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亡国の姫の傭兵譚  作者: 如月 燐夜
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アッシュの報告

残ったのはアッシュのみである。アンナは何か報告が有るのだと察すると改造馬車である〈本陣〉に移動した。


中ではウミネコの部隊が書類仕事をしていたが、察しの良い彼女はお茶を用意し、場所を開けてくれた。


本当に気の利く代えがたい有能な人物である。


本陣には三部屋あり、主に会議を行う大部屋副官の控え室である小部屋、残りは給仕を行う給湯室がある。



「団長、(・・)の報告だよ。敵…西帝国の奴らは南東に陣取ってる。中間の丘を取って戦況を有利に進めたいみたいだ。そこに標的の一人…ボッシュ・スチュワートソンがいる。一応奇襲を掛けたけど、守りが固すぎて突破出来なかった…怪我人は無しだよ?」


アッシュはアンナが怪我人の報告を怠ると不機嫌になるのは心得ていた。


アンナが眉をしかめる。

その名には聞き覚えがあった。


ボッシュ・スチュワートソン。

西帝国貴族で階級は伯爵。

当時、祖国であるスターシャ神聖王国との外交官であった男。


祖国滅亡の何かしらに関わっているこの男は情報を持っている可能性が極めて高い。

アンナの標的の一人だった。


「そうか…危険な橋を渡らせてすまない。その丘、気になるな…引き続き調査に当たってくれないか?」


「分かった、別の部隊員を使って調べさせる。良いんだよ、団長。これが僕の仕事だからさ。」


アッシュは仕方ないな、と言った表情でアンナを見つめる。


目が合うと頬を軽く赤らめながらも頬を掻いて誤魔化した。


「しかしーー」


「あぁ~、大丈夫だって!さっきも言ったけどこれが僕の仕事だ。それに僕は此処が気に入っている。あの肥溜まりみたいな場所から僕を引き上げてくれた団長の役に立てる。僕はそれで良いんだ!」


過酷な環境に居たアッシュを救い上げたのはアンナだった。団に入りその恩を返そうとアッシュは直向きに頑張った。


そんなアッシュをアンナは評価しているし対価も十二分に渡そうとしているが、アッシュは頑なに受け取ろうとはしなかった。


「だが労働には対価が必要だ。金はいらないんだろう?私に出来ることなら何でも言ってくれ。」


「じゃ…じゃあ、団長の髪を三本くらい貰えないか?それを編んで腕に巻いておきたいんだ。おまじないとかお守りみたいなものでバルナートで流行ってるらしくて…」


思い人のいる兵士の間で恋を叶える…という本来の意図は言い出せなかったが、アッシュは目を瞑り手を出す。


「髪か?構わんが…」


訝しがりながらも兜を外し、髪を三本抜き手渡すアンナ。


変なものを欲しがる人だ、と思いつつも快く渡した。


隣の部屋に居た出歯亀である、バルナートに長く駐在していたウミネコは、きゃあきゃあと騒ぎたい声を押さえながらニヤニヤと副官と盛り上がっていたことをアンナは知らない。


ウミネコ「アッシュ行け!行けぇー!思いの丈をぶつけるのよ!そこッ!押し倒せッ!」


副官「隊長!流石に押し倒すのはまずいですよ…けど、またアッシュ君がへたれてます!賭けは私の勝ちですね!」


ウミネコ「うう~ん、どうしてアッシュは行かないのよ…貴方の気持ちはその程度なの?仕方ない…一時間休憩よ」


副官「やったー!」


みたいなやり取りが小部屋で行われてたとかいないとか…

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