第一話 久しぶりのダンジョン
聖都市バコロからだいぶ離れた熱帯雨林。
「研究家さんから貰った地図によるとこの辺りなんだけど・・・」
「無いぞ」
「うん」
何処にも無い。
四人はここに来るまで五日五晩歩いている。
「あのじいさんも信用できんのか?」
アレクが悪態をつく。
「あり得る。この訪ねてきた迷惑冒険者たちをどこか離れた森へ飛ばす・・・あり得る。あのじいさんならやりかねん」
祐樹が草をかき分けながら言う。
顎に垂れた汗を腕で拭う紅王。
「暑い・・・」
くじらが言う。
くじらは人化している。
「私ちょっと不満なんですよね!」
「何が」
「私が人化したときサラッと流されたんですよね!サラッと!はい!これが私の人化に関する文章です!」
スマートウォッチに戻って、画面に長文を表示するくじら。
「後で目を通しておこうか」
「だな」
30分後。
「あつ・・・」
祐樹がばったりと倒れる。
「祐樹!?」
ぱぁぁぁ
アレクが倒れた祐樹に手をかざす。
青白い光が祐樹を覆う。
「アレクが回復スキル持ってて良かったよ」
「でも、こんなに暑かったら危険だぞ」
太陽の日差しが照りつける。
「だな・・・でもちょっと休憩」
めろんが地面に腰を下ろす。
「痛い!?」
立ち上がるめろん。
「ここ、土じゃない」
言いながら土をどけるめろん。
岩が現れる。
「もしかして・・・」
四人全員で土をどけると、扉が現れた。
「よし。開けるよ」
紅王とめろん、アレクと祐樹で扉の両側を引っ張る。
ゴゴゴゴゴゴゴという音を立てて石造りの扉が開いた。
緑樹の地下牢。
悠久の時を生きるとされる種族、エルフたちによって建造された地下ダンジョン。
本来は最下層にいる危険なアバーハイトを封じ込めておくための施設だったが、後にダンジョンとして冒険者たちが立ち寄るようになった。
安全保証の瞬間移動ポーションも付与されるし、気軽に1日潰したい冒険者たちのたまり場にもなっている。
めろん達が必要な薬草、『久悠草』はアバーハイトのいる最下層に存在することが分かっている。
緑樹の地下牢。地下1階。
「うぅっ寒い・・・」
長い階段を降りると、等間隔で壁に松明が並べられているだけの単調な廊下が続く。
床は苔まみれの石造り。
壁は大理石で作られていたようだ。
「下に降りる階段を探さないと・・・おっと。危ない」
急に立ち止まるアレク。
「どうした?」
「見ろ」
床を指差すアレク。
長方形型に苔が生えていない場所がある。
「これはもしかしたら・・・」
落ちてあった小石を苔の生えていない箇所に投げるアレク。
小石を乗せた石が沈んだかと思うと、苔の生えていない箇所にピッタリはまる巨大な岩が落ちてきた。
「やっぱり罠だ・・・」
「ちょっと侮ってたかも」
黒煙の巨塔の時みたいに作者が省略すると思っていた。
「とにかく、階段探しの続きだ」
『サポートウォッチの人化に関するファイル』
サポートウォッチが人化する為にはスマートウォッチとは別の体が必要になります。
本体から別の体にデータを送信します。別の体の中で皮膚、毛髪、目、耳、鼻、口などを生成し、
本体でモデルを生成します。(注 このモデルはサポートウォッチの自我により変更可能)
別の体からパーツを排出すると同時に組み立てます。人化完了です。これを応用すれば様々な動物に変身することができます。
次回予告 第二話 ジングルベルジングルベル鈴が鳴る!