は、にゃにも言ってない! 引き受けるぞ!」

 

 *

 

 プラト地区の中心街から、猫の足で歩くこと、二時間。

着いたチェチェ畑は、とにかく広かった。収穫前の薄緑色の葉っぱが、畑全土に並んでいる。

はぁ、とネロは感嘆した。

道を隔てた丘の上には、墓石が並んでいた。土地が豊富なので、この地方では土葬が主流なのだ。

 畑と墓地は隣り合い、まるで死者の養分を吸い上げて、野菜を育てているかのような体を成している。 

なぜ、こんな、立地……。

時刻は深夜。

 日が落ちると肌寒い。

 ぶるるっと震えて、ネロはヒゲを撫でた。

 そうだハルン、ハルンのことを思いだそう。

『かわいいでしょ? それが使い魔の証よ。私のものという証』

 そうだ、彼女の期待に応えなくてどうする! よくやったなよしよしネロって褒めてもらうんだぁぁ!

お湯が沸騰するように、みるみる勇気がみなぎってくる。

いくぜいくぜ! 我輩はやれる!

「ううう、よっしゃあああああああ―――」

 武者震いし、渾身の力で飛び上がった瞬間、となりに突然生えた人影が叫んだ。

「うっるさいわよバカ猫」

「ぎにゃーっ! 出た幽霊っ?」

「しつれーしちゃう!」

 ぷんぷんと怒りながら登場したのは、ちゃんと脚がある人間だった。

十代半ばの少女。

金髪の毛先がくるんと跳ねたショートカットに、赤い大きなリボンカチューシャ。きれいに揃った長い睫はどう見ても「つけまつげ」である。

薄手のデニムジャケットにショートパンツ、らくだ色のモカシン。ランタンを掲げて、やたらと威張ってくる。

「ほら、よっく見なさいよ、このかわいいベビーフェイスを。思わず守ってあげたくなるランキング常に一位のキャロラインちゃんよ」

 ネロは怪訝に見返していると、もうひとつ人影が増えた。

「放っておけキャロライン」

 後ろから軽くいさめて登場したのは、落ち着いた大人の男……ではなく、少女と同じ年くらいの少年。

その服装は、「魔法使いかぶれ」の一言で片づく。

イチイの木でつくった杖を持ち、フードつきの黒ローブでほとんど全身を覆っている。文様が刻まれた大仰なベルトで革ズボンを留め、足元はカツカツ音がするロングブーツ。

顔のパーツはわりと整っていて悪くないが、華やかさに欠ける。愉快なほどの魔法使い然とした少年である。

「あんたら、誰ニャ?」

「笑止。決まっているだろう。ぼくはウィザード。イヴェール市から来た魔法使いだ」

「いや知らニャいけど……」

 魔法を使える人間は、少々、自分が有名人だと思い上がる傾向にあるようだ。

「えっ、魔法使いなの?」

 ウィザードの薄い眉がピクリと動いた。

「そうとも。魔女タム様の直々の弟子だ。今は修行中の身だが、次期、秋の魔法使いってわけさ」

 男子で魔法が使える者は、魔女の人数の半数以下。魔女と違って血筋とは無関係であり、突然変異で能力が発動するらしい。超能力のように。

 秋の魔女は、男子を弟子に取ったということだ。

 イヴェール市もまた、魔女タムを雇い、季節を秋の涼しい快適な気候に保たれている。

「師匠の敵である魔女ハルンが、チェチェ泥棒退治をしているの情報を聞きつけ、ぼくも賞金を稼ぐふりをしてやって来たわけさ。しかし見当たらんな。恐れをなして逃げたか?」

 黒髪黒目の少年は、神経質そうに目ざとく周囲を見渡した。その目つきは、親の敵でも探すようにめらめらと燃えたぎっている。『師匠の敵』って……

 あの適当なハルンのことだ。この少年の恨みを買うようなことをしでかしたらしい。

「なあ、どうしてハルンを恨むニャ?」

「ふん……見ず知らずの貴様に、説明する義理はなかろう」

「そ、そーだけど、野次馬根性っていうか、気になっちゃうだろ?」

「馬なのか。猫のくせに」

「猫じゃニャい! 猫魔だっ!」

「猫魔? 貴様、どこの魔女の使い魔だ? まさかハルンの――」

 ネロは目をグルグルと泳がせた。ここは隠したほうがいいだろう。咄嗟に判断し、首を振った。

「ちがうって! あの大魔女ハルンの使い魔なんてそうそうなれるわけねーよ!」

「それもそうか。ちんちくりんの子猫だしな」

 いちいちむかっとくる少年である。ガット・アイをご存知ないらしい。

「我輩は、はぐれ猫魔なんだ。御主人には捨てられた。独り立ちするために、チェチェ泥棒を捕まえようと思って……」

「ふーん……?」

 しげしげと疑い深くネロを眺めてくるウィザードを無視し、ネロは少女の方を見た。

「あんたもその、魔女タムの弟子なのか?」

「あたしはただの付き添い人よ。一人旅じゃ、ウィザード様が心配だってことで、タム様に言われてお供してるわけ」

 ウィザードはこともなげに頷いた。

 お供するにしても、こんな、どこにでもいそうな少女に頼むだろうか? 年頃の男と女が二人旅って……。

 少しモヤッとしたが、ネロには関係ないことなので黙っていた。

「ねえウィザード様、これからどうするの」

「うむ……ハルンは確かに、ここの泥棒退治の依頼を受けているからな。潮が満ちるように、やつは必ず来るはず……。ぼくが先に泥棒を捕まえてしまえば、ハルンの面目は丸つぶれだし、犯人を横取りしようとのこのこやってくるかもしれない。つまり、ぼくらは普通に仕事を遂行するまでだ」

「ねえ、いいこと考えたんだけど」

 突然キャロラインはネロの首根っこを掴んで、宙に持ち上げてしまった。

「ウグッ」

 息が詰まってネロは声を上げる。

「この猫をエサにしましょ」

「エサ? いや猫なんて煮ても焼いても不味いらしい」

「いやそういう意味じゃない!」

 キャロラインは地団駄を踏んで、一から説明をはじめた。

「我々は隠れて、猫で犯人をおびき寄せるのよ。で、犯人にこっそり近づいて後ろからバーン! よ!」

 バーン、と正拳突きの仕草をする。

「この世の人間、八割は『猫好き』なんですって。つまり勝率八割の見事な作戦よ。あたしはべっつに猫好きじゃないけど」

「ぼくも特には」

「おい……」

 二割の方に入る二人が、好き勝手に言っている。ネロは渋面になった。

「勝手に我輩をおまえらの作戦に入れるなニャ」

「いいじゃない。この報酬大きいし、みんなで山分けしましょうよ」

「むう……!」

確かに、ネロだけで泥棒を捕まえるのは困難を極める。

「――さあ、ウィザード様。隠れましょ!」

 キャロラインがランタンの火を消すと、辺りに闇がすとんと落ちる。

 左右に畑を挟んだ辻に取り残されたネロは、できるだけゆっくりと歩き、にゃあと夜空に鳴いた。

しかし周囲からの反応はなく、墓場と畑を通り抜ける風が吹くばかり。

 幽霊は来ない。

 ネロがため息をついた、そのとき。


 ルララララー……

 ぴーしょろりろ、ぴーしょろ

 ルンタッター……♪


 という、よくわからない歌が、真夜中のチェチェ畑に響いてきた。

 祠のなかで話しているように、よく響く声。

 どこからと判別のつかぬ方角から、茫洋ときこえる。

 ネロの背筋にびっしりと鳥肌が立った。

「ひぃぃぃぃんにゃああああああああああっ! ゆ、ゆーれー、で・たあああああっ!」

「ちょっと、幽霊の声が聴こえないでしょ!」

 半分キレたキャロラインの腕に、口をふさがれた。


 ルララララー……

 ルララルララル―……♪


 幽霊らしき声は確かに、しきりに畑内に響いて肝を冷やしてくるのだが、居場所がよくわからない。人の動く気配もなかった。

ざわ、と妙に温かい風が吹き抜けるだけである。

まさかほんとうに幽霊なのか?

ネロは混乱しながら、必至に幽霊をおびきだす作戦を考えた。

キャロラインの足元のすぐそばに、まだ収穫していない、こんもり実ったチェチェの畑。

ネロは少女の腕をすり抜けて、葉に鼻を寄せる。土のにおいにまざり、甘くていいかおりがした。

「うわぁー、このチェチェ、葉っぱの艶が違うな。めっちゃくちゃうまそー! い、いただきまぁす……!」

 もちろん食えるわけがない。フリだ。だいたいチェチェは固くて、生では食えない。煮込むほど味が染み込んで美味いという。

 やはり幽霊は現れなかった。派手さに欠けるようだ。

「だめか……」

 諦めかけたとき、そのすぐ脇から、歌声がした。

「るーるぅー♪」

「にゃああああっ!」

 驚きと恐怖に耐えかねて、ネロは地面から一メートルくらい飛び上がっていた。

 振り向くと、そこにはキノコみたいな、ずんぐりした人影があった。鮮やかなタンポポ色のずきんを頭からすっぽりとかぶった少女である。拍子抜けするほど小柄だ。

「すっごくかわいい猫!」

少女は無邪気に、両手でネロを抱え上げる。

「我輩は猫じゃねぇ! 猫魔だ!」

「ねこま?」

さっきの歌と同じ声の持ち主。こいつが噂の幽霊らしい。ウィザードたちと同年代の子どもだ。

 こちらの様子に気づいたウィザードが向かい側に回り込んできて叫んだ。

「猫、おまえがつかまってどうする!」

「捕まったなら、こっちも捕まえたってことだ」

 腕の中でもがきながら、ネロは勇み込んで幽霊少女を見た。

幽霊少女も、ずきんの下から目を光らせ、ネロを見てきた。その左腕には、泥のついた大きなチェチェを一玉抱えている。

「チェチェ泥棒!」

「わ!」

 少女は今気づいたように大きく目を見開いた。その隙にネロは手からすり抜け、いったん着地。背筋をしなやかに伸ばして飛びかかる。

「観念しろ!」

幽霊少女はブーツのかかとを鳴らし、すらりと避けた。ネロは案山子がくくりつけられていた木の柱に激突した。

「にゃー!」

畑の辻を曲がって公道のほうに出た幽霊は、夜空に懺悔するように叫ぶ。

「ふええええ、ごめんなさぁーい!」

「謝って済むか! 貴様の罪を裁く!」

 ウィザードは鋭く宣言しながら、黒い運河のようなローブを仰々しく広げた。

 短い杖を掲げると、鋭く叫ぶ。

「ばッ!」

 すると風が彼に味方し、追い風をたて、足の速度を上げた。ウィザードは風をまとって走り出した。

 そのあとを十歩遅れて、キャロラインが道路に飛び出る。

走り出す彼女の肩に、迷わずネロは飛び乗った。

「ぎゃぁー! おもっい! 離れなさいよっ!」

「走って無駄に体力使いたくないから、こうするしかないんだ!」

 と言いつつ、実はさっき柱にぶつかった際に、ほんのちょっぴり右前脚を痛めていて、全力で走れないネロなのである。内緒だけど。

「なっによ、えらそーに。あたし猫なんか大嫌いなのよっ!」

「なんだとぉ!」

「ちょっとかわいいからってチヤホヤされて、あいつら調子に乗ってんじゃないのぉ! いいこと猫、あたしのほうが、猫よりずーっと、かわいいのよっ!」

「いやいや人間と猫じゃ比べ物にならないニャ、猫は世界一可愛い! なかでも一番美しいのが我輩ガット・アイで――」

 文句を言いながら、キャロラインはネロを放り投げることなく、走り続けた。

 意外にも幽霊少女の逃げ足は速い。

 幽霊少女は、懐から折りたたみ傘を取り出して、柄を伸ばした。

大事そうにチェチェをスカートの内側に隠すと、傘に飛び乗る。すぐに足が地から離れ、浮かび上がった。

「待て、こら……!」

 もう気の利いた言葉も思い浮かばないらしいウィザードは、悔しげに叫ぶ。

彼は空を飛べないらしい。

 空を飛ぶ幽霊少女も、スピードは地上を走るのとそれほど変化ない。

 おかげで目標を見失うことがなかった。


 たどりついたのは、慎ましやかに並ぶ民家の端だった。

 夜中なのにまだ明かりの灯っている小さな家に着くと、もう追っ手のことは気にしないのか、幽霊少女は扉から飛び入っていった。

 愚かにも、袋のネズミだ。彼女は逃げられない。

「報酬はぼくのものだ。おまえはなにもしてないからな、猫」

「あー! さっき山分けって言っただろぉ!」

 ウィザードと睨みあっていると、たてつけの悪い扉の前にかがみこんで耳を澄ませているキャロラインが口を挟んできた。

「あれは嘘よ」

「そんにゃああああ!」

「あーもう仕方ないわね、ウィザード様、もう折半でいいわよ。一緒に追い詰めたんだもの。1:1:1で平等よ。文句なし」

「それもそうだな」と、すぐにウィザードが同意して構えを解いた。イチイの杖を懐に仕舞い始める。

「まて、なんでその女まで頭数に入ってるんだよ! 平等さに欠ける! 結果的に我輩の取り分が少ないニャ!」

「キャロラインにここまで運んでもらった腑抜け猫が、なにをギャーギャーと」

「ニャウ……」

 ウィザードの一言に、ぐうの音も出ない。ネロは肩を委縮させた。

 場が静まり返ったその折、

「ふぉおおお、ヒョーホホホホホ!」

 奇怪な笑い声が家の中から響いてきた。玄関の扉が、徐々に開いていく。

これはもう幽霊どころの騒ぎではない。いったいこの家は、なんなんだ……ゴーストハウスか?

 思わずウィザードと顔を見合わせたネロは、わずかに開いた扉から室内を覗きこんだ。

するとそこには、長い金髪を三つ編みにして垂らしている、寝間着姿の若い女性がいた。とりつかれたようにチェチェの葉っぱに食らいついている。

明るいところでよく見ると、ネロの知る緑色ではなく、強烈に濃い紫色をしていた。

ガサガサと音が響くほど、その紫色の葉をちぎっては喰い、ちぎっては喰い、飲み込んでいる。

「おいしーい! 絶品よ! 今宵の紫チェチェは格別の美味ねぇ」

 彼女は臨月に近い、おおきなお腹を抱えている。

「なんだ、ありゃあ……」

 ぽんと手を打ち、キャロラインが言った。

「そういえば、聞いたことあるわ。百個にひとつくらいの割合で、たまに収穫される紫色のチェチェは、妊婦が急に欲する食べ物ナンバーワンなんだって。妊婦の身体にも栄養抜群で、良い食べ物だって。でも、高級品のさらに希少品だから、金持ちの連中が独占的に買い占めていて、庶民は食べられないんだって」

 口をもぐもぐさせながら妊婦は、笑顔で傍らに礼を言う。

「毎日ありがとう、ルララちゃん。いいこね! これで元気な赤ちゃんを産めるわ」

「奥さま、元気になってほんとうによかった」

「でもごめんね。あたしのために泥棒なんて……」

「いいえ。わたしにとって、奥さまと赤ちゃんの健康がなによりも大事ですから」

 傍らで控え目にほほえむ、黄色ずきんの幽霊少女……いや、幽霊ではない。

ただの、レインコートの少女。

ずきんの素材はビニールだった。さらに足元のブーツも、エナメル製の長靴。杖だと思った長い道具は、畳んだ雨傘だった。

今日は雨でもないのに、なぜ台風対策万全の恰好なのか不明だが、よく似合っている。

大きな茶の瞳。枯草色のシブい髪を肩まで伸ばして、童顔の低い鼻にはそばかすが飛んでいる。名は、ルララというらしい。

彼女はほっとした表情のまま、扉に向かって歩いてきた。

「なんでドアが開いてるんでしょうねえ……って、ふぁああっ!」

 ネロたちに見られていたことに気づいたルララは、慌てふためいて扉を閉めようとした。

「あああ―――、そう、いまのは全部、幻です。疲れた脳が見せた幻惑的な何かですからああああ!」

「そうはいくか」

 ウィザードはルララの腕一本を強く拘束した。ネロも逃げられまいと少女のブーツにひっしとしがみついて、爪を立てた。


 *


 犯人は現場へ戻る……とはこのことか。ネロたちはルララを連れて、チェチェ畑へ戻った。

 ルララは正直に白状した。

「わたし、こう見えても見習い魔女で……あの奥さまに、住み込みメイドとして雇ってもらってるんだけど」

「え、なぜメイド。魔女なんでしょ?」

 キャロラインが胡散臭そうに、目を薄めて突っ込む。

「そ、それは……魔女だけじゃ、どうにも生計立てられなくて。それに旦那さまが、あまりにもかっこいいナイスガイだったもんだから、つい」

 思い出したのか、ぽっと頬を赤らめ、ルララは「やだー言っちゃったーキャー」と一人で叫んでその場の空気を盛り下げた。

「それで奥さまに、どうしても紫チェチェが食べたいって言われて。奥さまは、昔は上流階級のお嬢様だったから、紫チェチェ食べ放題だったんだって。でも駆け落ちで旦那さまと結婚してからは生活水準がガクンと落ちて……しかも、妊娠してから急に紫チェチェの禁断症状が出て、苦しむようになっちゃって……そんな折に、旦那さまは出稼ぎで遠い街に行ってしまって、わたしの労働意欲も薄れて……」

「私情はいい早く話せ」と、ウィザードが促す。

「う、でね、どうしていいかわかんなくて。町のお医者さんにも見てもらったんだけど、もう紫チェチェ食べるほかに治療法ないっていうの」

 黙って話を聞いていたネロたちは、次第に渋面になった。キャロラインがルララのレインコートをつつく。

「それ、本当に身体に良い食べ物なの?」

「わかんない……」

 わかんないのかよ。

「でね、チェチェ畑の農家さんにも直談判にいったのね。こういう事情があって、お金はあとでなんとか払うから紫キャベツくれませんかって……でも、なしのつぶてで……門前払い」

 ルララはシュンと肩を落とした。

それから、苦しむ奥さんのために、彼女は紫チェチェ泥棒になる決意を固めた。毎夜、一玉ずつ紫チェチェを盗んでいたということである。

「でも奥さまのことは、言わないでね。捕まえるのは、実行犯のわたしだけにして。大事な時期なの。お腹の子に響くといけない……」

 目許をぬぐいながらぽつぽつと語る少女に、ネロは前脚をすこしあげて質問した。

「いや、あのー、あんたを雇う金があるなら、紫チェチェくらい買えるんじゃ?」

「そうだな。ドジっ子メイドをなぜクビにしないのか。格別な思い入れでも……?」

 ウィザードも不可解そうに顔をしかめていた。

「――あのね。紫チェチェはこの子の人件費よりも、遥かに高いわよ」

 少し離れたところから、ため息交じりに告げたのはキャロラインだった。さすが女子というべきか、紫チェチェの情報には誰より詳しい。

「え、そんなに高いニャ? ただのキャベツの親戚なのに……?」

「希少性も需要もあるから、値段をどんなに高騰させても必ず売れるのよ。ブランド化してるからね。ボロ儲けってやつ。腹立つ商売よ」

 あきれた様子でキャロラインが手をひらひら振った。

 理由は分かった。

 ルララはそんな事情があり、チェチェ泥棒家業に身を転じていたわけだ。

 妙な歌を歌っていたのは、『幽霊がでる』という話題作りのため。

自分で幽霊の噂を町に流して、人々を怖がらせ、遠ざける作戦だったという。

「お腹に背中は代えられないから、ばれなきゃいいかなって」

 えへへ、とルララは笑った。

「でもばれちゃったから、仕方ないね」

「……」

 皆がなにか言いたげにして、でも口をつぐんだそのとき、うっすらと丘の向こうの闇が晴れてきた。

 暗かった東の空がほんのりと、薄紫色に変色してきている。

夜明けへのカウントダウンである。

ウィザードは眉ひとつ動かさず、ルララの腕をつかんで拘束している。

「まもなく朝だな。さて、どうするか……」

「どうって? このままこの子を依頼人に引き渡すでしょ? ハルンが来るより先につかまえちゃったけど、もう仕方ないじゃない。旅の資金も必要だし」

 キャロラインは面倒そうに肩をすくめた。

 ルララは逃げ出す気配もなく、おとなしく肩を小さくしている。目を閉じて、ただ微かな息をしていた。半分眠っているように見える。

ネロは肺に朝の空気を吸い込んだ。朝の光に照らされ反射するチェチェ畑を見回す。

 そしてネロは、ルララの足元から身を引いた。ぱちん、とルララは目を開いてネロの顔を見てくる。

 ウィザードが煙たそうに声をかけてきた。

「おい猫どこへいく。報酬は折半にしてやるぞ。さっきのはジョークだ」

「おまえけっこう良いやつだな……ウィザード。いや、もういい。そいつは、おまえに譲る」

「なんだって?」

「そのままの意味だ。じゃーな」

 ウィザードたちが見えなくなるまで、しばらく歩いてから、ネロは小さく嘆息した。

明け方に星が、中心街の方向からひとつひとつ消えていく。

「やあ」

 にこりと微笑む、上機嫌のハルンが佇んでいた。

ネロは驚きと歓喜の混ざったジャンプをその場で行う。

「にゃーっ! ハルン!」

「ヤッホー。お手柄だったね、ネロ。みごとに幽霊退治できたそうじゃないの」

「え? なに言……」

「おまえ、実はけっこう役に立つのねえ」

「ほ、ほんとか? 我輩、スゴかったニャ? かっこいい? えらい?」

「ああ。凄い凄い」

「なあハルン。これで、我輩を傍においてくれるか?」

「……まあ、いっかな」

 ハルンは紫色の葉っぱを一枚取り出し、ネロの口に無理矢理押し込んできた。

「じゃ、それ口にくわえて、今から猫語しか喋らないでね。絶対に」

「んむっ……、にゃー!」

 ネロが素直に鳴くと、いいぞその調子だとおだてあげられた。経緯がよくわからないが、使い魔として認められたのだ!

 気分よくにゃあにゃあ言っていると、ハルンの冷たい手で首根っこを掴まれた。……ん?

 住宅街の方角から、百姓が大股で走ってくる。今回の泥棒退治の依頼人だろう。

 ハルンは一分の隙も無く上品に笑み、ネロの身柄を百姓の目前に突き出した。

「お百姓。こいつがチェチェ泥棒よ。どうぞお好きに裁きを」

「んにゃ―――――っ?」


 野良猫じゃあ仕方ないなぁ。と、ハルンの言葉を露程も疑わず、お百姓はほほえみ頭をかいた。

責任を持ってこの猫を飼い、二度と悪さしないようにする。そうハルンが誓うと、納得したようで、彼は自宅に戻っていった。

春をもたらす奇跡の魔女ハルン。市民から、絶大な支持を得ているのだ――

彼女がそう言えば、誰もが信用する。

 そして。

報酬の代わりに百姓からもらった紫チェチェ。もちきれないから、手押し車にたくさん乗せて、ハルンとネロが向かった先は……


 *


「本当に、こんなにたくさんの紫チェチェを頂いていいの?」

 庭先に運び込んだ紫チェチェの山を見たルララは、目を丸くした。

「ああ、もちろん」

「ありがとう!」

両手いっぱいにチェチェを抱え、顔をほころばせる。

「ところで、猫さん。わたし、あの魔法使いの男の子に捕まったはずなんだけど、気づくと奥さまのうちに戻ってたの。あれはなんだったのかなあ」

「えーっと……? 夢でも見てたんじゃないか?」

「そっか、夢かー」

 ハルンに気がついたルララは、驚いてチェチェを芝生に落とした。

とっさにポーチから離れようとしたハルンの腕をつかまえて、ルララが言及した。

「センセイ? 先生なにしてるんですか、こんなとこで」

「……泥棒って、おまえだったのか」

 袖で額を隠してぼそりとつぶやくハルンに、ルララは詰め寄った。

「ねえ、もう帰ってもいいでしょ?」

「ダメ」

「二人は知り合いなのか?」

 ネロがその様子を見て、首をかしげた。

 ルララが白い割烹着の胸に手を当てて叫ぶ。

「知り合いもなにも、わたしはハルン先生の弟子だよ!」

 弟子、いたのか!

 ネロは驚愕したが、そういえば秋の魔法使いタムも,ウィザードという弟子を取っていた。

 ハルンもとても若くはつらつとしており、あと何十年も現役で活躍できそうではある。が、万一のことに備えて早めに後継者を育てるのも、仕事の内のようだ。

「ルララ、おまえはもう破門にしたはずよ。魔女としての素質がなさすぎる。見込みがないやつに、これ以上の労力はかけられない」

「え、え、破門じゃないよね、修行の旅に行ってこいって話だったよね?」

「そうだっけ?」

ハルンは庭の物置小屋を見やり、すっとぼけている。自分の発言すらロクに覚えていないのか……。

「とにかく、もう師弟関係は解消だ、解消」

「やだ、認めない! ねえねえ、早く塔に帰りたいよ~~! ふかふかのベッド、ソファー! きのこのホワイトシチュー!」

「知らない」

 ハルンは冷たく言い放った。

ルララは、ハルンの足元に隠れるようにしているネロを見つける。腰をかがめ、覗き込んできた。

 ぎろりとネロを見下ろしてくる。

 背中がひやりとした。

「猫~、あんたは、なぜハルンと一緒にいるの?」

「にゃ、我輩は、ハルンの使い魔、ネロだ」

「そんな! ハルンは使い魔なんて取らない主義っていつも言ってたのに! なんでぇ!」

「世界一美しい猫といわれるガット・アイと、たまたま行き会ってね。世界一の魔女の相棒には、ふさわしいと思ったのよ。ほら、いくよネロ」

「あ、ああ……ぁぁぁ?」

 ルララの悲痛な叫びを背中でききながら、後ろ毛を引かれる思いでネロはハルンの後に続いて、その家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ