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第二章  空への道(2)

 魂見の塔の中は、当初思っていたよりも大きい。

 段々上の階層に上がるにつれて、複雑な鍵穴で開錠しなくてはいけない扉があったり、脆くなっている床があった。

 それでもミミックはミミックで箱を背負い、歩いている。

「ところで気になったんだがよ」

 また暫く進んだところで、ヴィルネイタが口を開く。

「はい」

 返事をするのはミミック。

「その箱って、重いのか?」


「軽いですよ」

 そうは返事をするが、メイティアが首をふる。

「人の分まで持とうとするのは勝手だが、お前が潰れるぞ」

「えっ?」

「60数キロの長政を引きずりこめる力がある時点で、お前よりは力持ちだ。……ちょっとミミック、それを地面に降ろしてみろ」

「は、はい」

 言われるままにミミックが宝箱を下ろすと鈍くドズゥン……と音がした。

「な?」

「あ、あぁ……大したもんだな」

 ヴィルネイタは頷く。

「さて、そろそろちゃんとした部屋の一つも来て欲しい物だな」

 俺はそんな二人から視線を外し、塔の中を調べる。

 これほどの建物だ、階段以外の昇降器具の一つくらいあってもいいものなのだが。……こんな不便な塔を昔の人間は使っていたのか。そもそもこの塔はなんの為に作られたものなのだろう。

階段に行く途中の道を歩くと、細くなっている通路と幾つかの扉を見つけた。みた感じ、何部屋かがあるようだ。

「お前ら、来てみろ。なんか扉があるぞ」

 俺はそう言うと、周りの連中を呼びつける。

「閉まっているっぽいな」

 ヴィルネイタが言う。

「財宝の可能性はあるけど、何か潜んでるかもしれないね。ミミックは知らない?」

 メイティアが質問するが、ミミックは首を振る。

「いえ、存じ上げません」

「……開けるか?」

 俺は回りに確認を取る。

「分かった。ただ、罠に気をつけろよ」

 皆に依存はないようなので、俺はドアの鍵を細工して開けると、蹴飛ばして横に逃げた。

 普通に空けた場合矢が飛んでくるという仕掛けが稀にあるので、油断は出来ないのだ。

 ……だが、反応して飛んでくる者は何もないようだった。

「私が先陣は貰う。鎧がある分皆よりは丈夫だ。バックアップは頼む」

盾で防御体制を取ったメイティアが先に歩いた為、俺たちはその後ろに続いた。

 部屋は洋室だが、長い間使われていないようだった。外らしい場所にはステンドグラスがあり採光システムはあるが、室内には古臭いブックシェルフがあったので、恐らくは書斎かもしれない。

 ……埃を被っていて殆どの本は読めそうに無い。本の背にヒビも入っていて、丁重に扱わなければバラバラになってしまいそうだ。

「お前ら、止血用と思って幾つか買って来たがスカーフ使うか?」

 ヴィルネイタが荷物からスカーフを差し出してきたので、ありがとうと言って俺たちは鼻と口をスカーフで塞ぐ。こんな埃を吸い込んでは、体の調子を崩してしまうだろう。

「皆、調べるから協力頼むよ。金目の物も重要だけど、文化的に価値がありそうなものがあったら言って。ミミックは適当に戦果を並べるように床の整理をしておいて」

 メイティアが言うので、俺は同意して本棚に手を伸ばした。

「……」

「こいつは……フォティオス1世の哲学書だな」

 ヴィルネイタが一冊の本を手に取りながら呟く。

「どれくらい昔のものなんだ?」

「伝承に近いものだ。ざっと1万年以上前になるな。市場には出回ってないから、政府に売りつければそこそこの価格で買い取ってくれると思うぞ。教会とかでもいけそうだが」

「お前はほしくないのか?」

「俺は、哲学には興味が無いからな。欲しくなったらそもそも買い取りにいくから、見つけたお前のもんだ」

「成程。こいつは魔本とかではないのか?」

「あぁ。というより魔本なら俺にはそもそも本の表紙を見ただけで感知出来るからな。それほどの物は無さそうでもある」

 ヴィルネイタはそう言って、小さなデスクの引き出しを開けた。

「……引き出しの二段目に食べ物……菓子が詰まっているな。既に溶けているが、この部屋を使っていた者は恐らく仕事の合間になにやら菓子を食べていたのだろう」

「部屋の主は何処へ行ったんだろうな? 製造年月とかは分かるか?」

 俺はヴィルネイタに尋ねる。

「製造年月は分からないな。俺には判断できない」

 ヴィルネイタは首を振った。

「メイティアの方はあるか?」

「特に面白そうなものは無いな。だが、メイスを一本見つけた。腐ってもいないし、これは使えそうだ。ミミック、これを装備しな」

「あ、はい」

 ミミックは言われるままに1mほどの長さのメイスを受け取り、箱の中にしまう。

 一応これで戦力には数えられるだろう。万が一の離反だけは怖いが、メイティアが居る限りはないはずだ。

「他にはあるのか?」

「後は変な懐中時計だな。これは何かの機械が組み込まれているっぽいが長政、お前は分かるか?」

 言われつつも俺が時計を渡されると、魔力を感じた。

 見た目は白銀であり蓋が出来る懐中時計だが、なんとなく高級感がある。

「ヴィルネイタ、これはお前のが分かるかもしれない」

 俺はヴィルネイタに見せる。そうすると、ヴィルネイタは少しだけ驚いて言ってきた。


「おぉ、うちの爺さんも持ってる奴だな。そいつは時を進ませる時計だ。アンティーク品って事になるのかな」

「時を進ませる……時計?」

 聞き慣れない言葉に尋ね返す。

「何と言ったら良いのだろうな、それを使い時を進ませることによって醤油やパンにビール、ザワークラウトを量産させる事が出来るのだ」

「物の発酵を進める事が出来るのか」

「あぁ、一定範囲の時を急激に進めるというピンポイントな使い方だがな。因みに常人でも使えるよう魔道具としてデチューンされているので、お前達の魔力でも使えるぞ」

「そうか。……壊れては無いようなので、メイティア、返すぜ」

「おう」

 メイティアに時計を返すと、俺はまた棚を漁りだす。すると程なくして、幾つかの白黒の写真のようなものをみつけた。

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