僕の婚約
ルーセル・ロジェ・プロスペール公爵令息。それが僕。僕は義姉上が大好きだ。
義姉上はすごい。天才だ。幼い頃から、魔術学以外は貴族学園卒業生レベルと判断され勉強は必要ないと言われていた。稀代の天才だと褒めちぎられていた義姉上を誇らしく思い、自分もそんな義姉上に恥じない義弟になろうと努力した日々が懐かしい。
義姉上は僕の自慢だ。けれど、僕もそろそろ姉離れするべきだと思う。何故そう思ったかといえば、最近第二王子殿下と従兄上が姉上に告白して玉砕したことを知ったからだ。いや、二人からも義姉上からもはっきりそうだと聞いたわけではないけれど、なんとなく二人の義姉上への態度でわかった。
僕は正直、義姉上に恋心を抱いている。僕と義姉上の血の繋がりは薄く、けれど決して許される恋ではない。第二王子殿下と従兄上の二人は、告白することで白黒付けて、義姉上への想いを卒業した。けれど僕にはそれも許されない。義理とはいえ、姉弟なのだから。もちろん第二王子殿下は将来の義弟として、従兄上は従兄として今までと変わらず義姉上と仲良くしてはいるけれど、依存とか執着とかは手放して健全な関係になっている。僕もそろそろ義姉上への執着じみた感情は手放したい。
ということで、従兄上に倣って婚約者を両親に決めてもらった。恋をすれば、自然と姉離れも出来るだろうと踏んだ。
そして両親から紹介された僕の婚約者候補は…まさかのナディアだった。
「ルーセル様。これからよろしくお願い申し上げます」
「うん。よろしく」
正直びっくりした。まさかこんな身近な人が選ばれるとは。でも、ずっと一緒にいたナディアなら気心が知れているし、ナディアの良いところもたくさん知っているので、悪くないかも。
「…ありがとうございます、ルーセル様」
「え?」
「これでミシュ様の義妹になれますわ」
「あはは。なにそれ。僕より義姉上ってこと?」
「ルーセル様だって私よりミシュ様が大事でしょう?お互い様ですわ」
「あはは。たしかに、僕もまだまだ姉離れは出来そうにないかもしれない。僕の義姉上至上主義を理解してくれる人が婚約者になっちゃうからね」
「そういう婚約も有りだと思いますわ」
「かなぁ?」
僕の姉離れはまだまだ先になりそうかもしれない。




