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第五話 概念問題

轟音を立てて瓦礫が落下する。

土煙が巻き起こる。

煙が晴れると、天井には地上まで貫通する大きな穴が開いていた。

瓦礫の下。

「ううん?」

紅王が起き上がると、目の前に瓦礫があった。

「うわぁ!」

驚いたはずみで後ろの瓦礫に頭をぶつける。

「いてててて・・・」

隣にめろん、祐樹、アレクが倒れていることに気づく。

「みんな!?」

紅王の叫び声で三人が一度に起き上がる。

「ふう・・・間に合ったか・・・」

祐樹がため息をつく。

「ギリギリで【厳塞要徼】を起動したんだ。瓦礫に俺らがつぶされてないのもそのおかげ」

「良かった・・・死ぬかと思ったんだから、早く、ここから脱出しよう!」

めろんが汗を拭きながら言う。

「いや、それが、全員スキルパワー切れなんだよね・・・」

「・・・マジかよ」


瓦礫に押しつぶされているレルガム。

(最後の問題は解けたよ、師匠・・・)


2000年前。7番目のアバーハイト、レラクリスを複製元とする8番目(・・・)のアバーハイト、レルガムが誕生した。

アバーハイトは生まれてから10年あまりで大人の背丈になる。

寿命を全うした場合その年月は1000年を超える。

いわゆる長命種族だ。

7番目のアバーハイトであるレラクリスのスキルは【問題(クエスチョン)】。

その名の通り相手に大量の問題を出題する、その問題は【露防】の様な防御性質を持っており、

レラクリスの求める回答を答えられたらレラクリスに攻撃ができる。


レラクリスはレルガムと山奥のログハウスに住んでいた。

レラクリスは弟子のレルガムに一冊の本を手渡すと、

「この問題集を1日一問解いていけ。この問題を全て解けたらお前はようやく一人前だ」

と言った。

レルガムは本に書かれた問題を見た。

『1足す1は?』

「・・・こんな問題で本当に一人前になれるのですか?」

「この俺が保証する」

レルガムは本の問題を解きながら、戦闘の修行もした。

『女神の封印されている場所は?』

『村を兵糧攻めにする際どこを抑える?』

『スキルの開発者の名を答えよ』

実践的な問題もあった。

『人間の平均寿命は?』

『教会に設置されている鍵盤楽器の名前は?』

役に立たないような問題もあった。

修行を初めて10年。

レルガムの背丈はすっかり伸び、師であるレラクリスと遜色ない戦闘能力も身に着けていた。

そしてレルガムの耳に突然飛び込んできた師の訃報。

村を襲撃した際、護衛と冒険者たちに討たれたそうだ。

「そんな・・・」

手に持った問題集が滑り落ちた。


その2年後、レルガムは師匠の敵討ちを果たした。

「私は8番目のアバーハイト、レルガムだ」

この言葉を何度言い、その後何度殺しただろうか。

実戦経験を積むうちに、彼は気付いた。

人間を騙すという戦術が非常に有効だということ。

3番目のアバーハイトだと言い、相手に恐怖心を与えた。

この世界の人類は4000年前のアバーハイト、エルフ、ドワーフなど様々な種族を巻き込んだ『大戦争』の時より、明らかに戦いに消極的だとレラクリスは言った。

そして問題集も最後の1ページ。

『死とは何か?』

レルガムの手が止まった。

他にも難しい問題はあった。だがそれは本気で2日3日考えれば解けた。

レルガムは考えるためにいつも行く滝へ行った。

滝を眺める。

300年が過ぎた。一向に問題は解けない。


その後も首領の指示に従い数多の集落、都市を滅ぼした。

だがなぜか問題は解けない。

その1500年後。油断して緑樹の地下牢に封印された。

それからまた100年後。転移者四名により、問題の答えをレルガムは理解した。

「お前、問題解くのにずいぶん時間かかったな、ほら、こっちだ」

地獄の底から手招く師匠の姿がレルガムに見えた。


「スキルパワー補充完了っと・・・」

アレクが言う。

「【鉄拳】!」

瓦礫が破壊される。

「うわ~おっきい穴・・・」

「これから外に出れそうだな・・・その前に久悠草を探さないと・・・」

がれきのの上を歩くめろん。

「おっと・・・」

「気を付けろよ?足場が不安定なんだから・・・」

「うす」

レルガムが落としたスキルは【起死回生】。

強力な回復スキルだ。

そして、宝箱を発見した紅王。

「これじゃない!?」

ゆっくりと蓋を開けていくめろん。

「これ?」

めろんが取り出したにらのような植物。

「多分それだ!この穴から外に出て、研究家に会いに行こう!」

上の穴を指差すアレク。

穴はとてつもなく大きく、そして・・・深い。

どうやっても上がれる気がしない。

「こうやったらいいんじゃない?【閃光】」

アレクが足から光を噴射して穴の上にすっ飛んでいく。

(これってありなの・・・?)

「でもさ、これ私たちはどうするの?」

沈黙。一体いくらの時が流れただろうか。

「ごめん。それ考えてなかったわ」

「このばかったれ!」

結局、円状の穴の壁を祐樹の【鉄拳】で削って螺旋状に上がっていった。


亡霊の森、研究家宅・・・跡地。

小屋は見事にペシャンコになり、周りの草は焼け焦げている。地面は深くえぐれている。

「な、なんで?」

膝をつくめろん。

岩をける音がした。

振り向く四人。

そこに立っていた全身を黒に包んだ少年。

「僕、エルゼ、九壊山。結構、強い。これ、やったの、僕・・・【星爆】」

エルゼの手が光りだす。

「危ない!」

すごい爆発音。

四つん這いになるめろん。

横腹に大きな穴が開いている。

「き、【起死回生】」

傷がふさがる。

紅王、祐樹、アレクは血まみれで横たわっている。

「強力な破壊スキル、君が九壊山の上位だということは間違いなさそうだ」

「仲間、助けない?」

あどけない笑顔で問いかけるエルゼ。

「あぁ、それなら・・・」

爽やかに笑うめろん。

「もう助けた」

「【驚天動地】!」

背中に強烈なパンチを入れられ、大きく吹き飛ぶエルゼ。

「強い、君たち・・・上等」

次回予告 第六話 空間

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