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第五章 そして

「ーー赤い」

 新しいフロアに入るなり、ミミックが口を開く。

 そう、確かに言うとおり血のような赤をしたフロアだった。

「あぁ」

 今までとは違う広さ。

小部屋のような仕切りがなく、ホールのようになっている。……何か集会でもする用途があったのだろうか。

 同じく赤いカーペットが床一面に敷いてあり、シャンデリアから、燭台から、椅子などといった備品まで全てにおいて目が痛くなりそうな赤、赤、赤。


「ようこそ」

やがて何処からか、少女の声が掛かった。

「貴様……」

 オルクスは存在を認めると、顔を顰めた。

 いつの間にか、50m程離れた塔の中央側に、あの少女が居た。

「何が……目的だ」

 俺は少女に向かい尋ねる。

「それはこちらの台詞」

 少女が言った瞬間、オルクスが俺の横から飛び出した。

「……消させて貰う!」

 雄叫びを上げつつオルクスが魔銃剣を乱射しつつ、突進を掛ける。

「フン……」

 少女が手を上げると魔法陣が発生し、その銃弾は全て弾かれた。

「やはりこんなものでは駄目か……! ならば!」

 オルクスは言いながらブレードモードに魔銃剣を変え、振り下ろす。

「あんたは……亡霊!」

 少女はオルクスの事を知っているのか驚きながら剣の射程から飛びのくと、慌てて距離をとった。


「思い出したか」

 オルクスがさらにモードを銃に戻しながら、問いかける。

「……確かに、殺したはず。200年前のあれで」

「あぁ、俺は死んだ」

「なら、何故!」

「旧政府直属の魔導兵士には、時間を掛けることにより死して尚生き返る反魂の力がある。そして俺はそれを修めている。それだけだ!」

 オルクスは言い放ち、銃を再び放った。

「っ!」

 即座に弾丸を弾いた少女に向かい、オルクスがさらに距離を詰める。

「旧政府直属魔導機関、オルクス=フェアガーデン! デッド=ジンである貴様を消滅させる!」

 さらに構えた銃をブレードモードとの中間形態にしながら、真っ向から真っ二つにーー。

 ーー出来なかった。


「code-AXIS!」

 少女が言うが早く何者かが魔法陣から出現し、オルクスが何かに弾き飛ばされる。

「ぬぅぅぅっ!」

 ダメージこそないが、オルクスは膝を付いた。

「オルクスさん!」

 ミミックが叫ぶ。

「貴様達では無理だ!」

 オルクスは言い放ち、ブレードモードのまま剣を構えなおす。

「魔導兵士と言ったって……この程度なのかな」

 少女はにやりと笑った。


 そしてその前にはオルクスを弾き飛ばした者の正体、曲刀を両手に構えた武者が立つ。

「人造兵士……AXISナンバーズ」

 オルクスはこちらと合流するように歩くと、そのままの格好で話してくる。

「それが奴の名か」

 ヴィルネイタは言った。

「あぁ。そしてあの女はデッド=ジン。いわゆる人に作られた人造生命体だ。200年前に俺を殺し、今も尚この塔の上部を守っている。製作者である研究者の為に」

「そういう事。私は父様の研究を完成させるまで、この塔を守る必要があるの。悪魔と呼ばれようとも、本物の願いの為に」



「一体、何をしようっての……?」

 そこへ向かい、メイティアが尋ね掛ける。

「……昔、この世界が戦乱の世の中であった頃。此処は世界の環境、そして状態を探るための装置があった探索塔であった。だが、ある日……一人の研究者が人質を取り、最上階へ篭城をしたのだ」

 オルクスは言い放つ。

「研究者?」

 俺は尋ね掛ける。

「あぁ。研究者は魔導生物やそこにいるデッド=ジンを何種類も生み出し、塔の番人として置いた。研究者本人はこの世界ではない、異世界を目指すという目標を持って研究を続けた」

「異世界だと? だが、そんな物は俺達ですら行き方は知らないぞ」

 ヴィルネイタが反論する。

「異世界から悪魔が現れたという伝承は、デッド=ジンによるものだろう。俺や同僚はその研究者の野望、奴が異世界へ行くという事を封じるために攻め込んだのだ」

「そうやって人の邪魔をするのが、悪いってのよ! 人の足を引っ張ることしかしない俗人は!」

 デッド=ジンの女が叫んだ。


「貴様は異世界に行くという事の危険性が分かっていない!」

 だが、オルクスは真っ向から反論する。

「それまでの人知の及ばぬ場所へ行くことが、どれだけ危ないことか分かっているのか! この世界は、この世界自体の意思の統一すら為されていない。もしも貴様達がゲートを開き、そこから本物の悪魔、俺達の力が及ばぬものが出てきたら、どうするつもりなんだ! 貴様達の勝手な意見で、世界が丸ごと滅ぶのだぞ!」

「……その為の、デッド=ジンよ!」

 少女は言ってのける。

「オルクスといったよね。第一この世界は発展性はあるものの、爆発的な未来は望めないじゃない。人の一部は困窮したり、世界には資源不足のところもある。過去の遺産である遺跡だって、掘りつくせば終わりでしょ? だとしたら、行くしかないじゃない」


「それが……早いと言っているんだ!」

「何が、何が早いよ! 父様は普通の人間なのに、身体を機械化して頑張ってるのよ。あんたみたいな亡霊に言われる筋合いはない! もう、知らない! 行きなよ、AXISナンバーズ、魔導生物、拷武者! 侵入者を皆殺しにしてしまいな!」

 少女が言い放つと、曲刀を構えた武者がオルクスに向かって突進をしてくる。

「余所見をしている奴はこうだっ! 『ゲイルテンペスト!』」

 その真横を狙い、真空波をメイティアが叩き込む。

 奴の鎧に直撃をするが、拷武者と呼ばれた存在は意に介せずオルクスをラリアットで吹き飛ばし、さらにヴィルネイタに狙いを付ける。



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