学園に連れていく使用人が多過ぎますわ、お断りしますわ!
孤島にある貴族学園への入学まであと少し。お父様とお母様は、私とルーセルにたくさんの使用人達を連れて行かせようとしているのですけれど…。
「お父様、お母様、ルーセルもちょっとよろしくて?」
「どうした?ミシュ」
「貴族学園への入学の件で、ちょっとご相談がございますの」
「まあ、なにか不安なことがあるのかしら?」
「いえ、その…」
お父様とお母様が善意で使用人達を連れて行かせようとしてくれているのはわかるので、ちょっと申し訳ないのですけれど…。
「私、貴族学園に連れて行く従者はリゼットとネル、ネイの三人で充分だと思っていますの。だめかしら」
「え?」
「…どうしてですか?義姉上」
悪役令嬢を演じるので、複数の使用人を連れて行って巻き込み事故を起こしたくないからですわ!とは言えないし…。
「えっえっと…そ、そう!貴族学園は生徒の自立を促すために、寮生活をするのですわ!それなのに、許されているとはいえ使用人をたくさん連れて行ってはせっかくの成長の機会を失ってしまいますわ。私、出来る限り多くのことを身に付けたいんですの。だめかしら?」
「…なるほど、さすが我が娘だ。立派に成長したな、ミシュ」
お父様は私の頭を撫でる。そして、リゼットとネル、ネイを見回す。
「娘を頼めるかな?」
「はい、旦那様!」
「お任せください」
「絶対どんなものからもお守りします!」
お父様はその返事を聞いて、頷いた。
「…いいだろう。少数精鋭、本当に頼れる使用人として三人を選んだんだろう?連れて行かせるはずだった使用人達は、このまま屋敷で留守番としよう。ただし、困ったらすぐに使用人達を派遣するからちゃんと言うんだよ」
「はい、お父様!ありがとうございます!」
よし、これで多くの使用人達を巻き込むのは防げましたわ!
「義父上、義母上。それでしたら僕も使用人を三人選ぶので、僕も義姉上と同じ条件で入学させてください」
「ルーセルも?」
「はは、本当に子供の成長は早いな。二人とも自立心旺盛で大変結構。ただ、ルーセル。連れて行く三人は慎重に選びなさい」
「はい、義父上」
こうして私とルーセルは信用出来る使用人を三人だけ連れていくことになりましたわ。
「ミシュお嬢様」
お父様とお母様とルーセルに連れていく使用人は三人だけにしたいと相談して認められた後、部屋に戻るとリゼットから話しかけられた。
「なにかしら?リゼット」
「まさか私とネルとネイだけ連れて行ってくれるなんて思いませんでした」
「ああ…相談していませんでしたものね。嫌かしら?」
私がそう聞けば、リゼットはブンブンと首を横に振る。
「まさか!とっても嬉しいです!でも、他の使用人は本当に必要ないのですか?」
「必要ない、というと語弊があると思いますけれど…」
私はリゼットの目を真っ直ぐに見つめて言う。
「リゼットとネルとネイだからこそ、安心してそばにいてもらえますのよ。わかってくださるでしょう?」
「ミシュお嬢様…っ!」
リゼットは涙ぐむ。そんな私に心酔しきっているリゼットだから、安心してつれていける。何があっても私の味方だとわかるから。
「あのお嬢様…」
今度はネルとネイから話しかけられた。
「なにかしら?」
「俺とネイは基本的なことは一応教わっていますが、本来護衛です。リゼットが何かしらの理由で動けないような場合には俺とネイがお嬢様の身の回りのお世話をすることになるのですが、大丈夫でしょうか?」
「そこも含めてあなた達兄妹を信じているのですわ。もし不安な部分があれば、リゼットから教わってきちんと身につけておきなさい。学園生活まであと少しですけれど…ネルとネイなら、出来るでしょう?」
「…お任せください。そこまで信頼してくださるのなら、やってみせます」
「頑張ります!」
ネルとネイも気合い充分ですわね!
「リゼットも、ネルとネイの負担が増えないよう自分の体調管理はしっかりするのですわ」
「はい!ミシュお嬢様が安心して過ごせるように、私が常におそばを離れずに済むよう体調管理は万全にします!」
「良い子ね」
飴玉を渡す。リゼットは嬉しそうに受け取る。
「では、改めて。リゼット、ネル、ネイ。私と一緒に来てくださいませ」
「もちろんです!」
「お任せください」
「私でよろしければ是非!」
ということで、三人にも納得してついてきてもらえることになりましたわ!
その後、ルーセルも連れていく三人の使用人達を選びましたわ。そして、私とルーセルは三人の使用人達にお願いして服などの必需品の荷造りを始めましたわ。
「制服も届きましたね、義姉上」
「当たり前ですけれど、サイズもぴったりで上品なデザイン。最高ですわね」
「はは。そうですね、義姉上。義姉上とお揃いで嬉しいです」
「もう、ルーセルったら」
頭を撫でてやれば変わらない笑顔で笑うルーセル。けれど、身体差は逆転してしまいましたわ。幼い頃は私の方が少し大きかったから余裕で頭を撫でられましたのに、今では私が背伸びしてやっと頭を撫でられる。
「…なんだか悔しいですわ」
「え?義姉上、なんて言いました?」
「なんでもありませんわ。ちょっと、独り言ですわ」
これから益々身長差が出来るのかしら。なんだかとっても悔しいですけれど、これも成長した証。少しくらいは仕方ありませんわね。




