第四話 首領と云う存在
トゥビオンが消滅した。
後に残ったスキル本。
「くじら、これは?」
めろんがサポートウォッチのくじらに呼びかけるが、反応がない。
「くじら!」
「へい!なんですか!?」
元気な声だな。
「このスキル本は何?」
「こ、このスキルは、【厳塞要徼】や!さ、すごい防御スキルやで!ある程度の攻撃は防いでくれんねん!せやけど、首領と九壊山の上位の攻撃を防ぐのは無理かも・・・」
「首領?」
「首領。アバーハイトの長や。アバーハイトの中でも最も強い。すべてのアバーハイトは彼のクローンや。インフェルノと呼ばれる謎の空間におる。確かその空間は九壊山の一人が作り出しとったんやっけ?」
くじらが自信ありげに言う。
「くじら、何で大阪弁なの?」
「え?そうで##$&%’’&’$TW#"W#!」
画面が砂嵐になった後、ぶつんと真っ暗になる。
「恐らく磁場の乱れでしょう。サポートウォッチは惑星の磁極と深く関係しています。この近くに磁場のゆがみの発生源があるはずです」
いるかが言う。
「なるほど・・・それと、これは?」
いるかにスキル本をかざすめろん。
「これは・・・【疾風迅雷】ですね。アレクさんに相性が良いと思われます。効果は・・・使ってからのお楽しみといきましょうか・・・」
「いるか~教えてよ~」
「ダメです!」
それから5日。緑樹の地下牢最下層に四人はたどり着いた。
扉には強力な結界が張られていた。
だがめろんがラルディ戦で取得していたスキルで破壊。
「やはりやって来たか・・・」
アバーハイトが呟く。部屋の扉が開かれる。
部屋は広く、神殿の様なつくりをしている。
「久悠草を渡して下さい!」
祐樹が叫ぶ。
「【岩操】」
四人の足元の地面に亀裂が入る。
巨大な化け物が体を現す。
とっさによける。
化け物は8本の足、6本の手、7つの顔。異形だ。
「全く君たちのせいでティータイムが台無しじゃないか・・・」
アバーハイトの傍にあった机にはティーカップが置いてある。
「私の名はレルガム。九壊山だ・・・しかし、私の楽しみを邪魔したからには、それ以上の楽しみを与えてくれるのだろうね、クソガキ共」
「あ?」
「私は3番目のアバーハイトだ。君らの様なへなちょこ冒険者が倒せるのかな?あ、それと、この化け物を倒さないと私に攻撃はできないよ・・・」
薄ら笑いを浮かべるレルガム。
「【閃光】!【閃光】!」
アレクが化け物の2本の手を破壊する。
化け物は耳をつんざく叫び声をあげ、四人に向かって突進してくる。
「【金剣】!」
金の剣が化け物の一つの顔の鼻に突き刺さる。
足を止める怪物。
「【憑依】!ゴリラ!」
化け物の眼球に見事にパンチをヒットさせる紅王。
「ナイス!」
「グルキャァァァァァァァァァァァァァ!」
化け物が叫び祐樹に突進する。
「【厳塞要徼】!」
祐樹が透明なバリアに覆われる。化け物はたじろぐ。
「【驚天動地】!」
紅王が化け物の4つの顔をまとめて吹き飛ばす。
バラバラになった顔は壁に激突し、土煙を上げる。
「【不可説不可説〈転〉】!」
化け物の胴体に大きな穴が開く。
「【疾風迅雷】!」
巨大な竜巻が巻き起こり、化け物の残り3つの首を吹き飛ばしたかと思うと、2つの巨大な稲妻が化け物をバラバラにした。
「これであんたに攻撃できるよな?」
「ふむ、そうだな・・・【岩操・八角】」
8つの大岩が飛んでくる。
「【厳塞要徼】!」
紅王がバリアを張る。
(しまった、九壊山上位の攻撃は防げないんだった!)
大岩はバリアを粉々にした。
「【鉄拳】!」
大岩をギリギリで打ち砕いた祐樹。
が、反動で壁にたたきつけられる。
「うっ・・・」
「祐樹!?」
アレクが叫ぶ。
「【岩操・蛇】!」
小さな岩がいくつも連なり蛇の形になる。
岩の蛇にくわえられるアレク。
「【閃光】!」
巨大な光が蛇の首を切り落とす。
「【岩操・腕・・・」
「【不可説不可説〈転〉】!」
レルガムの左腕が吹き飛ぶ。
「【鉄拳】!」
レルガムが壁にたたきつけられる。
「【驚天動地】!」
神殿の壁に大きなひびが入る。
崩れ、落ちてくる天井。
「【星花火】!」
紅王の手の中に小さな玉が出現し、紅王がそれを空中に投げる。
空中で爆発し、カラフルな花火になる。
爆発の衝撃波で落ちてきていた天井が少しだけ戻る。
「【驚天動地】!」
「【不可説不可説〈転〉】!」
レルガムが空中高くへ打ち上げられる。
(これが死というものか・・・)
「感謝する!君たちのおかげで最後の難問が理解できたよ!」
落ちてきた天井に押しつぶされるレルガム。
「危ない!」
四人の上に巨大な瓦礫が迫る。
次回予告 第五話 概念問題