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童話っぽいお話

夢渡姫

作者: 榎本あきな

なんかふっと思いついたのを書いたものです。

久々に書いたから、なんかすごい低クオリティ。

童話ってよりも、童話風味って感じです。だって死ぬとか殺してとか入ってるし。


それでもよければどうぞ↓

 ある国に、極悪非道、残虐無慈悲、人を人とも思わない、人間として最低というべき男がいました。

 けれど、その男は外面だけはよく、なんでもできた為、とても偉い立場にいました。


 その男には、娘が一人いました。


 その娘は、男とは真逆の、愛らしく、性格も大人しい、優しい少女でした。

 しかし、何をやってもできず、男に虐められている内に、涙を、流すことができなくなりました。


 そんなある日、男は、幼い少女を隣国の、同盟を組んでいる王子の婚約者にしました。

 男は、金のためだけに婚約者にしましたが、少女は、まだ見ぬ王子に、痛む体を押さえながら、喜んでいました。


 ですが、王子と対面する当日。


 少女が、謎の病にかかり、王子と対面する前に倒れてしまいました。

 数日後、なんとか少女は助かりましたが、代わりに、酷い眠気に襲われるようになり、一日の大半を、眠ったままで過ごすこととなりました。


 けれど、少女はその代わりに、『夢渡』という、他人の夢に入り込めるという、特殊な能力を持ちました。

 色んな人の夢を渡り、時には夫婦を仲直りさせてあげたり、時には戦争を食い止めたり、時には父親に自分を殺す様に言われた暗殺者を心変わりさせたりと、たくさんの事をしました。

そんなことをしていたからでしょうか。

 いつしか彼女は『夢渡姫―ゆめわたりひめ―』と呼ばれるようになりました。



 そんな彼女のある日のお話。


***

 ある日夢渡姫は、夢の中で青髪の男の子に出会いました。


 その子は、泣いていました。



「うえぇぇーん!うえぇぇーん!!」

「どうしてこんなところで泣いているの?」



 夢渡姫は、問いかけました。



「僕、苛められているんだ……。でも、僕は弱いから止める事も出来ないんだ。……僕、死んじゃいたいよ……」



 そういって落ち込む男の子に、夢渡姫は答えました。



「なんで生きることを諦めちゃうの?あなたには、寝たきりで何もできないうえ、最低の父親を持って、しかもその父親に殺されそうになった私と比べると、とっても幸せじゃない」

「で、でも……」

「でもじゃない。そもそも、両親や友達に相談したの?」

「う、ううん……してない」

「じゃあ、まずは相談してみなさいな。あなたみたいないい子が育ったんだもの。きっと、あたなの両親や友達だって、あなたのようないい子よ」



 夢渡姫がそういって笑いかけると、男の子は少し考え込んだ後、笑顔になりました。



「……そうだね!僕、そうする!僕が死んだら、悲しむ、大切な人がいる!だから、僕はまだ死なない」

「そう。よかった。じゃあ、私はそろそろ行くわね」



 男の子の涙を止めた夢渡姫は、満足して、次の夢へと渡ろうとしました。


 その時です。



「あっ、お姉さんちょっと待って!!」

「……?どうしたの?」

「あのさ、もしかして、他の人の所に行くの?」

「そうだけど……?」

「じゃあ、じゃあさ!隣の家の黄髪のお姉さんの所へ行って!お姉さん、好きな人と両想いなのに、それに気づいてなくて、しかも、その人を諦めてもうすぐ、よその人の所へ嫁ぎに行っちゃうの!だから、お姉さんの所へ行って!!」



 先ほどの男の子に止められら夢渡姫は、男の子のお願いに首を縦に振りました。


 そして夢渡姫は、また、夢を渡り始めました。


+++

 ある日夢渡姫は、夢の中で一人の黄髪の少女に出会いました。


 その子は、泣いていました。



「うぅぅぅ~……。うぅぅ~!!ヒックッ!」

「どうしてこんなところで泣いているの?」



 夢渡姫は問いかけました。



「私、好きな人がいるの……。でも、その人は私を妹のようにしか思ってくれない……。もう、諦めたいの。だから、私、今まで断ってたお見合いを受けたの……でも、あの人の事が頭から離れないの……!!」



 そういって沈む少女に、夢渡姫は答えました。



「あの人の事が頭から離れないって言うんなら、その人の事を諦めなければいいじゃない。そもそも、そんな半端な気持ちで誰かの妻になるなんて、その人に失礼だと思わないの?あなた、告白は?」

「え……、ま、まだだけど……」

「はぁ……。断られてないんだったら、別にいいじゃない。玉砕覚悟で告白しなさいよ。そもそも、妹みたいに思われてるってことは、その人はあなたの事、嫌いってわけじゃないんだから。でしょ?」

「で、でも……」

「でもじゃない。何?断られることが怖いの?そんなの怖がってたら、世の中、生きていけないに決まってるでしょうが。いいから、つべこべ言わずに行ってきなさい。…………後悔したくなければ」



 夢渡姫がそういって笑いかけると、少女は少し考え込んだ後、笑顔になりました。



「……そうよね!やるまえから諦めてたら、何もかも始まらないもの。それに……私、後悔したくない」

「そう。よかった。じゃあ、私はそろそろ行くわね」



 少女の涙を止めた夢渡姫は、満足して、次の夢に渡ろうとしました。


 その時です。



「あっ、ちょっとまって!!」

「……?どうしたの?」

「あの、もしかして、他の人の所にも行くの?」

「そうだけど……?」

「じゃあ、私の親友の、緑髪の女の子の所へ行って!あの子、とても偉い家の子なんだけど、継母に嫌われてると思っているのよ。……本当は、あの子の継母は、あの子大好きで、ただ、表に出すのが苦手なだけなのに……。だから、お願い!あの子の所へ行って!!」



 先ほどの少女に止められた夢渡姫は、少女のお願いに首を縦に振りました。


 そして夢渡姫は、また、夢を渡り始めました。


+++

 ある日夢渡姫は、夢の中で一人の緑髪の少女に出会いました。


 その子は、泣いていました。



「うぐ……ひっく!うぅぅ……ひくっ!」

「どうしてこんなところで泣いているの?」



 夢渡姫は問いかけました。



「私……一般よりも位の高い家の子なのですけれど、私のお母様は亡くなってしまい、今のお母様は、お父様が再婚して出来たお母様なのです。ですけれど、お母様は私がいくら頑張っても、こちらを見てくれない。私がいくら頑張っても、無表情で、ただこちらを見ているだけ……。私、やはりお母様に邪魔な子だと思われているのですわ……!!」



 そういって沈む少女に、夢渡姫は答えました。



「あなたは、そのお母様の声を、言葉を、本音を、聞いたことがあるの?いくら無表情っていったって、それがあなたを嫌っているという証にはならないのよ?表情以外にも、言葉、目、行動、思い……色々な気持ちの伝え方があるの。あなたは、お母様の気持ちの全てを、受け入れるように、お母様を見ていたの?」

「い、いいえ……」

「あのねぇ……世の中、表情だけが気持ちを伝える道具じゃないのよ?そんな事言ったら、私なんて表情動かないし、涙も笑顔もできないし、そもそもずっと眠ってるし。でも、そんな私でも、夢の中で伝える事が出来る。あなたのお母様にも、きっと、お母様なりの気持ちの伝え方があるんじゃない?」

「で、でも……」

「でもじゃない。そもそも、無表情で何も言わないだけで嫌いって、相手の感情を勝手に決めつける方が、お母様に失礼だと思わない?それに、その様子だと、あなた自身の気持ちも、お母様に伝えてないんじゃない?そんな風に勝手に決めつけてるくらいなら、とっととお母様に自分の気持ちを伝えに行きなさいな」



 夢渡姫はそういって笑いかけると、少女は少し考え込んだ後、笑顔になりました。



「……そうですわね。別に、表情が気持ち全てを表しているわけではありませんもの。それに私、一番大切な事を、お母様が大好きだという自分の気持ちを、伝えていませんでしたわ。これでは、そもそも好きか嫌いかだなんて、判断をつけてはいけませんわね」

「そう。よかった。じゃあ、私はそろそろ行くわね」



 少女の涙を止めた夢渡姫は、満足して、次の夢へ渡ろうとしました。


 その時です。



「あっ、ちょっと待ってくださいませ!!」

「……?どうしたの?」

「あの、もしかして、他の方の所に行かれるのですか?」

「そうだけど……?」

「でしたら、私の幼馴染の、紫髪の少年にあってくださいませんか?彼、とても優しい方なのですが、この前、ある姫君を守るために人を初めて殺しまして……。そのせいで思いつめておりますの。相手だって兵士なのだから、死ぬ覚悟だってできていたのだから、彼は誰からも責められるいわれはないのに……。だから、お願いですわ!彼の所へ行ってくださいませ!!」



 先ほどの少女に止められた夢渡姫は、少女のお願いに首を縦に振りました。


 そして夢渡姫は、また、夢を渡り始めました。


+++

 ある日夢渡姫は、夢の中で一人の紫髪の少年に出会いました。


 その子は、泣いていました。


「クソッ!…ゥゥ……ウゥゥ……!」

「どうしてこんなところで泣いているの?」



 夢渡姫は問いかけました。



「俺……人を殺したんだ。皆は、兵士なんだし、殺さなきゃいけないこともあるって、死んだのは、相手の力量不足だって、何より、姫を守るためなんだから、しょうがないって言うんだ。……でも、俺が人を殺したのにはかわりない。気絶させるだけでもよかったはずなんだ!だけど、俺は……」



 そういって沈む少年に、夢渡姫は答えました。



「あなたは、兵士なんでしょ?あなたの国に忠誠を、そして心臓を捧げた、立派な兵士なんでしょ?それをあなたは、何?人を殺したことを後悔している?確かに、命を粗末にするのは人として最低。でも、あなたが殺した理由は、姫を守るため。忠誠を誓った主を、守るため。それを後悔してる?じゃあ、あなたは、人を殺したくないって理由で、姫を見殺しにするつもりだったの?」

「い、いや……俺は、そんなつもりじゃ……!」

「だって、そういうことでしょ?力量が足りないっていうけど、姫を守る。それだけの力があれば、十分でしょ?気絶させるだけっていうのが最善なのかもしれないけど、姫を守れた。そのための行動を後悔するのは、姫に対しても、そして、あなたと戦って死んだ兵士にも、失礼よ」

「で、でも……」

「でもじゃない。そんな心構えじゃ、姫を守る事すらできなくなるわよ?いい?あなたの一番は、忠誠を誓った主を守る事。二番目は、あなたの命を守る事。相手の事を心配するのは、それをきちんと守ってからいいなさいな。あなたが、姫を守りたくないと、自分の命はなくなってもいいというなら別だけど」



 夢渡姫はそういって笑いかけると、少年は少し考え込んだ後、笑顔になりました。



「……そうだな。忠誠を誓った兵士の一番は、姫を守る事だ。そのための行為を後悔するなんて、俺は兵士としてまだまだだな……。もう、後悔はしない」

「そう。よかった。じゃあ、私はそろそろ行くわね」



 少年の涙を止めた夢渡姫は、満足して、次の夢へ渡ろうとしました。


 その時です。



「あっ、ちょっと待ってくれ!」

「……?どうしたの?」

「あの、もしかして、他の所に行くのか?」

「そうだけど……?」

「じゃ、じゃあ、俺の乳母兄弟の、赤髪赤目の奴に会ってくれないか?あいつ、もうすぐ同盟を結んでた隣国との戦で、元婚約者を殺さなくちゃいけないから、悩んでるんだ。あいつは、絵でしか見たことがない彼女に、恋をしていたからな……。だから、頼む!あいつの所へ、行ってくれないか?」



 先ほどの少年に止められた夢渡姫は、少年のお願いに首を縦に振りました。


 そして夢渡姫は、また、夢を渡り始めました。


+++

 ある日夢渡姫は、一人の赤髪赤目の人に出会いました。


 その人は、夢渡姫が恋い焦がれた、絵でしか見たことがない、隣国の王子でした。


 彼は、泣いていました。



「…………」

「どうしてこんなところで泣いているの?」



 夢渡姫は問いかけました。



「君は、最近噂の……!……悩みを聞いてくれるのなら、ありがたい。今、この国では戦争が起きている。元同盟国だった、隣国との戦争だ。隣国の王が、これはまた悪い奴でね。そいつを倒すためさ。だが、いくら倒しても、相手の士気は落ちない。理由を探ってみると、なんでも、ずって眠り続けている僕の元婚約者が、どうやってか、兵士の士気を高めているらしい。そのため、もうすぐ僕は彼女を殺しに行かなくてはならなくなった。……けれど、僕は彼女が好きだ。絵だけでしか見たことがない彼女。でも、この愛は本物だ。……けれど、僕の国を隣国に乗っ取られる気はない。そのためには、彼女を、殺さなければいけないんだ……」



 そういって沈む彼に、夢渡姫は答えました。



「……それなら、殺せばいい。彼女は、あなたの負担になるくらいなら、殺された方がマシだって言うわ。それに、元婚約者のあなたに殺されるならば、幸せだと……ね」

「……どうしてわかるんだい?」

「女に秘密はつきものよ?……あなたは、彼女を殺しなさい。彼女も、あの残虐な父親に国民を虐げられるくらいなら、殺されて、父親も殺されて、隣国に侵略された方がいいっていうわ。だから、早く殺しに行きなさい。彼女が後悔する前に。……ね?赤髪赤目の王子様?」

「で、でも……」

「でもじゃない。殺される彼女が殺されてもいいっていってるの。あなたは、そんな彼女の決意を無駄にする気?元婚約者の風上にも置けないわね。あんたは王子。好きな人は敵。王子は国民を幸せにする義務がある。そして、あなたの好きな人は、殺されてもいいって言ってる。王女として、国民の幸せを願って、それが最善策だと考えて。……彼女の幸せを本当に願うなら、殺しなさい」



 夢渡姫はそういって悲しそうに笑いかけると、彼は少し考え込んだ後、悲しそうに笑った。



「……そうだね。彼女は王女。僕は王子。僕らが一番に考えなければいけないことは、国民の平和だ。それがたとえ、他国の国民であろうと、その国民を虐げるものは、排除しなければならない。そして……僕の好きな人が決意してくれたことだ。僕は、やらなければいけない。彼女のために。国民のために。そして……僕のために」

「そう。よかった。じゃあ、私はそろそろ行くわね」



 彼の涙を止めた夢渡姫は、満足して、夢の奥へと行きました。


 後ろから、王子の止める声が聞こえましたが、夢渡姫は振り向きませんでした。


 それ以降、夢渡姫が夢を渡ることは、ありませんでした。


+++





























「聞こえているかい?姫」


「僕は、君が夢での彼女だって知ってたんだ」


「でも、それが君の、そして彼女の決意なら、僕は君たちを殺そうと思った」


「けれど、無理だった」


「だって、見てごらんよ」



 外から、風と共にたくさんの人々の歓声が聞こえてくる。

 それはまるで、死んでほしくないと叫んでいるようだった。

 そして、生きてほしいと嘆いているようだった。



「君は、こんなにもたくさんの人々から好かれているんだよ?」


「君は、こんなにもたくさんの人々を救ったんだよ?」


「そして、僕もその一人だ」


「ねぇ、姫……いいや、夢渡姫。起きておくれ」


「国民の幸せを叶えるのが、国を治める者の役目だろう?」


「だから……起きてくれ。夢渡姫。君の『夢渡』はもう、終わったのだから」



 ゆっくりと上げた目蓋の先に、赤い髪を赤い瞳を持った人が表れる。

 その人の赤い瞳に、青い瞳を持った私が映る。

 その顔は、彼の瞳の中でゆっくりと歪んでいき――――






























 ――――私は、涙を零した。














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