第三章 悪寒
最初は小汚いと思ったが、なにやら眼を凝らすと少女と母親らしい人間が二人ほど写っている。
「喪服か?」
黒い服を着ているようだが、写真焼けなのかは材質が劣化し過ぎていて判別が付かない。
「どうした、何かみつけたのか?」
ヴィルネイタが横から聞いてくる。
「いや、写真を見つけたんだがな。んー、そういえばさっきの時計で時間という物は戻せないのか?」
「無理だな」
問いかけるとヴィルネイタは首を振った。
「無理か……」
俺は呟く。
「正確には、俺たちには無理だという事だ。……まぁ、時を進ませるのではなく戻す魔法というのもあるらしいのだがそれには絶大な魔力を使うらしい。つまり、俺達が3人掛かりでやっても半年分どころか3ヶ月戻せるか怪しいといったところなんだよ。だから、その写真を綺麗にするには少なくとも俺の実家の力を借りねばならない」
そう説明されると納得が行く。
「非ィ効率的だな」
そう言うと、
「あぁ。それに、そんな魔法をしたら恐らくその時計が耐え切れずに壊れるだろう。もっと大掛かりなもの、もっと等級の高い物……下手すればでかい場所で地面に陣を書いてまでの事をしなければならない」
ヴィルネイタは言った。
「……ともかく、その写真には裏には何か書いてないのかい?」
メイティアがそこで、口を挟んでくる。
「ん? あぁ……」
俺はそこで写真を裏返す。
そこには掠れた字で、アルヴァ・ヴァルアシア1203と書いてあった。
「これが年月だとすれば……大体800年前か。割と最近だな。つい最近まで人が生きていたのか」
言いながら写真をメイティアに渡し、新たな写真を手に取る。が、そこで突然、身体に鳥肌が立つのを感じた。
「ーーっ!」
さっきの写真に写った笑顔の少女と共に、人間の生首のようなものが映っている。生首は、その先ほどみた母親らしきものだった。
なんだ、これは。
人形かとも思ったが、これは確かに人間だ。
写真自体が古いので恐ろしくも思える。
「メイティア」
「何?」
「ーーひょっとしてこの部屋の持ち主は、やばい趣味なのかも知れんぞ」
俺は言いながら二人に写真を見せる。
「……っ!」
「マジかよ?」
ヴィルネイタがえっと言った様子で驚く。それと同時に、メイティアも険しい顔となった。
「ミミック」
「はい?」
メイティアがミミックを呼び付ける。
「今日は此処でキャンプにするよ。私が部屋の外に対モンスター用の罠、クラスダー弾を置くから、死にたくなかったらドアに近付かないで。近くに人間以外の気配を感じると自動で発動し、周囲に拡散弾を放つ武器だから」
「あ、はい……」
ミミックが頷いたので、メイティアはドアを開けてバッグから何かを取り出すと設置し、また室内に戻ってきた。
「まだこの部屋は調べる必要がありそうね。今日は少し頑張る必要があるわ」
メイティアは少し真面目な顔で言ってきた。