不法移民
「おはようございます、ミシュお嬢様」
「おはよう、リゼット」
女神様と話した朝、私は早速行動に移ることにしましたわ。
「ネイ、相談がありますの」
「なんですか、お嬢様?」
「孤島の貴族学園にいますと、どうしても国内の状況が伝わってきませんわ。ですが私は将来の王太子妃。なにか国内に問題がないか知りたいんですの。調べておいてくださいます?」
「…お嬢様、ご立派です!お嬢様が今日、寮から帰ってくるまでに調べておきますね!」
「ありがとう、ネイ。頼りにしていますわ」
ということで、ネイに調べ物を頼み私はとりあえず学業に専念しましたわ。
「お嬢様、おかえりなさいませ」
「ただいま、ネイ。なにか国内に問題はありまして?」
「…それなんですが、最近国内に無法者が乗り込んできたみたいです」
「無法者?」
「遠くの貧しい地から移ってきた不法移民です。正規の手続きを踏まないで乗り込んできた彼らは、住む場所がないからと、スラム街を占拠しようとしているようです。せっかくお嬢様の更生施設計画でスラム街の治安が良くなっていたのに…」
私は腕を組み考える。
「そうですの。それは問題ですわ」
「浄化作戦も検討されていますが、他国から批判を受ける可能性が高くて国王陛下も踏み切れないようで…」
「…うーん」
私は頭を必死に捻る。
「お嬢様?」
「我が領内では、豊かだからこそ農民が農業以外のもっと賃金の高いお仕事を求めて少しずつ社会問題になっているはずでしたわよね」
「そういえばそうですね」
「元農民たちが出て行った空き家と耕作放棄地が荒れ果てているのが問題なのですわよね?」
「…それがなにか?」
うん!我ながら良い案ですわ!
「空き家を貸してあげる代わりに耕作放棄地で誰もやりたがらない農業を担ってもらう。もちろん色々な正規の手続きをしてからになりますけれど。それなら追い出さず共存して、浄化作戦を決行せずに済みますわ」
リゼットとネルとネイが目を見開く。
「相手は不法移民ですよ、ミシュお嬢様?」
「だから、国の許可もとって色々な正規の手続きをしてからにするわ。どうかしら?」
「…いいと思います!さすがはミシュお嬢様!」
「よし…王妃殿下と掛け合ってみますわ!休暇申請と孤島から出る外出許可を申請してきてくださいませ!」
「はい、お嬢様!」
ということで、立派な王太子妃としての第一歩を踏み出しましたわ!今度こそ、この目標は達成して見せますわ!




