夢のお告げ
シルヴェストルとちゃんと向き合おうと決めた夜、なんだかんだでシルヴェストルのことをちゃっかり好きになり始めている自分に気づいてベッドの上でジタバタと暴れる。
あれだけ完璧な悪役令嬢を目指していたのにこのザマ!恥ずかしいですわ!
とはいえ悪役令嬢として断罪される可能性が無くなった今、婚約者であるシルヴェストルとの仲を深めるのは良いこと。ちょっともう羞恥心でなんとかなりそうなのはぐっと飲み込んで、シルヴェストルと良い仲を維持できるよう頑張りますわ。
「それにしても、新しい夢はどうしようかしら?」
今後重要なのはそこですわ。夢と目標がなければつまらないですものね。
「とりあえず、今日は寝て明日から考えますわ」
ということで、私は眠りにつきましたわ。
目を覚ますと、私は一面真っ白な空間にいましたわ。
「ここは…?夢かしら?」
「ええ、夢の世界よ」
「誰?」
振り向けば金の波打つ髪に、青い瞳の美人なお姉さん。白いドレスがよく似合う。そしてどこかで見たことがある容姿。
「…この世界の女神様」
「あら、よく気づいたわね。そう。私がこの世界の神よ」
「やっぱり」
でも、私になんの御用かしら?神様とコンタクトを取るなんて、正直私としてはドキドキと心臓がうるさいのですけれど。
「まずは、私のわがままで貴女を巻き込んだことを謝罪するわ」
「え?」
「貴女は本来、あの事故の後また再びあの世界の輪廻に乗るはずだったの。でも私、ちょうどお気に入りの乙女ゲームの設定を真似てこの世界を作っていて。貴女を記憶のあるまま悪役令嬢にしたら面白そうだと思って、攫っちゃった」
「え?え?」
乙女ゲームの設定を真似て作った世界?
「乙女ゲームの世界そのものではありませんの?」
「そうなの」
通りで知らない設定やキャラクターが時々出てくるわけですわ!乙女ゲームの世界そのものだと思っていたのに、まさか似せて作った別の世界だなんて!
「…私、悪役令嬢になろうとして結果みんなを振り回してしまいましたわ」
今までは心のどこかで、所詮乙女ゲームの世界だからと高を括っていましたわ。けれど、それが間違いだと今思い知らされましたわ。
「本当にごめんなさいね。それは貴女ではなく私の責任よ」
「女神様…」
「でも、おかげでとても良い物語を見られたわ。私達神の娯楽なんて、自分の作った世界を物語として楽しむことくらい。そういう意味で、貴女には本当に感謝しているの」
女神様は私の両手を包んでそう語りかけてくる。
「だからこそ、これからは貴女には〝悪役令嬢〟という縛りは忘れて、自分の好きなように物語を紡いでいって欲しいの。きっとその方が素敵な物語になりそうだし」
「…わかりましたわ。私のわがままで振り回したみんなに、こっそりと贖罪しつつこれからは周りの人を幸せに出来る人間になりますわ」
「まあ、それは素敵な目標ね。良い物語になりそうだわ」
私は女神様に誓う。
「私、次の夢を決めましたわ」
「なにかしら」
「立派な王太子妃になって、あまねく国民たちを幸せにしますわ」
「良い夢だわ。良い物語を期待しているからね」
女神様に優しく抱きしめられる。
「私のわがままで巻き込んで、本当にごめんなさい。貴女の幸せも、願っているわ」
「はい」
そして目が覚めた。ちょうどいつも起きる時間。
「…シルヴェストルとは良い仲になれそうですし、立派な王太子妃になるという夢も周りを幸せにするという目標も見つけましたわ。あとは頑張るのみ!」
ということで、今日からまた気合を入れ直して頑張りますわ!




