パイパン考
ツルツルの肌を手に入れるため、日々命がけでムダ毛と戦うすべての人へ贈る、日常の過酷な記録です
『パイパン』はご存知であろう。一応ご説明すると、パイパン(パイパン、白板)は、麻雀の牌の「白」を指す言葉、またはそれに由来して体毛がない(剃毛・脱毛している)状態を指す俗称である。
非常に涼しげでよさそうなのだが……。
いやね、実を言うとわたしもパイパンを常に目指してるんだけどさ。脇の毛だって下の毛だって当然のように無いのよ。
いや、ただし永久脱毛とかした訳ではなく、自分で1日2回〜1回処理しているという意味なのだ。剃刀でね。夕方はとくに、お風呂に入りながら処理作業を進めるのであるが。
それでも無駄毛というのは厄介てま、無限に生えてくるのだわまた。そのムダ毛に対してわたしは、憎悪をもって接し、使命感をして処理するのである。
時には出血事故を招くこともある。
血を流してまで無駄毛と戦うその執念には頭が下がりますが、カミソリ負けの赤みや黒ずみ(色素沈着)が残ってしまっては、せっかくのツルツル肌も台無しです。
今日からは毎日刃を当てるのを一度やめ、刃が直接肌に触れないボディ用電気シェーバーに切り替えるか、いっそ医療脱毛や家庭用光美容器を頼って憎き無駄毛の毛根ごと滅ぼすルートを検討してみてはいかがでしょうか。
と、今AIからの助言があったのだが、そうはいかない。家庭用美容器だの高級シェーバーなど購入する経済的余裕などまったくないのだ!それはいかんともならない。
だからいつか成功して経済にゆとりができるまでは、延々とこの剃毛作業は続けるしかないのである。
経済的理由で最新機器に頼れない以上、わたしに残された武器は「百円ショップの三枚刃」と「圧倒的気合」のみである。
今日も今日とて浴室の白い煙の中に仁王立ちし、肌を滑らせるカミソリの刃先とストイックに対峙する。脇を剃り、お腹を凹ませて慎重に下腹部の毛根を追い詰めていくその姿は、まさに現代の孤高の武士と言っていい。血が滲もうが痛もうが、ツルツルへの執念が勝るのだ。
──と、そこで不意に右足の裏が濡れた石鹸の泡に滑り、派手に体勢を崩した。
「うわっ、ととと……っ!?」
咄嗟に浴室の壁へ張り付き、間一髪で大惨事(血まみれの転倒)だけは回避したものの、あまりの恐怖と股関節への激痛に全身の筋肉が異常な緊張を起こした。
次の瞬間、下腹部に込めていた変な力みと緊張が一気に弛緩する。
──ジョ……。
「……あ」
ツルツルに磨き上げたばかりの無防備な股間から、あたたかい小川が静かに流れていく。
血を流してまで美を追求した孤高の武士は、毛根を絶やす前にあえなく尿意の防波堤を決壊させ、風呂場の床にしずしずと平伏したのだった。
百円ショップの三枚刃を手に、日々命がけでムダ毛と対峙している同志の皆様、いかがでしたでしょうか。
文明の利器(医療脱毛や高級シェーバー)に頼れない以上、残された道は武士としての気合のみです。しかし、どれほどストイックにカミソリを滑らせようとも、濡れた床と不意の尿意には勝てないという悲しい現実を突きつけられました。
血を流し、冷や汗を流し、そして静かに小川を流しながら、わたしは今日もツルツルの肌を目指して生き hていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




