僕の可愛い従妹
トゥーサン・ユルバン・ヴァレリアン侯爵令息。それが私。ヴァレリアン侯爵家の長男である私は、事もあろうにこのジョフロワ王国の第一王子殿下の婚約者である、従妹のミシュリーヌ・マチルド・プロスペール公爵令嬢に恋をしている。
ミシュは優しい。公爵令嬢でありながら、誰にでも手を差し伸べる。スラム街の様子を視察に行ったり、そこで見つけた子供を使用人として雇ってみたり。ミシュの案で王太子殿下が国王陛下に奏上したスラム街の更生施設の運営は、上手く機能していてスラム街の治安もかなり良くなった。
王太子殿下はミシュの婚約者で。ミシュは公爵令嬢であり僕の従妹で。私には手が届くはずがないと分かっていながら、それでもどうしても諦めきれないこの想いを、私は宙ぶらりんのまま放置してきた。けれど、最近やたらと両親がお見合いを勧めてくる。それはそうだ。早い所決めないとどんどん良いご令嬢は婚約者を決めてしまうだろうから。
だから、せめて。正式に婚約者が決まる前に、ミシュにこの想いを伝えたい。そして、きちんと諦めがついてから、婚約者となる人と誠実に向き合いたい。…僕は、覚悟を決めた。
「可愛いミシュ。ちょっとだけいいかな。話があるんだ」
「もちろんいいですわよ、お従兄様」
「今からちょっと、旧校舎に行こう」
「わかりましたわ」
…さあ、想いを伝えよう。




