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亡国の姫の傭兵譚  作者: 如月 燐夜
3/14

姫と補佐


部隊に合流すると隊員達が出迎えてくれる。


「団長お帰りぃ~!そろそろ私を抱いてくれる気になったかしら?」


「はっは、俺が抱いてやるぜ?」


「辞めとけ!お前じゃ五分と掛からねえだろ?アッハッハッハ!」


「んだとォ!この野郎!」


「あんた達よそでやんな!」


「おーい!団長のご帰還だぞー!!」


「お貴族さまから報償金をたんまり貰って来たんでしょ?!酒が飲みてえ!副長、一緒に飲みましょうぜッ!」


浅ましく下品な連中だが、アンナは不思議とこのようなやり取りが嫌いではなかった。


傭兵団が国、自分が王で隊長格は貴族、団員は民、と考えるとそれは自然なほどしっくり来る考え方であった。


だからだろうか、アンナは擦れ違う団員達に手を上げ応える。




アンナは部隊との行動中、絶対に鎧を脱ぐことはない。


女とバレて嘗められるのを嫌った為だ。


血の気が多く、性に忠実な兵士達の欲望をアンナから逸らす意味合いもあった。


それらには大叔父であるガンズの口添えもあり、傭兵団の者の殆どは団長であるアンナの素顔を知らない。


知っているのは隊長格の幹部とその副官のみである。




アンナは団を結成して二年の殆どを全身鎧姿で過ごしてきた。


時折街の宿に泊まるが宿を貸し切るためヒラの団員はその事も知らないのだ。


鎧を脱ぎ、素顔になるが誰も気づかずその容姿から団長の女だろうと誰も声を掛けなかった。


傭兵団にはガンズの部下にはアンナの世話役として多くの女性が存在している。


その中から選りすぐりの美人を影武者として五人ほど選んだ。


その全員がアンナと同じちぐはぐな鎧を着ており背丈などもほぼ均一なので一般の団員には区別すら付かない。


影武者も一般傭兵からは団長の女と認識されている。


その中の誰かなのだろうと団員達の間では囁かれていた。


今となっては団も大きくなり二百を率いており、娼婦や商人なども着いて来るが結成当初はたった十人だけの弱小傭兵団だったのだ。


それも二年もすれば、各国の騎士や盗賊団の長、暗殺者集団など不思議と人が集まり、日々を面白おかしく過ごしたい奇特な連中が増え続けている。


感慨深いものだ、とスターリアは物思いに耽った。


「こら、お前達!早々にこの場を離れるぞ!此処から東に向かい途中で野宿する!さっさと支度をせい!」


その場に居合わせた幹部の一人がガンズを発見し、隊員たちの緩衝材として割って入った。


くすんだ金髪に無精髭面だが妙に高貴な香りを漂わせる…そんな男だ。


「副長殿、これは少し手厳しいですなぁ…おい、お前ら分かってるな?当分は酒抜きだ。」


「「「へい!」」」


「テルノ、感謝する。」


「いえ、あいつらは金が入ると分かると直ぐに気を抜くんで発破を掛けてやらねえと締まらねえんですわ。団長、いよいよ帝国戦ですかい?」


「あぁ、間もなくだ。メンダーの東にあるバルナートで傭兵の募集をしていると先駆けのアッシュの手勢から報告があった。募集人数も期限もギリギリだが、一時的に仕官し帝国の地を奪ってやろう。」


「ハハッ、そいつぁ良いですなぁ!気合いが入りますぜ!団長、俺が団に入った時の約束覚えてますかい?」


「うん。西帝国と戦う時には元テルノ盗賊団に先陣を、だったね。あの悪名高き〈首切りテルノ〉が今じゃ私の副官紛いだからね。人生は予測の付かない事ばかりだよ。ふふ…」


「ヘヘッ首切りテルノねぇ…懐かしすぎて涙が出まさぁ。それが今じゃ亡国の姫様の騎士契約なんざ…おっと、口が滑りましたな。」


「大丈夫、誰も居ないよ?」


お互い軽口を叩きながらもアンナはテルノに金貨袋の三分の一を別の袋に移し手渡す。


テルノに預けたのは今回出征した者達の給料だ。


残った分は部隊の維持費や武具の管理などに充てられる。


アンナ個人で使えるのは微々たる物だ。


「姫…素が出てますぞ?」


「はっ!…気にするな、誰も聞いてはいない。皆の準備が整ったみたいだ。さぁ、行こうか。」


「おうよ!」


スターリアは影武者の一人に愛馬を預け移動するのだった。


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