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第四章 少女(3)

 新たな仲間が加わり、探索にも余裕が僅かに出来る。

 こつこつと採取作業にも余裕が出来、見知らぬ光る石など、幾つか売り捌けそうな物は手に入った。

「オルクスさんは賞金稼ぎと言いましたが、どんなものを倒していたのですか?」

 ふと幾つかのフロアを登った後、俺は尋ねる。

「ん、基本は大型モンスターだな。ここによくいるゼイロックって奴らよりはでかい、そうだな、猪や熊より少し大柄なモンスターがメインだ」

「へぇ……そりゃ凄い。生傷も絶えないでしょうに。一体どんな感じで狩るんで?」

 ヴィルネイタが関心したかのように尋ねた。


「この銃を片手に敵に飛びついて、接射するってやり方だ。大抵のモンスターは普通に遠距離からやろうとすれば甲殻やら脂肪で防がれるが、ブレードモードにして身体に穴を開けてから傷口をやればなんとかなる」

 オルクスは自分の獲物を指差しながらそう言う。

「ーーミミックは倒しませんよね」

 その時俺の横に来て、少しおびえながらミミックが言ってきた。

「ミミック? 俺は基本的に賞金が付かないモンスターは倒さないんだ。第一ミミックは人間に似てるからな。倒すのは好きじゃないし、そもそも俺のメイン狩場である山にはまずいないからよ」

 するとオルクスは怯えさせたのかと思ったのか、少し表情を崩しておどけて見せた。

「ーーほっ」

 露骨に安堵するミミック。


「しかしあんたらもモンスターを連れてるなんて珍しいな。少なくともミミックを連れてる冒険者なんて長いこと賞金稼ぎをやっていて一度も見たことが無いぞ」

 オルクスはそれから首を傾げつつ、言ってくる。

「ま、馴れ合いでね」

 メイティアはそう言ってのける。

「へぇ、そんな事もあるもんなのか。犬とか狼とかはたまに手当してやって人間とかと仲良くなるというのは聞いた事があるが、モンスターの類は知らないなあ」

「そもそも私自体、弾除けにいるみたいなもんですけどね……、まぁ、この塔自体間取りを全部知らないからこうしていられるのは有難いんですけど」

 ミミックは呆れながらも言う。

「まぁ、寄りかかった船みたいなもんだからな。勘弁してくれや」

 ヴィルネイタはそんなミミックの頭をぽんぽんと叩きながら、ふざけて謝罪してみせた。


「……ふぅ」

 俺は俺で、そんな皆の様子を見つつも、少し考え込んでいた。

 その理由としては、オルクスについてだけではない。

 この塔のてっぺんにあるといわれる何か、そして妙な夢についてだ。

 あの汗だくになるほどの嫌な感じ、水色のガラス製の四角い装置……。夢など普段ならばすぐに忘れてしまうというのに、まだ記憶の片隅に残っている。ひょっとしてこの塔は、相当不味いものなのではないのか。

「ーーん、どうした? 少し休むか?」

 ぼけっとしていると、ヴィルネイタが尋ねてくる。

「……何でもないさ」

 俺はそう言って、首を横に振った。

「それよりも、この塔はかなり上に来たがだいたいどれくらいなのか分かるか?」

「4分の3くらいじゃないかとは思える」

 メイティアが言う。

「そうか、それなら大分来たな。序盤のように天井をーー」

 そこまで俺は言い出したところで、はっと気付く。



 オルクス=フェアガーデン。奴はいったい、ーー何時登ってきた?

 俺たちを追い抜かしたとでも、いうのか?


 ーー皆が気付いていないようなのでそのまま、黙っておく。

 そうだ、俺達より先にくるというのは野宿のタイミングだけだ。

 だが、この男が来たというのは……なんなのだ。

 こうも日程まで偶然被るなのか。

 もしかしてこの男自体も、モンスターが化けているのか。

 考えれば考えるほど、冷や汗が出てくる。

 恐らく、あの体躯だ。俺やヴィルネイタでは、いざという時に接近戦では負けてしまう。

 メイティアが唯一、オルクスが何かをしでかした時に戦える切り札となるだろう。


 ーーしかし、疑心暗鬼に囚われていいものか。

 こんな時にあの少女にでも狙われたりしたら、ひとたまりも無い。


 いや、待てよ。

 もしかしてあの少女がオルクスなのでは?

 

いや、それはないだろう。

 魔法をもってしてもここまでの質量変化、一般人ならまだしも俺の目を誤魔化す事は難しいはずだ。


 俺はアイテムストライダー。腐っても本物と偽者の区別は付く。

 ーーだが、だとすれば俺は、どうすればいい?



「おーい、自分の世界に入ってるなよ。そろそろ次の階に行くぞ」

 その時、ヴィルネイタの声が掛かる。


「ん、あぁ、すまない」

 俺は慌ててヴィルネイタに謝った。

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