第五章 そして(3)
「オルクス、あんたの最終目的は奴で合ってるか?」
「あぁ……!」
問いかけるとオルクスは頷きながらそう返事をしてくる。
「弱点は無いのか、あの女に?」
横からメイティアが尋ねてくる。
「そんなものがあれば俺一人でやっている。奴は700年をも生きている上に、まだまだ寿命があるというのだ。だとすれば、死なす事は不可能だ」
オルクスはそれに対し、落ち着いて答えてきた。
この状況において、出来る事……。
「ならば……上、だな」
俺は上の階を指差しながらそう言う。
「どういう事だ」
メイティアが聴いてくる。
「どういう事と言えばこういう事さ。奴のいう父様、とやらだ。それを先に抑えることでぶっとばす!」
俺はそう言うと、階段へ向かおうとするが……。
ーードゥッ!
「んなっ!」
足元が急に溶解したかと思うと、階段が破壊された。相当な威力だ。ヴィルネイタですらここまでの火力は出せないだろう。
「逃がすと思ったかい? 父様に手出しをするならば真っ先に消えて貰うよ」
その正体は、デッド=ジンの女が右手から放った光弾であった。
彼女の攻撃は早く、反応すら出来なかった。
「……長政!」
躊躇していると、メイティアが肩を掴んでくる。
「何だ?」
「……これを持って行け」
メイティアはあの時の時計をこちらに渡してきた。
「どうしろと言うんだ?」
「預かっていろというんだ。さぁ、いけ!」
メイティアは俺を抱え上げると、壊れていない部分の階段へ、次の階層へ向けて放り投げた。
「うぉっ! メイティア!」
「お前はヴィルネイタと合流しろ! 時間もない!」
メイティアは言ってのけると、再度戦闘態勢を取る。
「死ぬ気か!」
「馬鹿を言え、私が死ぬものかよ! それに此処には地の利もある、奴は場所を気にしてフルパワーを発揮できないはずだ!」
メイティアは自信ありげに言い放つと、盾を構えてみせる。
「……くっ、お前はこいつを使え!」
俺は逆にメイティアに向かって薬瓶を投げ渡すと、慌てて次の階へと向かった。
「あぁ!」
「さぁ、オルクス。私の助力をしてもらうぞ」
メイティアはオルクスの方を見る。
「分かっている。じゃあ狩りと行かせてもらうか!」
二人は再び武器を構え、デッド=ジンに向き直った。