主人公をイジメて見ようと思ったのですけれど、イジメってしたことないからなにすればいいのかしら?
学園に入学してからしばらくが経ち、いい加減そろそろきっかけなど待たずにソランジュを虐め始めなければ悪役令嬢として失格だと気付いた今日この頃ですわ。
さて、どうしようかしら。
「そうですわね…花瓶に花を生けてあげますわ!」
嫌がらせの代名詞といえば机の上に花瓶に花ですものね!
ということで、私は今日は早めに寮を出てソランジュより先に教室に入って、ソランジュの机に花瓶に花を生けましたわ!ソランジュの反応が楽しみですわ!
「あの、お嬢様」
「ええ、ソランジュ」
「もしかしてこの花瓶、お嬢様が生けてくださったのですか?」
うふふ。私からの恐ろしい嫌がらせに、ソランジュも気付いたようですわね!
周りはざわざわと騒ぎ立てますわ!
「ミシュリーヌ様がそんな悪質な嫌がらせを…?」
「いやまさか、そんな…」
「ええ、そうですわ!」
「えっ!?ミシュリーヌ様が本当にやったの!?」
「そんな…俺たちの憧れのミシュリーヌ様がそんなことをするはずが…」
胸を張って堂々と嫌がらせを告白する私。それに対してソランジュは…。
「…嬉しいです!ありがとうございます、お嬢様!」
「え?」
「お嬢様に誕生日をお祝いしていただけて嬉しいです!」
…そ、そういえば今日はソランジュの誕生日でしたわ!そんなつもりなかったのに!
「い、いえ、あの」
「お嬢様!お嬢様の優しさ、私絶対忘れません!」
「なんだ、そういうことだったのね!流石はミシュリーヌ様!」
「ちょっと色々紛らわしかったけれど、流石はミシュリーヌ様だな」
「俺は最初からミシュリーヌ様を信じてたぜ!」
…色々、上手くいきませんわ。
「あのソランジュって聖女様、ちょっと調子に乗っていませんこと?」
ある日私は、ソランジュに対してのそんな陰口を聞いてしまいましたわ。
「いくら聖女としての力に目覚めたとはいえ、ミシュリーヌ様にベタベタと…許せませんわ」
「そうですわよね、私達だってミシュリーヌ様とお近付きになりたいですのに」
「虐めてやろうかしら」
偶然ですけれど、聞いてしまったものは仕方がありませんわ。ソランジュを虐めるのは私の役目。その役目を奪わせたりしませんわ!
「もし、そこの貴女たち」
「み、ミシュリーヌ様!?」
「ソランジュは私にとって大切な存在ですの。もしソランジュを虐めたり、これ以上陰口を言ったりしたら許しませんわ」
傷ついたような表情をする彼女たちがちょっと可哀想になって付け加える。
「けれど。もしソランジュをこれ以上害さないのでしたら、お近付きになってくださると嬉しいですわ。私も貴女たちと仲良くなりたいんですのよ」
そう言って微笑めば、彼女たちは笑顔で頷いてくれましたわ。
後々、それを誰かが見ていたようで聖女様を守るミシュリーヌ様、なんて噂されてしまったのは迂闊でしたけれど…!
「そうですわ!悪口を大きな声で喋ってあげれば悪役令嬢アピールになりますわ!」
流石は私、良いことを思いつきましたわ。ということで早速、ソランジュの悪口をナディアとオリアーヌに大きな声で話しかけますわ。
「ナディア、オリアーヌ」
「はい、ミシュ様」
「どうしましたか?」
「最近、ソランジュは調子乗っていませんこと?」
「え?」
きょとんとするナディアとオリアーヌ。
「生徒会活動で、殿下とどんどんと仲良くなって生意気ですわ!ムカつきますわ!」
まあ、本当は全然そんなことないのですけれど。周りの反応は…?
「またミシュリーヌ様が可愛らしいヤキモチを妬いていらっしゃるわ」
「婚約者にあれだけ可愛らしい聖女様が付き添っていれば、ヤキモチを妬くのも当たり前ですわよね」
「王太子殿下の心にはミシュリーヌ様しかいらっしゃらないのに、本当にミシュリーヌ様はお可愛らしい」
うんうん、いい感じに悪役令嬢ムーブが出来ていますわね。生温かい視線に感じるのは、きっと気のせいですわ!
「ミシュ様、ヤキモチを妬いてしまうのはわかりますが、あんまり言うとソランジュ様が傷ついてしまわれますよ」
「そんなこと私は気にしませんわ!」
「ミシュ様、聖女様のおそばでそんなお話をしなくても」
「殿下は私の婚約者ですのよ!ヤキモチを妬かせるソランジュが悪いのですわ!」
オロオロするナディアとオリアーヌ。ソランジュは目に涙を溜める。う、罪悪感。しかし、これも完璧な悪役令嬢として必要なことですわ!ごめんあそばせ!
「ミシュ」
シルヴェストルが近付いてきましたわ。ソランジュを守るために、私を叱りに来たのかしら。
「そんな風に言ってはダメだよ、ミシュ。ソランジュと仲直りしなさい」
やっぱり!
「嫌ですわ!」
「心配しなくても、僕はソランジュとは何もないよ。僕が好きなのはミシュだけだ」
嘘ばっかり!
「そんな嘘には騙されませんわ!」
「嘘じゃないよ。僕はミシュを愛しているんだ」
「口ばっかり!私がどんなに好きだと言ってアピールしても、顔を真っ赤にしてぷいっとそっぽを向くではないですか!私のことなんて嫌いなのでしょう?」
私がそう言うと、何故か驚いた表情のシルヴェストル。よく見ると、セラフィンやルーセル、ナディアやオリアーヌやソランジュまで驚いた表情。なにかしら?




