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第六章 塔の果て(2)

「誰だ、お前?」

 暫くして登ってきたミミックの上から、ヴィルネイタがこちらに話しかけてきた。

「ーー長政さん?」

 ミミックは、こちらの判別はついたようだ。

「悪い、今俺幾つくらいに見える?」

「ーーあーー……もしかして、時計、使っちまったか」

 ーー少し言葉を濁しながら鏡を召還する、ヴィルネイタ。


 落ち着いてそれを覗き込むなり、後悔の念が僅かに浮かぶ。

 見た目が、50代だ。俺は余計に歳を重ねてしまった。髪も、少し白くなってしまっている。

 元々人生に関する執着だとか興味なんてものは無かったが、青年期から一気に中年になってしまうとは思いもしなかった。

「マジか」

「マジのようだな……無茶をする」

 ヴィルネイタは顔を強張らせる。


「馬鹿!」

「おぶぇ!」

 その時、俺は背中を叩かれて転倒しかける。

「何早まってるのよ、そんなんじゃ早死にしちゃうでしょ!」

 見れば片腕を吊っているメイティアだ。その後ろにかなり傷だらけになった、オルクスが居る。二人とも結構な怪我をしているが自力でここまでこれたというだけあり、まだ体力があるのだろう。

 メイティアはかなり怒っていた。

「気にするなよ、俺の人生だ」

 俺はそう弁解をする、が。

「むかっ」

 メイティアは、納得をしないようだった。

「ん」


「……もう決めたぞ」

「何をだ?」

「頭に来た! もうあんたが死ぬまで見取ってやる!」

「……え?」

「うっさい、責任くらい取る、私の人生に巻き込んだ責任はな! じいちゃんになっちゃった責任! お前が四角い箱になるまで私が面倒をみてやるわ!」

「……二人とも、ちょっといいか?」

 その時、オルクスが口を開いた。

「何だ?」

「……装置がある。中に居るのは赤子のようだ」

「赤子?」

 ふと見れば部屋の隅。生命維持装置のようなものがあり、中に子供が居る。恐らくはデッド=ジンだろう。

 体格だけみれば普通の人間の赤子と変わらず、取り立てて変わったようにはみえない。

「……男だな」

「さっきのアイツの子供か? 或いは後継か?」

 事情を知らないであろうヴィルネイタが言う。

「さぁな。いずれにしろ、いい物とは思えんが。……殺す、か?」

 オルクスが魔銃剣を構える。だが、その手をメイティアが遮った。

「……いや」

「メイティア?」

「この子、引き取ろうよ、長政」

「……正気かね?」

 ヴィルネイタが本気か、と首を傾げてくる。

「うん」

 メイティアは頷き、長政の手を取り、ヴィルネイタに向かう。

「ここの塔にある財宝の半分は持っていっていい。ただ、この子と馬鹿は私が面倒をみる」

「……それはお前さんの、人間としての覚悟かい?」

 ヴィルネイタは普段あんまり見せないような真面目な顔になる。

「あぁ」

 メイティアは頷いた。

「……んじゃ、メイティア。 まずは東の港を越えて、ネクサスヒルズに行くといい。俺が一筆書いてやる、うちのじいさんのとこから土地を融通してやるから、そこで農業でもやるといいさ」

「……ありがとう」

「なに、気にするな。俺はここの塔の技術に興味が出た。いつか全てを解析して、新たな魔法体系を構築しようと思う。その時には、うちの嫁さんとも家族ぐるみで付き合ってくれ」

「……分かったよ。ほら、じじい」

 メイティアが俺を小突く。



「人をじじい扱いするな」

 俺はそう文句を言いながらフンと首を横に向ける。……明らかに老化した手に対し、どうにもイラつかざるを得ない。

「それよりもだ、オルクス、あんたはどうする?」

「俺はヴィルネイタと共に、暫くこの塔を調べることとする」

 オルクスはそう返事をしてきた。

「そうなのか」

「あぁ。それに、旧友達を弔ってやらねばならないからな」

 古臭い煙草をジャケットから取り出すと、オルクスは火を付ける。

「成程……分かったよ」

 俺が頷くと、

「あの……」

 その時、ミミックがこちらを向いてきた。

「何だ?」

 問いかけると、

「よろしかったら長政さんの足になりましょうか? 恐らく長政さんの今の御歳では、この塔を降りるのはお身体にきついかと……」

 そう申し出てくる。

「だから人を老人扱い……もごっ」

 言葉を終える前に、メイティアに口を手で塞がれた。

「ありがとう、それならばお言葉に甘えよう。私達は手に入れられるだけ財宝を入れてもっていくから、この爺さんと私が持っていた食料を預かってくれ。それに、お前がよければ私達と新しい生活も出来る。どうだ?」

 早速メイティアに手綱を持たれてしまったか。俺が苦笑すると、

「はい!」

 ミミックは機嫌よく、頷いてきたーー。



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