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あけましておめでとうございます。
本作は「少女漫画マインド春日とリアリスト宇津井君」シリーズです。
「少女漫画マインド春日とリアリスト宇津井君の七夕の過ごし方」を読んでいただけると、より楽しんでいただけると思います。
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七夕は宇津井くん目線の話でしたが、初詣は春日目線でスタートしております。
「宇津井くーん。おまたせー」
私のスペシャル素敵で神様みたいな彼氏が目に入った。
とたん私は100万馬力を手に入れたように走りだす。
宇津井くんは、ちょっと困ったように眉を寄せてため息をついた。
ため息ついても相変わらず恰好いい!!すきーすきー大好き!
「ちょ、走らなくてよかったのに。それに、待ち合わせまでまだ時間ある」
むっなんですと。
本当は待ちわせの30分前から着いていたいのに。
過去、何度か待ち合わせの30分前から待っていたのだ。
なのに毎回、色々な人に道や街の名所や、何故だか私の個人情報をきかれる。宇津井君が来る頃には人だかりが出来るのだ。たぶん、局地的にお上りさん警報でもでてたのかもしれない。きっとそうだ。
それから宇津井君はせめて15分前、それも変な場所を指定してくる。
私としても、30分前に着く理由は少女漫画みたいに「まだかな~」とか「今日どんな服を着てくるんだろ」みたいな気分を味わいたいのと、デートのシュミレーションのためだ。けれど、いつも邪魔が入るのでそれは諦めていた。
ただ、納得できないのは宇津井君が私よりいつも早く来てしまうことだ。
最愛の人をこんな寒空の下に待たせるなんて!!
「聞いてる?僕の話」
「うん、うん」
「聞いてないな」
は!聞いてなかった!
「走るなってことだよね!」
宇津井君はもう一度ため息をついた。
「その後だよ」
ありゃ。
その後かーなんて言ったんだろう。
もう一度聞いたら、たぶんまたため息つかれちゃうかな。
「もういいよ、行くよ」
宇津井君はきょろきょろと周りをみてから、私の背中を押した。
私はぎゅっと彼の手を繋いだ。
「ふふふ、初詣楽しみ~がんばっておしゃれしちゃったよ」
宇津井君はなぜだか顔を赤くして急に早歩きになった。
いつもながら宇津井君はよくわからない。
そこもミステリアスでウルトラ恰好いいのに。
今日の宇津井君はベージュのダッフルコートにカーキのズボンだ。
はぁぁ。シンプルな恰好が宇津井君にはお似合いだ。
いつも制服ばっかりだから新鮮でいいなー
いやいや、制服だって宇津井君にはとってもお似合いなのですよ!
宇津井君は早歩きして、少したってから小さい声で言った。
「にあってる」
それから顔を真っ赤にして、またすたすた歩く。
うきゃぁぁぁぁ。
「う、嬉しい!」
「声、大きい。聞こえてるよ」
「うん!うん!あ、忘れてた。あけましておめでとう!」
宇津井君はピタリと立ち止まって苦笑いを向けた。
「それをさっき言ったんだけど?」
ぎゃん!
な、なんとわたくしめは1年で1度しか聞けない宇津井君の「あけましておめでとう」を聞き逃したのかぁぁ
「あ、あああああ」
「なんでそんな真っ青な顔してるの?」
「初あけましておめでとうが・・・」
「あぁなんだ。そんなこと」
「宇津井君。そんなことじゃありません。ねぇもう1回」
「はいはい」
「うう・・宇津井くんの・・はじめて」
宇津井君は私の口を手で押さえた。
「ちょっと、変な言い回しはしないで」
赤い顔でぶつぶついってから、歩き出した。
変な言い回しってなんだろ。
「宇津井くん!今年もよろしくね」
「・・・うん。よろしく」
今年も宇津井君はシャイだ。
春日は自分が美少女という自覚がまったくありません。