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『獣ヶ山少年少女変死事件』捜査報告書

『獣ヶ山少年少女変死事件』についての捜査報告


 1986年2月21日

 M県M市警察署

 刑事課 伊達 義男


 この度、1986年2月12日〜14日にM県獣ヶ山村の山中にて少年少女、村民合わせて5名の死体が発見された事件についての報告を致します。


 ・事件と私の関係について

 今回の事件内容を報告する前に一度、私と事件の関係について書かせて頂きます。

 同年2月1日、私は別の事件の捜査のため署内の書物庫で新聞のスクラップ記事を調べておりました。すると、ある古い記事が目に留まりました。

 その記事には、獣ヶ山村で30年前に起こった事件の事が書かれており、見出しには『また殺人鬼!30年に1度の獣ヶ山の呪いが今年も!?』と記載されておりました。

 私は酷く興味を惹かれ、自分の担当する事件の事も忘れて記事に目を通しました。


 以下がその内容です。


『また殺人鬼! 30年に1度の獣ヶ山の呪いが今年も!?』

 1956年2月14日、九州のM県獣ヶ山村の山中にて村民の男性が少年少女4人を惨殺すると言う事件が起きた。

 この事件においてM県M市警は全面的な捜査に乗り出し、犯人の男性(39)を逮捕。

 事情聴取にて、この男性は「私は村人の代表だ。私が村人の気持ちを形にしただけ」などと話しており、精神異常の可能性や村民の事件への関与を感じさせるものとなった。

 事情聴取後、同村では30年前(1926年)にも少年少女4人が殺害される事件が起きている事が判明。犯人の男性の精神鑑定後に再度事情聴取を行うことを決定していた。

 しかし、犯人の男性は精神鑑定後に獣ヶ山村の山中にて遺体で発見された。男性の遺体は大型の獣に食い殺されたような跡が見られる事から、村民の間では獣ヶ山村に伝わる獣信仰の象徴『神獣様』に食い殺されたと噂するものもいると言う。


 以上。

 私が惹かれたのは、この事件の起こった30年前にも同じような事件が起こっているという事、獣信仰の信者達による、村ぐるみの犯行の可能性があること、今年(1986年)がちょうど事件が起こる可能性のある年であること、でした。

 この記事を元に、私は30年前に起きた『獣ヶ山連続殺人事件』の資料を集め、そこに村人の関与があると推測致しました。

 私の独断ではありますが、被害者である少年少女(当時14歳)と1度接触し事件が起こる可能性を伝えたのですが、その日の夜に少年少女達の行方が分からないと言う通報を受けました。


 ・死体発見現場と死因について

 今回の事件において、最初に死体が発見されたのは同年2月12日。私が少年少女に接触した当日の事でした。

 夜中2時頃、行方不明になった少年少女の捜索をするため地元消防団が山中を見回りしていると、雪の中を走る少年と少女2名を発見。呼びかけをしながら近づいていったそうですが、少年らは消防団の呼びかけに応じず、崖の近くまで走って行ったそうです。

 消防団が駆けつけた時には少年はおらず、発狂した少女が目の前で自分の首を鎌で切り、自殺。

 少女の死体の近くに、少年のものであると見られる懐中電灯が落ちていたことから、少年は崖の下の川に身を投げたと思われます。

 未だに少年の死体が見つからないことから、どこか遠くの方まで流されたとみられ、少年の捜索は現在も続行中です。


 次は同年2月14日。12〜13日の消防団による捜索は雪のため不可能となり、次の捜索は雪が止んで解け始めた14日に行われました。

 最初に発見されたのは、少女1名とその父親である地元消防団の男性の遺体です。発見場所は山中にある古い木造の小屋。

 男性は顔面をバットのような鈍器で殴打され死亡。

 少女は、床から突き出た木の杭が口から頭を貫通し死亡。

 男性の方は一方的に殴打されたものとみられています。特筆すべきは少女の遺体で、杭が貫通し即死したものと思われますが、死亡後にバットで体全体を殴られた跡があるため、なんらかの恨みを持たれて殺された可能性があります。


 次に発見されたのは、少年1名と地元消防団の男性の遺体です。発見場所は小屋の近くの山道。

 この男性も体中をバットで殴られた跡があり、その途中で頭に打撃を受けて死亡したものとみられます。

 少年の遺体ですが、内臓や目玉など体の柔らかい部分が全てなくなっており、なにか大きな獣のようなものから食い殺されたような痕跡が見られます。

 また、少年の遺体近くにバットが落ちていたことから、小屋で発見された死体、山道で発見された死体は、この少年による犯行と思われます。


 ・今後の事件の捜査について

 今回の事件を通して、死亡した少年がバットを持っていたことから、地元消防団2名及び少女1名を殺したのはバットを持っていた少年であると思われます。

 加害者不在のため、犯行に及んだ理由がわかりかねますが、30年前の村人の関与が疑われたことから、今回についてもなんらかの形で村人が事件に関係していると思われます。また、友人である少女を殺すに至った理由は今の所わかっておりません。

 他2名に関してですが、少女は村人に追い詰められた末の自殺と見られております。このことから、少女を追い詰めた理由などを地元消防団から聴取しようと思います。

 最後に崖から身を投げた少年に関してですが、生死は未だ不明です。

 しかし、崖の高さや、当時の川が激流であることから、生還は難しいものとして捜索を続けていきたいと思います。

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