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奴隷は私だけのおもちゃですわ!悪口なんて許しませんわ!

ルーセルを公爵家に迎えてから数日が過ぎましたわ。最初は遠慮がちで気にしいだったルーセルも、温かく迎えて優しく接するお父様とお母様に安堵したようですわ。まだ少しぎこちないながらも、普通に家族として接する…ことができるよう、笑顔で過ごしているのがわかりますわ。


そして、私にも大変懐いておりますの。奴隷として扱うためにどう教育したものかと思っておりましたが、進んで私のためにと行動をするので調教は必要なさそうですわ。


ルーセルにも家庭教師の先生は付き、それぞれ勉強をしているので大半の時間は一緒にいられませんが、一緒にいるときはとても優秀な奴隷ですわ。何も言わずとも身の程をわきまえるなんて、なんて可愛らしい。悪役令嬢たる私に相応しい奴隷ですわ!


「ルーセル、ミシュ。二人にお話があるの」


そんな日々を送っていたある日、ルーセルと二人でアフタヌーンティーを楽しんでいたところにやってきたお母様にそう言われましたわ。


「義母上、どうかされましたか?」


「実は今度、私がお茶会を開くことになって。屋敷に私のお友達やその子供達が来ることになったの。その際に子供達は子供達で遊ぶのもいいだろうということになって、ミシュとルーセルには私達大人とは別室でお茶を楽しんでもらうことになったわ。ルーセルはうちに来てから初めてのお茶会だし、ミシュは私達が大切にしすぎて他の子達と遊ぶのも初めてでしょう?ルーセルとミシュにはお互いがいるから大丈夫だとは思うのだけど…」


「義姉上、そうなのですか?」


「実はそうなのよ」


お父様もお母様も、過保護なのよね。学園の生徒と同じレベルの知識をこの歳で持つ私が周りの子供達から疎外されたり傷つけられたりするのではないかと、この歳まで親がいる場にしか連れて行ってくれなくてちゃんと〝同じ年頃の子〟と遊ぶのはこれが初めてになる。


「では、僕が義姉上をお守りしますね」


「ふふ、ありがとう。ルーセルがいると心強いわ」


こんなに忠誠心の高い奴隷もなかなかいないもの。


「…義姉上、不意打ちは反則です」


「なんのことかしら」


「あらあら、うふふ。ルーセルはミシュに褒められて嬉しいけどちょっと気恥ずかしいのよ」


「義母上!」


「うふふ」


なるほど、本当に可愛い奴隷だ。


「では、そういうことだから。当日はよろしくね」


「はい、お母様」


「お任せください」


ということで、同世代の子供達との初交流では悪役令嬢として華麗に振舞ってみせますわ!













そして、お茶会当日。続々と貴族のご婦人方が子供達を連れてやって来た。


「では、皆様こちらへどうぞ」


私は中庭に子供達を案内する。ここで子供達だけのお茶会を開くのだ。


「まあ、素敵な中庭ですわ!」


「可憐な花がミシュリーヌ様に良く似合いますね」


「うふふ、ありがとうございます」


口々に飛び交うお世辞にも笑顔で対応する。さすが私、悪役令嬢として完璧なまでの猫かぶり。


そしてお茶会が始まる。みんなで中庭に設置されたテーブルを囲んで、お茶を楽しみつつお菓子を摘む。うん、今日も美味。


「美味しいお茶ですわね!」


「セタンタの紅茶を使用しておりますの。セタンタは茶葉の産地で最も質が良いとされているでしょう?」


「なるほどそれでこの味ですか。納得ですね」


子供達も精一杯大人ぶっているが、所詮は子供。とはいえ味覚は大人より鋭い。お茶を褒めるその言葉は本物だろう。


「…そういえば。ミシュリーヌ様の義弟殿は本来、セタンタ伯爵領の跡取り息子だったとか」


「…ええ。僕はそこの一人息子でした」


ピリッと空気がヒリついた。他の子供達は突然の会話の流れに戸惑い固まっている。このガキ、確かミレイユ侯爵夫人とやらの息子か。余計なことを…私の悪役令嬢としての晴れの舞台を邪魔する気か。


「伯爵家の方は、実のお父様の弟君に継いでいただいたとか。それにしても伯爵家の跡取りから公爵家の跡取りになるなんて、上手くやりましたねぇ」


「…そんなことはありません」


「おや、気を悪くしましたか?褒めているのですよ?」


実の両親への想い、今の…公爵家の家族への想い。色々な想いがあるのだろう、怒りを覚えつつも場を壊さないように必死に我慢するルーセルの顔を見て、私の方が怒りがこみ上げてきた。


「嘘を吐くな、カス。消えろ。私の義弟(奴隷)を貶めるな」


私の突然の暴言に、全員が目を見張る。


「…失礼致しました。つい。…私の義弟を貶める発言、たしかに聞き届けましたわ。リゼット。お母様に緊急でご報告を。我が公爵家の正統な跡取りが貶されたのです。然るべき対応が必要ですわ」


「は、はい!ミシュお嬢様、緊急でご報告をしてきます!」


「え、あ、待ってください、そんなつもりは!」


「そんなつもりでなければどんなおつもりかしら。場を壊してまで私の可愛い義弟を貶めるなんて。絶対許しませんわ」


その後、当然の流れでお茶会はお開きに。後日、事実確認の後ミレイユ侯爵夫人とあのガキからは正式に謝罪があった。なお、事実確認の報告を読む限り私の暴言はなかったことになっていた。

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