第五章 そして(4)
考えれば考えるほどに、悪いイメージが脳内を駆け巡る。
それを忘れようと服に汗が滲むくらい、俺は走った。
ーー下の層からは爆音が聞こえてくる。 もしもこの塔が破壊されたら、落下に耐えられない俺は死ぬだろう。
頼みの綱は奴らだ。俺が投げ渡したのは、1分間だけ神経速度が数倍になる劇薬。あれがあれば奴ならばビームを捌けるはずだ。
どうなるかは分からないが、頑張りたいところだが……。
階段を登り終えて次のフロアに入ったが、そこでもまた蛇の装飾がされた螺旋階段があった。上をみるが、気が遠くなるくらいに物凄く高い。階段の中腹でミミックが箱をかついで登っているのが分かる。
「急がなければ……」
ペースを上げる。何段存在するのか一々数えていられないくらいの距離だ。全力疾走で3分ほどかけてミミックと合流したが、それでもまだまだ上は遠いようだった。
「長政さん!」
「ヴィルネイタは?」
「なんとかかなり離れたら返事を返してくれるようになりました。でも、この塔が長くて……」
ーー上を見るがまだまだ400段は下らない。こんな距離はどうにもならない。
「先に行っているぞ!」
俺は二人に告げると、さらに上へ進んだ。
「……っく」
足が重い。昨日一日塔を上った事に加えて、酸素が薄くなってきているのが分かる。こんなに俺、体力少なかったか?
下の方ではまた爆音がし、メイティアやオルクスがデッド=ジンと交戦しているのが聞こえた。
「くっそ……」
軽く登山をしている気分だ、そう思った刹那に遠目に光が見える。扉と、それを照らす燭台のようだ。
「あそこか……!」
ミミックはまだ時間がかかる。少々心細いが、いくしかない! 俺は懐からナイフを抜き、木の扉を蹴破った。