第1話 ガシャを引くぞ!
このチート王国では、建国の王が魔女見習いの少女を助けた事から、そのお礼に十二歳になった国民の誰しもがスキルをひとつ貰える事になっている。
しかしその方法が少し変わっていた。
なんでも、希望のスキルを紙に書き、丸いケースの中に紙を入れ、街の集会場などに備え付けられたガシャポンという機械に入れる。
後はガシャポンについたハンドルを回すだけ、中に入っているスキルのどれかが貰える寸法だ。
スキルは何でも叶うわけではなく、魔女の力を超えたスキルは無理、あまりにも危険なスキルや迷惑スキルもハズレとスタンプされ却下される。そうした無理なハズレとスタンプされたスキルがガシャポンから出た場合には救済策があり、その年のハズレスキルが決められていて、それが貰えることになっていた。
バーニーは12歳になったが、ハズレを引くのが怖くて半年ほど様子見していた。
昔よく遊んでくれた近所のおねえさんは二年前、運悪くハズレを引いてしまい、ハズレスキルの毎日タマゴを産むスキルを貰い、毎日せっせとタマゴを産んでいるそうだ。
だからバーニーはハズレスキルが怖かった。
しかしタマゴは高級食材、庶民は滅多に食べられない。それを毎日食べられるならハズレではない気もしなくはない、でも産むのはゴメンだとバーニーは思った。
親経由でおねえさんの産んだタマゴを貰ったバーニーは、何度も食べたことがあった。味は絶品、しかも滋養があり、病み上がりで困ってた時は直ぐに元気になってたいへん助かったのだった。
貰ったばかりの生のタマゴをバーニーは興味本位でくんくん嗅いでみたことがあった。かすかにアレの臭いがした。やっぱりタマゴはお尻からなんだと思いながら、おねえさんがタマゴを産んでいる姿を想像して、悪いとは思ったけれどバーニーは吹き出してしまった。
だから自分は絶対にハズレは引かないぞとバーニーは意気込み、縁起の良い日を選び集会場に出かけた。
『広場の石に刺さった勇者の剣を抜くスキル』を紙に書きガシャポンに入れバーニーはハンドルを回した。
中に入ってるカプセルは約五十個、自分の書いたスキル当たれ! バーニーは祈った。
しかし運命は無情。バーニーは『王様になるスキル』のガシャを引き当て、大きくハズレと赤いスタンプが上から押されてあった。
「王様になりたいとか無茶な事を書くバカはどこのどいつだよ!!」
バーニーは激怒した。けれど、もうどうしようもない。今年のハズレスキルのタマゴ料理人のスキルを貰いトボトボ家に帰り、おねえさんのタマゴをゆで卵に調理した。スキルのせいかつるんと剥きやすく、いつもより微妙に美味いなと思いながら食べて寝た。