朔
人には見えなくても、そこに存在してる事を俺は知っていた。
だから見えないままでいいと思っていた。
でも時という角度の移り変わりで見つけられる。
それは、無を表すのではなく、始まりを表していた。
「ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンピピピピピピピピピピピピピ・・・・・・」
家中に響き渡るその音が、睡魔という正義に打ち勝ち、俺の体を玄関へと運んだ
夜のバイトがおわって、これから寝るところなのに。いや、コンビにだぞ?
「は~いい?どちらさん?」
さっさと追い返してもう一度、我聖地に戻ろう。
そう思い、玄関を開けた
「す、すまぬ。ボタンが・・・」
誰もいなかった
が、鳴り止まぬ音、どうやらインターホンに異常があるらしく、見事に埋まっていた
誰がこんな悪戯を。
そうして戻ろうとすると
「ま、待て。おぬしが朔真じゃな」
と、どこからとも無く聞こえた
違う?下から?。
少しだけ視線を下げると何かの頭が見えた
「おぬしが朔真じゃな?」
頭が揺れてそんな声が聞こえた
・・・予定通り行こう
「違います、それお隣じゃないですか?」
「なんじゃ。コレは失礼した」
そうして彼女は去っていった
悪を滅ぼし聖地への凱旋の途中、携帯という名の刺客が鳴り出す
ディスプレーに『妹』と表示されていて、取る事無く電源を切った
歩みを進めようとした時、ふと思い、おもむろに固定電話の線を抜いた
そうして、凱旋した俺の事を聖地は暖かく出迎えてくれた
まるで夢のような場所であった
「ぐ~~~~ぅ」
「すぴぃ~~~~~」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンピピピピピピピピピピピピピ・・・・・・」
どうやら魔王は人間に悪の心がある限り、何度でも蘇るらしい。
玄関を開けたが誰もいなかった。
「ピピまピピてピピむピピしピピすピピるピピなピピピピピピピピピピピピ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
眠気のせいか、重い足を引き摺りながらインターホンを直しに行った。
「無視するなと言うておるじゃろうに!」
インターホンが治るとそんな声が足元から聞こえた
少しだけ視線を下げると何かの頭が見えた
「おぬしが朔真じゃな!」
頭が揺れてそんな声が聞こえた
「違います、それお隣じゃないですか?」
「行って来たのじゃ、両隣も!向かいも!!裏も!!!斜め向かいも!!!!斜め裏も!!!!!八軒全部!!!!!!全部の家がこの家の人だって言っておったのじゃ!」
こんな朝早くに、なんとも律儀に近所迷惑を
「あ~解った解った。今眠いから、三時間後くらいに来てくれ」
そう言って玄関を閉めようとすると
「待つのじゃ!!」
銃口が俺に向けられた
「・・・・・・」
「・・・・・・」
もうベットに行く事は諦めた
物理攻撃よりも魔力攻撃に弱い俺はその場に倒れこむように寝るのであった
「おやすみ」
「な!!」
「ぐ~~~~ぅ」
「完全に寝ているじゃと!?」
「すぴぃ~~~~~」
「ん~~~!!!!!!!」
「起きるのじゃ~~~~!!」
ビターンと放たれた、ギャグ補整と集束のコンボは、睡魔という最強の魔法攻撃よりはるかに強い物理攻撃であった
◇ ◆ ◇
「で?アンタどちらさん?」
頬に冷蔵庫から出した、保冷剤を当て振り返りながら、居間のソファーに座っている不法侵入および暴行の犯人にそう言う
完全に目が覚めてしまった。てか床に座れや。
「わらわはフルトレアステナルト・リーゼンロートレアヌ・ランクリストケークロファ。
ランクリス王国の、姫じゃ!」
なげ~名前。それはどこの国ですか?てか本物?。
ま、どうでもいいけど。
「で?そんなお姫様が何用?」
さっさと用件終わんね~かな。
「うむ、それはの、昨日見た花がよい出来じゃったので、それで話を色々聞こうと思って来たのじゃ」
「花~?」
どこから花が?お姫様は花を見たら知らないどこかの人と会いたくなるものなの?
「正確には花のデザインといったほうが正しいじゃろう」
・・・花のデザイン、昨日
まさか・・・・。
「もしかしてミカの結婚祝いにおくった花のことを言ってるのか」
ありえないと思いながら言ってみる
だって普通に考えてバカじゃなきゃ無理だもん。
「そうじゃ、おぬしの妹の結婚祝いに送った努力の奇跡じゃ」
バカでしたコイツ
「おかしいだろ!だってミカの結婚会場は旦那の国、ヨーロッパだぞ!!時間的に考えて直で来たのかよ?!」
「そうじゃ」
ありえね~。
そう思うがあの会場でしか知る事ができない話なので嘘じゃないだろう
それにしても、コイツ本当にお姫様かも?重度の世間知らずっポイし
「ん~ん、ま~その話は置いておく事にして。花だったか?アレはそんなに難しいデザインじゃないだろ?」
「その話ではない、あんなデザインと、その込められた意味。アレを作ったおぬしに興味があったのじゃ」
・・・・・・
「アレは、そんなにたいした物じゃない」
「そうかの?それにおぬしの妹も言っておったぞ、基本的に優しい人間じゃが、少々違ったところに本質があるかもと、面白い忠告をしてもらったと言っておった」
!
「それを、きいた のか?」
できるだけ自分の同様を押えながらそう言った
いや聞いてないだろう、聞いていればこんなところに来る可能性はあまりない
「うむ、自分でもあまり理解できない事じゃからと、教えてくれんかった」
だよな・・・。
「遠いいところから、はるばる悪いがアンタの望むような答えはない。あの花はたいした物でないからな」
アレの本質は、そんな美談にできるような話でない
「そうかの?とても強い思いがあるように感じたのじゃが」
だから・・・。
「だから代わりに、先ほど言っていた忠告の話。アレは身内のミカだから教えた事だが、アンタにも教えよう」
「おお、それも興味があったのじゃ」
・・・
「もし、自身を嘘つきだと言う者がいたら、意味が解っているのか?と聞きな。解っていない者ならば、信じるな。解っている者ならば、近づくな」
そのセリフはこの場を一瞬にして凍らせた
そして無用な追い討ちに、凍りついたこの場を打ち砕くように
「俺は、嘘つきだ」
・・・
「話す事はもうない、お帰りいただこう」
そのセリフに素直に従うのであった
◇ ◆ ◇
もう、誰もいない窓の外を見ながら罪悪感を募らせる
もっと優しくするべきだったかな?。
色々めんどうな位置にいることがわかるのだから
でも俺が心配するのは、逆効果かな?。
言い訳と、事実が心の刃をつきたてる
「ねむくね~」
災害は、起きた瞬間より、その後の方が大きな傷を与える物だ
「朝飯でも、食お」
◇ ◆ ◇
「流石に睡眠ナシで昼からのバイトはキツイ」
でも来週のことを考えるとお金を少しでもためたいのも事実
バイトを終わらせて、一般家庭より少し遅い夕食を食べる
「唯一の救いは今日は夜のバイトが入ってない事かな」
明日は、かなり早い時間からのがあるが・・・
明日起きれるかな・・・。
だが、どうやら俺はもう寝ているらしい、夢を見ているのだから
だってほらあの音は悪夢でしかないのだから
「ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン、ピ~ンピピピピピピピピピピピピピ・・・・・・」
「だ~~~、お前は何故ボタンを埋め込む!!」
「このボタンは高すぎるのじゃ!届かないのじゃ!!」
ジャンプ 押す ピ~ンポ~ン 着地 ジャンプ 押す ピ~ンポ~ン 着地 ジャンプ 埋まる ピ~ンピピピピ着地ピピピピピピピピピ・・・・・
という事らしい
ありえね~。
「というか何しに来たんだよ!!」
ボタンを直しながら聞く
するとその脇をすり抜け勝手に玄関を上がり
「家出した、おぬしのが大本の原因じゃから泊めるのじゃ」
そう宣言した
不幸な姫の、次の話の内容がまだ固まってなくて、時間も開きそうだったので、ある程度書き上がってたこの作品を間に挟みました。
ここで一言、この作品の主人公たちに言わせてください。
「お前たち勝手に動きすぎなんだよ!!」
一応、第1話ということでストーリー的なものが伝わるように書きたかったのですが、あの二人がそんなの無視して勝手に喋る、動く・・・・泣きたい。
それを何とか自重させて作品にしました。
この後どうなるかな・・・かなり心配。