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エバンズの庭を踏みしめる

空が高い。明るい時間が日に日に短くなって、虫も動物たちもたくわえを始めている。庭の木の枝に小鳥がとまり、嘴でゆすられ落ちた実を下にいたリスが拾って駆けていく。

それをぼうっと視界に入れて座っている美しい娘のもとへ、夫が現れた。ああ、きょうも忘れられず、わたくしで遊びにきていただけた、と彼女は思った。

「ヘレネ。こんにちは」

「こんにちは」

「プレゼントがあります」

そう言って隣に座り、動きの鈍い彼女が視線を向けるのを待って小さな箱を開ける。

「どちらがいいですか」

差し出されたアクセサリーはふたつ。同じ形のイヤリングで、片方は深い赤、片方は青の石が使われている。ちょうど庭に咲いているジンニアの花と、抜けるような青空と似ていた。

「旦那様がお好きなほうで飾ってくださいませ」

なめらかながらどこか違和感を覚えさせる動きでかくんと見上げると、いいえ、と若当主は首を振った。

「あなたが選んでください。好きなほうを、好きと言って」

「わたくしが、選ぶ」

「そうです」

──そして、ゆくゆくは、いつか挙げる式のドレスもあなたに選んでほしい。ライナーはまだ言わなかった。

「あなたが何を選んでも、しても、否定しない。私は夫ですから」

風が花を、草を揺らす。空っぽではない瞳が交互にイヤリングを見る。家族ごっこをする男に手を引かれながら、人形の足が今、前へ小さく踏み出そうとしていた。

「……では、これを」

ほぼエピローグですが、これで完結です。読んでいただいてありがとうございました。(なんと、次におまけSSがあります。)

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