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食いつくし系騎士団分隊長に禁忌ポーション入り料理を食いつくされてしまった

作者: サトウミ
掲載日:2026/01/28

「はぁ〜。」


騎士団本部の、兵舎にある食堂。

私はそこで、自分の隊の席に座って、大きなため息をついていた。

王立学院を卒業して早1年。

卒業してすぐに騎士団に所属した私は、ある問題を抱えていた。


それは ───。


「お腹空いたぁ〜!」


食堂にいるのに、まともな食事にありつけないことだ。

連日、ちゃんとした食事を取ることができず、いい加減餓死しそうだ。


「ホント、ノーキンス隊長の食い意地には呆れるわよね」


私に同調したのは、同期のグレンダだった。

私と向かい合って座っている彼女も、ノーキンス隊長の犠牲者だ。


私達の所属する分隊の隊長。

それがノーキンス隊長だ。

ノーキンス隊長は、強くてユーモアがあって、普段はとても頼りになる上司だ。


だけど、そんな隊長にも欠点がある。

それが『ヒトの料理を勝手に食べる』というところだ。


ノーキンス隊長は、その実力で平民ながら騎士団の分隊長になれた凄腕の兵士だ。

座右の銘は『食える時に食え』。

だからか、隊長はいつも私達の食事を勝手に取ってくる。


兵舎の食堂は、半取り分け制だ。

主菜は厨房で一人一人に配給されるが、スープ・パン・サラダはおかわり自由。

にも関わらず、私達の料理を平気で奪ってくる。

しかも、おかわりのできない主菜を中心に狙ってくるからタチが悪い。


何度『私達の分を取るな』と注意しても『食べるのが遅いから手伝っているだけだ』と言って聞かない。

『ならせめてスープ等を自分でおかわりしろ』と言っても『おかわりだけじゃ足りない』と言い張って無視される。

噂じゃ、おかわりをしすぎて隊長だけおかわりを制限されているのだとか。


そして最も悪質なのが、隊長がターゲットにしているのは私達女性隊員だけというところだ。

私達がどれだけ早く食堂へ来ても、後を追うようにやってきて私達の料理を食いつくす。

逆に遅く来た場合は、先に自分の食事を終えて私達を待っている。


しかも私達の料理にはそこまで執着するくせに、男性隊員の料理には手出ししないのだ。

男性隊員の料理に手を出さない理由を聞いたところ『男は消費エネルギーが大きいから取ったら可哀想だろ』とのこと。

私達女性隊員だって、普段の訓練でエネルギーをかなり消費しているんですけど?

隊長のナチュラル女性蔑視は、いま思い出しても腹が立つ。


「グレンダは腹が立たないの? いつも隊長が横取りしてくるのに!」

「あそこまでいったら呆れてむしろ笑えるよ。それに私はコーデリアと違って、有り余るサラダをおかわりするだけでお腹を満たせるからね」

「ぬぬぬ。裏切り者め」


こんな日が続いたら空腹で発狂しそうだ。

というより、現時点で隊長に対する怒りで狂いそうになっている。

隊長に料理を奪われないようにする方法は、何かないだろうか?

私はこの日も、食べられた後のお皿を眺めながら、食いつくされない方法を考えていた。



◆◆◆



数日後。

私は強行手段に出ることにした。

本当はこんな手は使いたくなかったが仕方ない。

これならきっと、隊長もドン引きして手出ししないだろう。


私とグレンダはいつも通りに厨房で料理を受け取った後、自分達の隊の席へと向かった。

席には既にノーキンス隊長が座っていて、私達を出迎えている。


「よー! グレンダ、コーデリア! こっちだ!」


悪びれもなく私達に笑いかけて、自分の近くの席に座るように誘導してくる。

本当は隊長の側に座りたくない。

だけど、どうせ離れて座っても、向こうが席移動するだけなので無意味だ。

なので渋々、隊長の向かいの席へと移動した。


よし。

今がチャンスだ。


「……ぶえぇっくしょぃ!!」


私は座る直前で、手持ちのトレイに向かって大きなくしゃみをした。

いや、正確にはくしゃみをするフリなのだが、ここ2〜3日くしゃみの練習をしていたから、きっと隊長にはバレないだろう。


「うわぁ〜! 最悪! 折角のお昼ご飯が全部唾液まみれになっちゃった!」


私は少しオーバーなくらいに、がっかりしてみせる。

ここまですれば流石の隊長もドン引きして諦めるだろう。

ヒトの唾液入り料理を食べたがる人間なんて、いないはずだ。

これで今日はゆっくり昼食を食べることができる。

私は席に座り、パンを手に取ろうとした、その時だった。


「おーおー。コーデリア、お前体調大丈夫か?」


私を気にかけるのと同時に、隊長は私の皿から今日の主菜であるローストビーフを一瞬で掻っ攫った。


「ああぁぁ!!」

「体調悪いとローストビーフは重いだろ。俺が代わりに食ってやるよ」


そう言って、私が驚いて呆然としている間に、全部食いつくしてしまった。

そして「いいことをしてやった」と言わんばかりに笑顔でサムズアップする。


実際は入っていないとはいえ、私の唾液入り料理を一切躊躇することなく食べるなんて。

その食い意地の悪さに、ドン引きして鳥肌が立った。


「隊長、私のくしゃみがかかった料理ですよ? 汚いと思わないんですか?」

「ん? そうか? その料理、食べるのが嫌だったら、俺が代わりに全部食べてやるよ」


「いや、結構です! ってか勝手にヒトの料理食べないでください! ノーキンス隊長が食いつくすせいで、私、いつも訓練の時にヘロヘロで力が出ないんですよ?」

「ははは、大袈裟な奴だな。お前がヘロヘロなのは根性が足りないからだろ。お前と同じくらいしか食べてないグレンダは、普通に元気じゃねえか」


「グレンダはサラダだけでもお腹が膨れるから、耐えれているんです! 彼女と一緒にしないでください!」

「同じだろ? お前も女なんだから、肉ばっか食ってると太るぞ?」


「ノーキンス隊長に言われたくありません! 第一、食べ足りないんだったら隊長がサラダを食べればいいじゃないですか」

「馬鹿言え! あんなもんで腹が膨れるか! グレンダじゃあるまいし!」


「私だってグレンダじゃないから、サラダじゃお腹は膨れません!」

「隊長もコーデリアも、私のことを何だと思ってんのよ……」


嗚呼。

キレたら余計に疲れてお腹が空いてきた。

今日もノーキンス隊長に負けた私は、渋々残っているサラダでなんとか夕食まで凌いだ。



◆◆◆



数日後。


私は、ある方法を思いついた。

ノーキンス隊長が料理を奪えないくらい、私が強くなればいいのだ。

いつも料理を取ろうとする隊長の腕を掴もうとしても、隊長の動きが俊敏すぎて止められない。

あの腕を止められるくらい強くなって、食べている間は鉄壁のディフェンスをすればいいのだ。


この方法自体は、以前から何度か試していた。

問題は『どうやってノーキンス隊長より強くなるか?』だ。


強くなる方法を色々模索していたところ、先日、私は知人の宮廷魔術師から禁忌とされるポーションのレシピを教えてもらった。


そのポーション自体に身体能力を上げる効果はないものの、服用後3時間は身体能力が成長しやすくなるらしい。

ただしその代償として、服用後3日間は下腹部に激しい痛みが続くのだとか。

故に、リスクに対するリターンが少ないため、今では誰も飲まない禁忌とされるポーションとなったのだ。


それでも、ノーキンス隊長より強くなれる可能性があるならと、長期休暇の初日に試してみた。

するとなぜか、恐れていた下腹部の痛みは起こらなかった。

レシピを間違えたのか?

と思いきや、身体能力が成長しやすいという効果はちゃんと出たので、間違ってはいなかったのだろう。

なぜ痛みが出なかったのかは不明だが、これは僥倖だ。


ということで私は、今日から毎日禁忌ポーションを飲むことにした。

私は訓練前の水分補給で、例のポーションを取り出し、一気飲みする。


「うぇ〜。気持ち悪……」


このポーションの最大の欠点は、その口当たりだ。

硬水を飲んだ時のような、口にまとわりつく不快感が後に残る。

毎回これを飲むのは、ちょっとしんどい。

何か、いい方法はないだろうか?


……そうだ!

スープに混ぜればいいんだ!

そしたら少しは味を誤魔化せるし、ノーキンス隊長はスープをあまり狙わない。

これならポーションを美味しく摂取できるはず。

ただ、料理に混ぜても効果が落ちないだろうか?

まぁ、その辺は試してみるしかないか。


その後、訓練を終えてお昼休みになった。

私は、禁忌ポーションを持って、グレンダと一緒に食堂へ行く。


今日はラッキーなことに、食堂にはまだノーキンス隊長はいなかった。


しかも今日のメニューは豪華だ。

主菜はなんと、隊員人気No.1のドラゴンの希少部位ステーキ。

しかも『マンドラゴラとバジリスクエッグのサラダ』に『スライムと一角兎鞭のポトフ』と、サラダやスープでさえも気合いが入っている。


これは隊長が来る前に急いで食べないと!

私は料理を持って席に着くと、早速、主菜のドラゴンステーキを食べ始めた。


「あっ、いたいた! おーい、グレンダ、コーデリア!」


嘘!?

食べ始めたばかりなのに、もう来たの?

ノーキンス隊長は私達の席の向かいに座ると、目にも止まらぬ早さで料理を食べていく。


私も急いでドラゴンステーキを食べる。

あまり噛まずに飲み込んでいるからか、喉が痛い。

だけどそのおかげで、隊長に食べられる前にドラゴンステーキを平らげることができた。


これで後はゆっくり食べられる。

次はポトフを食べようと思い、ポトフに禁忌ポーションを入れた、その時。


「おっ。コーデリアはポトフ苦手か? 俺が食ってやるよ」

「あぁぁぁ!!」


しまった。

私がポトフにスプーンを入れる前に、隊長がお皿ごと持って一気飲みし始めた。

これで隊長がポーションの効果を得て強くなられたら、更に追いつけなくなる。

ポトフを食べられた怒りよりポーションを飲まれた焦りの方が、若干上回った。


「……ん? んんんん???」


するとノーキンス隊長の顔から、段々と血の気が引いていく。

額には大量の脂汗を掻き始めた。


「あのー、隊長?」

心配して話しかけると、隊長は背中を丸めた。


「痛たたたたた!! 痛い痛い痛い!!」

そして大きな声を出して悶え始めた。


「隊長、大丈夫ですか!?」

「どこが痛むのですか?」


周りの隊員が心配して、隊長の周りに集まる。

そして体格のいい男性隊員二人に担がれて、隊長は医務室へと運ばれていった。

下腹部を守るように丸まって痛がる隊長を見て、私は禁忌ポーションの副作用を思い出した。

まさか、今更あのポーションの副作用が現れるなんて。

もしかして料理に混ぜると副作用が出るのか?

色々気になることはあるものの、私とグレンダは昼食を終わりにして、後を追うように医務室へと向かった。


隊長は医務室へ運ばれた後、睡眠薬を飲んで眠りについた。

医務官に話を聞いたところ、隊長は激痛以外は異常がないらしい。

そのため、痛みが治まるまで睡眠薬で寝かせているのだとか。


私は医務官に、正直に禁忌ポーションの件を話した。

すると医務官は何かに納得したように大笑いしだした。


「あははは! なるほどね。君に禁忌ポーションの副作用が出ない理由も納得だよ」

「え? どうして私には出ないのですか?」


副作用が出るための条件があったのか。

偶然その条件を満たしていなかったのはラッキーだ。

今後もポーションを服用するためにも、ぜひ把握しておきたい。


「副作用の『下腹部の激痛』だけどね。あれ、正確に言えば()()なんだよ」

「アレ、ですか?」

「そう。男性にしかない、()()だよ」


……ということは、ノーキンス隊長は3日間アレの激痛に見舞われるのか。

想像しただけで、笑ってしまいそうになる。


「まぁ。ヒトの料理を勝手に食べる彼にとっては、いい薬になったんじゃないかな?」

「あははは。そうかもしれませんね」


そうだ、いいことを思いついた!

今後は料理を受け取ってすぐに、あのポーションを混ぜればいいんだ!


そのことに気づいた私は、次の食事から料理にポーションを混ぜるようにした。



◆◆◆



後日。

アレの激痛から解放されたノーキンス隊長は、性懲りもなく再び私達の料理を狙ってきた。

私が「その料理、禁忌ポーション入りですよ」と伝えると顔を青くさせながら、大人しく手を引いた。

隊長のその様子に、思わず吹き出しそうになる。


隊長はその後も「禁忌ポーションなんて入れるな!」と講義してきたが、一応使用許可は取っているため無視し続けた。

すると隊長は悔しそうにしながらも、最終的には諦めてくれた。



これでやっと、ゆっくり自分のペースで食事ができる。

ありがとう、禁忌ポーション!


最後までお読みいただきありがとうございました。

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