表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

第五章 そして(2)

「え、マジ? こっち見た?」

「ヴィルネイタ! そっちにいくぞ!」

拷武者が言うが早く、突進を繰り出す。

「わーってるって! 『マジックシールド!』」

 慌ててシールドを貼るヴィルネイタだが、拷武者は目を光らせるとそんなシールドの上から回し蹴りをした。



「馬鹿か! 弾いてやる……ぜぇぇぇぇ!?」

 攻撃と干渉したシールドがあっさりと破壊され、ヴィルネイタが蹴り飛ばされる様子が見える。

「ヴィルネイタさん!」

 幸いミミックが吹き飛んだヴィルネイタを受け止め、衝撃を吸収してくれた。

「……ごふっ!?  クソが、シールドを破りやがった!? ……助かったぜ、ミミック」

 幸い見た目よりは酷くないダメージのようだが、ヴィルネイタの顔には驚きが見えた。



「捕捉」

 拷武者が今度は、俺の方を視界にいれてきた。

「逃げろ!」

 メイティアの声が聞こえる。だが、俺は逃げない。

「削除スル!」

 拷武者はまたこちらへ突進をしてくるが……。


「近くに寄る手間が省けたな!」

 俺は、懐に仕込んでいた油を拷武者の顔面に掛けた。

「ギッ!」

 拷武者は反応をする。だが、もう間合いには入った。

「オラァッ!」

 俺は飛び込みながら、拷武者の顔面に向けて掠るようにサマーソルトで蹴りを入れる。

「そんな攻撃が!」

 デッド=ジンの女が言うが、その瞬間拷武者の顔面が烈火の如く燃え出した。


「グォォォァゥ!」

 拷武者は顔を抑えてのた打ち回る。

「でぇい!」

 その隙を見てメイティアが思い切りシールドごと体重を乗せた体当たりを側面からかまして、転倒させる。 打ち所が悪かったのか、一回転して拷武者は動きを止めた。

「拷武者!? なんで!」

 予想外の事なのか、デッド=ジンの女が取り乱す。

「フレアーハウリングとは違うが、俺の靴からは多少火花を出せるように仕込んであってね。火力自体は大したことがないが、油と組み合わせればこんなもんだ」

 俺はそう言い、デッド=ジンの女に向き直る。

「多少怪我したとはいえ、これだけの数相手にやるつもりかい?」

 俺は言ってのける。離れた位置では、オルクスやヴィルネイタが体制を整えていた。


「本当に、私達を止める気なの?」

 デッド=ジンの女は言ってくる。

「俺は正直この塔についてはお宝だけが望みで、その発明ってのに興味ってのが無かったが……」

「……無かったが?」

「少なくとも塔の最上階には興味が出た。それに、不意打ちとはいえ俺如きにやられるこんな魔法生物で異世界を目指そうってのは片腹痛い」

 俺はそう言ってやると、デッド=ジンの女を指差した。



「でも、私の力は知らないでしょ?」

 しかし、デッド=ジンの女は落ち着き払って答えてくる。 確かに、一度隠れてやり過ごした時には、その力の片鱗を感じたというのはある。

「いいだろう、来るといい」

 だが俺は言ってのけた。

「後悔するよ!」

 デッドジンの女が言うと、急に女の足元から魔法陣が浮き出す。

 紫色で、今まで見たこともない模様だ。

「ぐぉっ!」

 すると突然、近くに居たヴィルネイタがその場に倒れこんだ。

「ヴィルネイタさん! どうしたんですか? まさか蹴られて内臓をやられたとか?」

 ミミックがおろおろしながらヴィルネイタを抱える。

「ち、違う……あ……あの陣は周囲にいる魔法使いを弱体化させる陣……お前達には効かないだろうが、俺にはすっげぇ頭痛と不快感が……やばい……」

「そ、それはどうすれば!?」

 ミミックが尋ねる。

「……き、距離を取れば減衰されるからすぐさま逃げたいところだ……すまん、上の階を目指してくれ」

 真っ青な顔をしたヴィルネイタが、そう訴えた。

「確かに、効くようね。これが私に備え付けられた機能の一つ。アンチスペルユーザーシステム」

 デッド=ジンはそう笑う。

「ミミック、ヴィルネイタを抱えて次のフロアに行け!」

 メイティアが叫んだ。

「は、はい!」

 ミミックは慌ててヴィルネイタを自分の箱に押し込むと、背負いながら近くの登り階段を目指す。

「ミミック風情が、邪魔をする気か!」

 デッド=ジンは顔を急に変えると、魔法を打とうとする。が、

「余所見してるんじゃねぇ!」

 オルクスの射撃がデッド=ジンの女の手元を掠め、バリアを貼らさせざるを得なくさせた。

「ちっ! 死んでしまえ!」

 デッド=ジンは舌打ちをすると、オルクスに赤いビームを放った。

「ぐぉっ!」

 赤いビームはオルクスを掠め、塔の外壁を貫く。

一瞬で外壁が吹き飛び、外の天気、曇りの様子までもがはっきりと見えた。

「これは過剰威力だから使いたくなかったのに……」

 デッド=ジンの女が悪態を付きながら言ってくる。

「でも、ここまでさせたからには……貴方たち、全員殺すから。殺した後に薬漬けにして生首だけ蘇生してやるから! ふふふふふふふふははっはははははははは!」

 デッド=ジンは笑うと、背中から有機的な羽根を生やし始める。

 いよいよ本気を、出してくるようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ