難民支援団体
僕はノエル。平民で姓はない。難民支援団体の団長の息子で、今年で十六歳。
今日は僕たちの支援する難民達がジョフロワ王国にようやくにたどり着いた。国王陛下の意向により、それぞれ受け入れてくれる領地に向かう。プロスペール領の姫君のと王太子殿下の新しく開拓した領地でも難民を受け入れてくれるらしい。これのおかげでなんとか全員お家を持てた。プロスペール領の姫君と王太子殿下には感謝しかない。
「土地持ちになれるなんて…」
「自分達の畑を持てるなんて…」
難民達はあまりの厚遇に唖然とする。我に帰ると自分達を受け入れてくれた国や国王陛下への、プロスペール公爵家への、そしてこの「村」を作ったというミシュリーヌ姫君と王太子殿下への感謝を叫び出した。感謝の言葉が溢れんばかりに広がる。ある種の狂信的な熱狂だ。
「すご…ここまでくると怖いな」
「だって、自分達の家と土地をいきなりもらえたんだもの」
難民支援のボランティア団体、ノエルベール。その団長である父ベリルは、養子である僕に優しく語りかける。
「普通はお金を払って買わなきゃいけないだろう?お家も、土地もね。でも、このジョフロワ王国は国を挙げて無償での支援に乗り出してくれた。国にはもちろん、国王陛下、領主様、そして開拓を成し遂げ難民を受け入れる準備をしてくれたミシュリーヌ姫君と王太子殿下には感謝しなくちゃいけないんだ」
「まあそれはわかるけどさあ」
「僕達支援団体も感謝しなくちゃいけないよ。国は僕達の活動を金銭的に支援して、国王陛下は激励の言葉をくださる。そしてこんな風に手を貸してくださる貴族も少なからずいる。やはり世界は優しさに溢れているね」
「そもそも難民が出ない世界になって欲しいんだけどね、僕は」
僕の言葉に父はにっこりと笑う。僕の言葉が嬉しかったらしい。
そんな僕達二人に、難民として来た少年の一人が近付いた。
「ベリルさん、ノエルさん」
「うん、どうしたの?」
「ここまで連れて来てくれてありがとう。難民申請の仕方も教えてくれて、食べ物もくれた。みんな今は熱狂的になってるけど、みんなもベリルさんやノエルさん、他のスタッフさん達にも感謝してるんだ」
「ふふ、うん。わかってるよ」
「どういたしまして」
にっこり微笑む父。僕も少年に微笑む。少年は、二人に手紙を渡した。
「これ、ベリルさんとノエルさんへの感謝のお手紙です。その…国王陛下と領主様、ミシュリーヌ様と王太子殿下の分も書いて。王国の文字はまだ慣れないから下手だけど…読んでくれる?」
「うん、もちろん。国王陛下と王太子殿下、領主様とミシュリーヌ様にも絶対届けるよ」
「ありがとう…!」
そして難民達と別れの挨拶をした僕と父は、家に帰ると手紙を読んだ。僕はこっそりと喜び、父は感動のあまり泣いていた。




