取り巻きBと出会いましたわ。なんか最初からめちゃくちゃ懐かれていますわ。
「ミシュ、ルーセル。今日なのだけど、急だけどお母様のお友達が子供を連れて遊びに来ることになったの。一緒に遊んであげてくれるかしら?」
「もちろんですわ、お母様」
「仲良く出来るよう頑張ります」
今日は急な来客が決まったらしい。お母様は機嫌が良さそうなので、よほど仲の良かったお友達なのだろう。
「でも、お母様。お母様のお友達ってどんな方ですの?」
「うふふ。子爵夫人で、とても心優しい人よ。きっとお子さんも優しい子のはずだわ」
ああ、つまりお母様の取り巻きだった女性ということか…まあ、お母様はお人好しだから〝取り巻き〟だなんて思っていないだろうけど。
「最近お互い忙しくて会えていなかったから、懐かしいわ。とっても楽しみ!」
「お母様、せっかくのお友達との再会ですもの。楽しまれてくださいね」
「もちろんよ。ミシュは本当にいい子ね」
お母様に頭を優しく撫でられる。ふふん。親の前ではいい子にするのも悪役令嬢らしくていいでしょう?
ということで、来客を出迎える準備をすることになった。
「お初にお目にかかります!オリアーヌ・ノエル・ペトロニーユです!よろしくお願いします!」
ということで私は今日、取り巻きBとの出会いを果たしましたわ。まさか、お母様の取り巻きの子供が将来の私の取り巻きBだったとは…運命というのは侮れませんわね。
さて、子爵令嬢である取り巻きB。黒髪に紫の瞳を持つ子豚さん。彼女は瞳をキラキラさせてこちらを窺う。というのも、彼女は美しいモノが好き。私は美少女ですから、彼女のセンサーに引っかかったのですわ。
「お初にお目にかかります。ミシュリーヌ・マチルド・プロスペールですわ」
「お初にお目にかかります、ルーセル・ロジェ・プロスペールです。姉共々よろしくお願いします」
「わあ…!ご姉弟揃ってとてもお美しい…!」
「え、そ、そうでしょうか」
「はい、ルーセル様!ああでも、私なんかに敬語なんて使わないでください!」
ちなみにこの取り巻きB、完全な小者だ。虎の威を借る狐である。なんというか、〝美しいモノこそ絶対の正義〟だと考えている節がある。そして、〝誰よりも美しい〟ミシュリーヌに取り入ったことで自分も偉いのだと錯覚していた勘違いキャラだった。
しかし、美しいモノへの〝信仰〟にも近い想いは本物だ。自らが子豚のような見た目のせいで余計にそれを拗らせているのもあるが、ともかくミシュリーヌを崇拝していた。
「…えっと。なんというか、うん。ありがとう。でもそんなかしこまらなくていいんだよ」
ルーセルは取り巻きBを理解していないのでそんなトンチンカンなことを言う。違う、こいつは私達の見た目の美しさに惹かれているだけですわ。
「いいえ!ルーセル様はとてもお美しい方ですもの!蔑ろには出来ませんわ!」
「ええ…?」
出会って早々にここまで懐いてくる取り巻きBに軽くドン引きしているルーセル。しかし、今はそれどころではない。
「ところで、オリアーヌ様。単刀直入にお伺いしてもよろしいかしら」
「なんでしょうか、ミシュリーヌ様」
「ミシュでいいですわ。お友達になったんですもの」
「お友達…!ありがとうございます、ミシュ様!」
私は完璧な悪役令嬢。そんな私の取り巻きには、ただの虎の威を借る狐は相応しくありませんわ。自分の容姿に自信がないと、そんな下ばかり向いている子を取り巻きにする気はありませんわ。
そして顔をクシャッとさせて笑うオリアーヌは、正直痩せればとても可愛いと思うのですわ。だから。
「そんな大切なお友達を、私の手で磨かせてくださいませんこと?」
「え?」
「幸い、私のお小遣いは無駄に多いですし。お金なら幾らでもかけられますわ」
「どういうことですか?」
「私と共に、ダイエット致しませんこと?」
そう言ってオリアーヌをスッと見つめる。
「ああ、気を悪くされたらごめんなさい。でも、オリアーヌ様はとても可愛らしい方。痩せればもっと可愛らしくなること間違い無しですわ!烏の濡れ羽色の髪も、紫の瞳もきっともっと輝きますわ。どうかしら?」
私がそう言って手を差し伸べると、オリアーヌはガシッとその手を取った。
「よろしくお願いします、ミシュ様!!!」
ということで、私のプロデュースで取り巻きBのダイエット大作戦が決行されることになった。