第三章★声‐7日目‐
『今日の9時に電話するね。バイトに行ってきます。』
『いってらっしゃい。頑張れ!』
まるで彼と恋人のような 感覚に陥るメールでの会話だけど実際は彼とはただのメル友という関係だ。
その事を考えるとつらくなってしまう。
(何でこんなにつらくなるんだろう?)
優貴君がバイトに行っている間は、期末テストの勉強をしたり、お気に入りの作家の本を読んだりして時間をつぶした。(もうすぐで9時になっちゃう…。
優貴君と電話で話すなんて初めてだから何を話せばいいのか分からないよ…。)
私が緊張の絶頂に達していた時、携帯電話から愉快な着メロがながれた。
携帯電話を開いてみると知らない番号からの着信だった。
(今、9時を少し過ぎてるし、もしかして…優貴君!?)
私は深く深呼吸をして電話に出た。
「もしもし。アミですか?」
私はびっくりして何も言えなくなってしまった。
彼の声は1度聞いたら忘れられないような、甘くて、透き通っている綺麗な声だったから。
「優貴君…声がとても綺麗だね。」
緊張をしすぎた私は
「もしもし」
と言う前に本題に入ってしまった。
しかも、優貴君が1番気にしている声の事にふれてしまったのだ。
(どうしよう…。これじゃあ、礼儀知らずの嫌な女になっちゃってるよ。)
けれども、優貴君はやっぱり優しかった。
「ありがとう。今まで声で誉めてくれた人はアミが初めてだよ。いつも、声で馬鹿にされてたから。皆に高くて変な声だってよく言われちゃうし。」
この言葉を聞いた瞬間、私の胸はドキドキ、顔はりんごのように真っ赤になってしまった。
(私にありがとうって言ってくれた…。)
私はボーッとしてしまい自分の世界に入ってしまった。
「アミ?もしかして俺の声聞こえてないのかな?」
その声で我に返った。
「聞こえてるよ。今日は優貴君の声が聞けてよかった。」
「俺もアミの声を聞けてよかったよ。またあとでメールするね。」
「うん!待ってるね。」
電話を切った後もドキドキが止まらなかった。
(私…優貴君に恋しちゃったの!?)
私は優貴君に恋をした事を認めたくなかった。
(優貴君はただのメル友だし…。
きっと緊張しすぎておかしくなっちゃっただけで、これは恋じゃない。
)私は自分にそう言い聞かせたが、彼からのメールをものすごく楽しみに待っている自分も居て、とても複雑な気分になった。