お従兄様の想い
第二王子殿下に告白された旧校舎。お従兄様にここに連れて来られたけれど、一体なんの話かしら。
お従兄様は緊張した面持ちだったけれど、覚悟を決めた凛々しい表情を私に向けますわ。
「まずは付き合ってくれてありがとう、ミシュ」
「いいんですのよ、お従兄様のためですもの!それで、お話ってなにかしら?」
「…えっと。…好きだよ、ミシュ」
短く伝えられた言葉。けれど、真剣な想いはすごく伝わってきた。射抜くような視線に釘付けになる。
悪役令嬢になりきれなかった私に、好意を寄せてくださったお従兄様。ずっとそばで見守ってきてくださった大事な方に、今私はきちんと向き合うべきなんだろう。
「お従兄様、ありがとうございます。そのお気持ち、とっても嬉しいですわ」
「…うん」
「けど、私はお従兄様のこと、本当のお兄様のように思っていますの。お従兄様のことは大好きだけど、好きの種類が違いますわ。だから…ごめんなさい。でも、本当にありがとうございます」
お従兄様は、私の言葉に静かに頷いてくれた。
「私の方こそ、こんな優しい気持ちを僕に教えてくれて本当にありがとう。ミシュを愛する気持ちは、とても大切で幸せなものだった。…私はもう行くね」
「はい、お従兄様」
「これからも兄のような存在として、ずっと慕ってくれたら嬉しいな」
「もちろんですわ」
「それじゃあ」
お従兄様は足早に去って行きましたわ。けれど、お従兄様ならきっと、明日からはまた何もなかったみたいに私と仲良くしてくれると思いますわ。そんなお従兄様だから、私は大好きなのですわ。そんな優しいお従兄様を支えてくださる方がそばにいてほしいと、今は切実に願いますわ。




