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3話・響くサイレン

―――母親の葬式を途中でこっそりと抜け出した蒼羽は、自分の部屋でゴロゴロと暇していた。

たまに、精霊や妖が来たのだが軽い挨拶程度で、挨拶を済ませた彼等はすぐさま姿をけした。

(ま…あいつらにも被害があるもんな…人を脅かしていても、やっぱ死んだ同胞の無念を晴らしたいって思ってんだろうな…)

畳の床に寝転がりながら小さく溜め息をつき、起き上がる。

「久し振りに行ってみるか」

そう呟くと蒼羽は机の上に置いてある呪符と護符が入ったケースを手にすると、携帯電話やポケットタイプの懐中電灯を入れた小型のウエストバッグに入れ、外に出る。

既に日は暮れていて辺りは真っ暗になっていたが、まだ葬式は終わっていなかった。

バッグから懐中電灯を取り出すと灯りをつけ、裏口から抜け出すと夜道を歩き始めた。

外灯は幾つかあったが、夜道を照らすには十分ではなかったが、幸いにも満月の明かりが夜道をほんのりと照らしていた為、なんとか歩けた。

蒼羽は数分かけて歩き続け、とある1件の廃屋の前に辿り着いた。

其処は近所で『妖怪邸』と呼ばれており、まだ村で暮らしていた時蒼羽は遊び場として使っていた。

中に入ると澄み切った空気が充満しており、この敷地には何重も結界がはられている事に蒼羽は気付いた。

と、懐かしい来客者に気付いたらしく、辺りからはざわめきが響いた。

『あー!ソラウだー!そらがかえってきたよー!』

ひゅん、と先に蒼羽にくっついたのは小さな精霊達だった。

「いだっ!髪ひっぱんな!」

『だってソラウ、ぜんぜんかえってこなかったんだもん』

「しかたねぇだろ。親に戻ってくんなって言われたんだから」

その事を聞いて次に姿を現したのは大小の妖達。

『蒼羽君の母親の死でこっちに戻ってきたって座敷わらしのひなから聞いたわ。随分と身勝手な親ね』

真っ白な衣服に身を包んだ雪女は呆れ返った表情で呟く。

『けど、同胞達を襲ってる奴が原因なんでしょ?蒼羽以外のニンゲン達は気づいてないみたいだけど』

「悪い、俺も小さい時は気づかなかった」

『仕方無いわよ。蒼羽はニンゲンで、小さい時に都に行ったのだから。強い霊力を持たないと気づきにくいわ』

ろくろ首の言葉に他の妖や精霊達は一斉に頷く。

『それに最近、異空の者が何人か来た。アマテラス様やツクヨミ様達と同じ存在と、神々に使える者達と同じ存在』

この地を護る地の神がそう語ると、蒼羽は神社でみた4人を思い返していた。

確信すら持てなかったが、蒼羽にとっては異界の者だと感じ取れた。

すると突然、パトカーのサイレンが鳴り響く。

恂戎村は田舎だったが、隣には碕宮(さきみや)市と呼ばれる大きな街があり、一応電話も繋がる。

だが、碕宮市に行くまでには片道二時間以上かかり、電話もまれに会話中に切れてしまう事がある。

しかも、村でのテレビは必要最低限として2つのチャンネルしかとってなく、アニメやコメディー番組はあまり見れない。

そんな事を考えていると、烏天狗が慌ただしい様子で入ってきた。

『大変ダ!マタ奴等ニ、喰イ殺サレタ!』

彼の言葉に辺りの空気は一気に凍り付く。

『ア、蒼羽ジャナイカ。久サ振リダナ』

『蒼羽君の挨拶は後にしなさい…今回はニンゲンみたいね。悟郎、喰われた奴は?』

雪女の言葉に烏天狗はハッとして頭をかく。

『ソウダッタ!スマナイナ。喰ワレタノハ若イ人間ノ女ダ』

烏天狗の報告に九尾(妖達からみてはかなり若い)はしょんぼりと項垂れる。

『若い女かぁ…最近は精霊達から力を貰って生きてるから、あまり食べてないなぁ…』

『彩月、蒼羽君の前でそんな話しないの』

『あわわ。ごめん、そらちゃん』

「気にしてないさ。妖は人間を喰うのが大半だって雪乃姉から聞いてるし」

謝る九尾に笑いながら語ると、蒼羽は雪女をちらりと横目で見る。

雪女は小さく溜め息をつくが、すぐに思考を巡らせた。

『神隠しに始まり、次は殺し…何かあるわね…』

「雪乃姉。俺にも何か手伝える事はないか?」

『え…でも…』

「皆にはチビの頃から世話になったし、あまり来れなかった事も詫びたいからさ。俺に出来ることなら何でも言ってくれ」

雪女は断ろうとしたが、真っ直ぐな瞳で見据える蒼羽に負けた。

『…じゃあ、お願いするわ。最近の人間の道具は私達を映すらしいわ。あまり騒ぎにしたくないし、私達は強い光が苦手だから、蒼羽君は太陽が出ている時も行動して。夜は情報整理の時以外は来なくてもいいわ』

「分かっt…『えー!ソラウとあそびたいのにー!』…おいー、カナデー、人の話を遮るなー」

話を遮った精霊を軽く小突くと蒼羽は雪女と再度向き合う。

「じゃあ、俺は帰るよ。何かあったら念話で知らせてくれ。俺も何かあったら念話するから。後、危険だから無闇に外に出ないよう他の皆に伝えてくれよ」


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