泣く彼を見つけた
私ことソランジュは今日もせっせとアップルパイを焼いて、お嬢様に届けようとカゴに入れてお嬢様を探していた。
そんな時、第二王子殿下がダッシュで校舎の屋上に向かって駆け上がるのが見えた。ただならぬ様子に、放っておけなくて追いかける。
第二王子殿下は屋上に上がると、フェンスに寄りかかり、誰もいないそこで静かにぼろぼろと涙を流した。私はそっとしておくべきか迷ったけど、第二王子殿下の元へ駆け寄り第二王子殿下を抱きしめた。
「!?聖女様…!」
「第二王子殿下。あの、なにがあったかは知らないですけど、そんな風に泣かないでください。泣く時は、大声を上げて泣いた方がすっきりするんです。私が抱きしめていてあげますから、何も気にせず泣いていいんですよ」
「…お人好しだね」
「えへへ。そうですか?」
言いながら頭を撫でる。
「よしよし」
第二王子殿下を抱きしめたまま、背中をポンポンすると、第二王子殿下は大声を上げて泣き出した。
「…あー、泣き過ぎて頭痛い」
「第二王子殿下、大丈夫ですか…?あの、おしぼりあるのでこれで顔を拭いてください」
「ありがと」
このおしぼりはお嬢様にパンを渡す時に、食べる前におしぼりを渡した方がいいかなと思って用意しておいたんだけど、持ってきて本当によかった。
第二王子殿下は顔を拭うとカゴに入れたアップルパイを見つけた。
「あ、それミシュにあげるの?ミシュ絶対喜ぶね。美味そー」
さっきまで泣いていたと思えないほどカラッと笑う第二王子殿下。
「あ、うん。そのつもりだったんですけど、よかったら第二王子殿下が食べてくれませんか?」
「え?いいの?ありがとう」
迷いなくアップルパイを食べる第二王子殿下。
「美味しい!…ミシュいつもこんなの食べてるの?いいなぁ。僕も毎日食いたい」
「えへへ。よかったら第二王子殿下にもまた作って来ますか?」
「え、本気にしていい?」
「はい、もちろんです」
「やったー!嬉しいよ」
元気が出たようでなによりです。
「…あのさ、僕、今日ミシュに告白したんだ」
「…え!?」
「で、見事に玉砕」
「あ…そうなんですね…」
コメントしづらい。
「うん。でね、さっき聖女様のおかげでわんわん泣いて、大分すっきりしてさ。さすがに綺麗さっぱり忘れるのは無理なんだけど、ああ振られたんだなって納得はして」
「はい…」
「で、そうなると、いい加減僕も婚約者を決めないといけないわけなんだけど」
「…うん?」
なんで私にそんな話を?
「…僕の婚約者になってくれない?」
「…えー!?」
「今すぐにじゃなくてもいい。良い返事が聞けたら嬉しい」
「え?なんで?なんで私なんですか?」
混乱する私に第二王子殿下は笑う。
「…その。こんなにみっともない姿他の人には見せられないし。なんか聖女様はすごく安心するし。…婚約者に選ぶなら、聖女様かなって今思って。けど、普通に断ってくれてもいいよ。よく考えて…その上で、僕を選んでくれたら嬉しい」
「…えっと…わかりました。真剣に考えてみます」
「うん…返事、待ってるから」
「…はい」
「それと」
「なんですか?」
「僕たちって、お互いにお互いの一番がミシュだってわかってるから、その辺も良いかなって」
「それはものすごくよくわかります」
「でしょう?」
ということで、私は第二王子殿下の婚約者候補になりました。真剣に考えなくちゃいけません。




