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第四章 少女(2)

 その後根気良くフロアを回ったが、碌な物は採取出来なかった。

 空の瓶、炭、鉄の鍋、小石、割れたステンドグラスの破片……。もちろん一々拾う訳にはいかないので、適当に取捨選択して放置だ。

 塔の外どころか普通に道を歩いていても拾えるようなレベルであり、レアリティを感じなかった。


「どうにもなりませんねえ」

「あぁ」

 ミミックの言葉に同意しつつも、探索を終える。

 とりあえず歩き回ったところは軽く手帳にマッピングはしてあるので迷うことはないだろう。

「上がろうぜ」

「そうだな」

 他の皆もそれぞれやることをなくしたようなので、行動再開だ。


「ギィィィィ!」

「失せろ!」

「グギャアアアア!」

 次のフロアにはまた凝りもせずゼイロックが出てきたが、まとめて処分をして倒しきる。

 ーー奴らは強いとは言い難いステータスなので楽に済んだが、長丁場になればこちらも傷は免れないと思えた。

「この程度の敵ばかりなら良いのだけどね」

 メイティアが溜息をつくが、その顔には余裕さが浮かばれる。

「スライムにまた囲まれたらどうするんだよ」

 ヴィルネイタはその横顔を見て呆れながらも、小脇に本を抱えて一息入れて見せる。

 だが、その瞬間にまた背後からゼイロックが出現した。

「グゥゥゥ!」

「言わんこっちゃねぇ!」

 すぐさま臨戦態勢を取ろうとするが、逆方向からまた何かが飛び出してくる。

「新手か!」

 メイティアがそちらに対応を取ろうとするが、その飛び出してきた何かは電撃のようなものを武器から放ち、ゼイロックを吹き飛ばして見せた。

「何!?」

 予想外の行動に面食らう俺達、だがその何かは動きを止め、話しかけてきた。



「……俺は敵じゃない。賞金稼ぎだ」

 身長は180はあるだろうか。俺達3人の誰よりも長身な男が一人。目付きが悪く、長髪であった。

「賞金稼ぎだと?」

 メイティアが不審な顔付きで男を睨む。

「あぁ。しかも公営のな。証拠はある」

 男はそう言うと、国際バウンティハンター許可登録済みと印のされた、異国の文字で書かれた名刺を渡してくる。

男の装備は、黒いマントの下にジャケットを着込んだ形で、ズボンとブーツが一体となった中々見ない服装だった。

「そのマントは?」

「……対魔法装備だ。一発二発程度なら防げるように特殊繊維を編み込んである」

「武装も見たことが無いな。その短銃身の物は……・拳銃か?」

「発掘武器の魔銃剣という奴だ。マテリアルを挿入する事で、中距離は内蔵魔法、近距離は非実体剣として扱う事が出来る。こんな風にな」

 男は魔銃剣を構え、まだ息のあったゼイロックの顔を射撃で吹き飛ばす。

「ビャアアア」

 断末魔を上げながらゼイロックがびくりと動く。

「距離減衰が激しい上に本家魔法に比べれば大した事の無いものの、簡単なモーションで撃てるのが強みだ」

 男は言いながら、銃をくるくる回してホルスターに収めた。

「我々に接触してきた目的はなんだ?」

 そこへ、メイティアが口を開く。まだ男を怪しがっているようだ。

「……お前達は、この塔を徘徊する小さい女を見ただろう?」

 男はふと、強い口調で言った。



「……あぁ」

 メイティアが頷く。


「それならば話が早い。一言で言えば、アイツに連れが殺された。あんた達のパーティに便乗させて貰いたいが、頼めないだろうか」

「……っ!」

「えぇ!?」

 ヴィルネイタとミミックが驚く。

「マジかよ?」

「あぁ。言っては何だが、食料に関しては自分の分の持ち合わせがある。だが、あのガキを殺すには少々余力が無くてな。流石に索敵を常にしながら敵を倒すだけの余裕は無さそうだし、このまま帰りたくも無い」

「成程」

「余裕が無ければ盾として使ってくれてもいい。……頼めないだろうか?」

 男はそう頼んでくる。

「どうする?」

「怪しいといえば怪しいが、こちらを襲う気があるのならば幾らでも手出しするチャンスはあったはずだ。……構わないとは思う」

 メイティアが頷く。

「それなら、異存は無い」

 俺も頷く。

「それじゃ、頼むぞ。俺の名はオルクス=フェアガーデン。オルクスと呼んでくれ」

 オルクスはそう言い、大きな手を差し出してきた。

「よろしく」

 俺はその手を握る。……観察しようとしなくてもかなり鍛えているのが分かる。恐らくは単純な握力でも100は越えているだろうと推察出来た。

「剣か何かを元々やっていたのですか?」

 俺はそう聞く。

「よく言われるけどな。格闘戦はこの銃以外は素手を使っているんだ」

 オルクスはそう言いながら笑って見せた。

「オルクスさんが、この塔を調べていた理由はなんなんですか?」

 ミミックがそこへ尋ねる。

「きな臭い殺人事件が多発してきて、この塔に原因があるのではないかという話が出てな。調べにきたらこのザマという事だ」

 オルクスはやれやれといった態度をとる。

「……何か私達に注意点として伝えておくべき情報はあるか?」

 とそこへ尋ねるメイティア。

「俺が手に入れた情報は大した者ではない。色々と此処まで登ってくる途中に本をひっくり返して読んだりはしてきたが、俺の知っている情報としてはあの女はなにやら作られた生命体らしいって事、そしてこの塔のてっぺんには奴にとって都合の悪いものがあるという事、それだけだな」

 オルクスはそう言ってきた。

「マジかよ、そりゃ初耳だ」

 ヴィルネイタが驚く。

 この塔に、まだ他にも存在するものがあるとは。

 宝なのかなんなのかは知らないが、気になってくる。

「逆に我々の知っている情報も少ないが……一つ確実に言えることはあるな。あの女は魔力の感知が出来るという事は事実だ。クローキングではバレるという事、それは注意したほうがいい」

「そうなのか。それはこちらは知らなかったな。だとしたら待ち伏せも難しいか……なんとか間合いさえ詰めれればいいが……」

 メイティアが情報を話すとオルクスの方も有意義な情報を知ったとばかりに、顎に片手をあてて何事か考え込んでみせた。

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