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【電子書籍化】悪役令嬢に転生したのでノリノリでなりきりしてみたところ、何故か溺愛されている気がしますわ!?【発売中】  作者: 下菊みこと


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ノブレスオブリージュと称してヒロインの家を助けていたら、なんだか公爵家御用達のお店みたいな扱いになっていましたわ?

「いらっしゃいませ!お嬢様!坊ちゃん!リゼットさんと護衛の皆さんも!」


今日も笑顔でソランジュが出迎えてくれますわ。毎週末ソランジュのパン屋でパンを買って、孤児院の子供たちに届けるのが習慣になったのですけれど、それが意外な結果になりましたわ。


なんと、ソランジュのパン屋さんが公爵家御用達の看板を掲げるようになりましたの!


いや、嘘じゃないけれど私達の許可くらい取りなさいよ…とは思いましたけれど、満面の笑みで接客するソランジュには何も言えず。


「でも、このパン屋さんもすごい人気店になりましたわね。お向かいの行列のできるパン屋さん、いつのまにか消えてしまいましたわ」


「それなんですけれど、実はあのパン屋さんに嫌がらせを受けていたんです!でも公爵家御用達の看板を出すことができたから、嫌がらせはピタリと止みました!そしていつのまにか居なくなってくれたんです!全部お嬢様と坊ちゃんのおかげです!ありがとうございました!」


「でも、なんだか悪いですわね。ソランジュのこのパン屋さんは超人気店になったのに、毎週末私達のためだけに貸し切りにしてもらってしまって…もう買いに来ない方がいいかしら?」


私がそう問えば、ソランジュはブンブンと首を横に振る。


「そんな!ぜひこれからも来てください!」


「そう?そう言っていただけると助かりますわ。孤児院の子供たちも毎週末とても喜んでくれて、楽しみにしておりますもの」


「よかった…というか、お嬢様。私の名前覚えてくれていたんですね」


「ええ。あんな満面の笑みで自己紹介されたらさすがに忘れませんわ」


「え?えへへ…」


照れ笑いするソランジュはさすがヒロイン。可愛らしさ抜群。これは攻略対象であるルーセルもイチコロかと、ルーセルの顔をこっそり覗き込んだが澄ました顔。まあ、まだルーセルも子供ですものね。


「じゃあ、そういうことでまた今日も全部買わせていただきますわ」


「ありがとうございます!」


「ここのパンは本当に美味しいですわ。私も孤児院に持っていく時についつまみ食いしてしまいますもの。絶対絶やしてはダメよ?」


私がそう言えば、ソランジュは大きな目をウルウルさせながら大きく頷いた。


「はい、ありがとうございます!」


そして私は馬車に乗って孤児院に向かう。


…そういえば、こんなにヒロインと仲良くして大丈夫かしら?まあ、学園に入学してから手のひらを返していじめるようになった方がソランジュにより精神的ダメージを与えられて逆にいいかもしれませんわね。思わぬ副作用ですわ!やはり私、悪役令嬢を演じるのに相応しいですわ!


その後孤児院にいつも通りパンを寄贈して、孤児院の子供たちに喜ばれて屋敷に帰りましたわ。















私はソランジュ。平民で、パン屋の娘。そんな私には悩みがあった。それは向かい出来た新しいパン屋さんが私の両親の営むパン屋に嫌がらせをしてくること。


悪い噂を流して来たり、お店の前で誹謗中傷してくる男の人を雇っていたりしたのは全部あのパン屋さんだと思う。けれど証拠がないので何もいえない。


向かいのパン屋さんが行列のできる人気店になっていき、何故か美味しいパンを作る両親のパン屋がどんどん経営が苦しくなる。私は悔しくて、でも何も出来なかった。


けれど、奇跡は起きた。


この辺りを治める領主である公爵様のお嬢様と坊ちゃんが、うちのパン屋を支援してくれるようになったのだ。


初めは、お嬢様と坊ちゃんが侍女のリゼットお姉さんとともにこっそりお屋敷を抜け出した時。リゼットお姉さんがうちのパン屋と向かいのパン屋さんのパンを買って、お嬢様と坊ちゃんが食べ比べをしてくれたらしい。


そしてうちの方が美味しい、うちの方が嫌がらせも受けているようだと判断してくれた。


そんなお嬢様と坊ちゃんは、うちのパン屋からパンを買い占めて孤児院に寄贈してくれた。それも多めの金額を払ってくれた。これだけでうちのパン屋の経営が楽になり、家計もそれだけ楽になった。


さらに、公爵家御用達の看板を掲げられるようになり向かいのパン屋さんの嫌がらせがなくなって、いつのまにか向かいのパン屋さん自体が無くなった。


お嬢様と坊ちゃんには本当に、感謝してもしきれない。


そして今日もお嬢様と坊ちゃんはうちのパン屋に来てくれた。


「いらっしゃいませ!お嬢様!坊ちゃん!リゼットさんと護衛の皆さんも!」


今日も笑顔でお嬢様と坊ちゃんを出迎える。お嬢様と坊ちゃんもそんな私に笑顔を見せてくれた。


「でも、このパン屋さんもすごい人気店になりましたわね。お向かいの行列のできるパン屋さん、いつのまにか消えてしまいましたわ」


「それなんですけれど、実はあのパン屋さんに嫌がらせを受けていたんです!でも公爵家御用達の看板を出すことができたから、嫌がらせはピタリと止みました!そしていつのまにか居なくなってくれたんです!全部お嬢様と坊ちゃんのおかげです!ありがとうございました!」


「でも、なんだか悪いですわね。ソランジュのこのパン屋さんは超人気店になったのに、毎週末私達のためだけに貸し切りにしてもらってしまって…もう買いに来ない方がいいかしら?」


お嬢様にそう問われて、私は思いっきりブンブンと首を横に振る。そんなわけはない。このお店を立て直せたのは全部お嬢様と坊ちゃんのおかげなのだから!


「そんな!ぜひこれからも来てください!」


「そう?そう言っていただけると助かりますわ。孤児院の子供たちも毎週末とても喜んでくれて、楽しみにしておりますもの」


「よかった…というか、お嬢様。私の名前覚えてくれていたんですね」


「ええ。あんな満面の笑みで自己紹介されたらさすがに忘れませんわ」


「え?えへへ…」


お嬢様に顔と名前を覚えていてもらえるなんて嬉しい。お嬢様と坊ちゃんは私の大恩人だ。これから少しでも、何か返していけたらいいのだけれど。


「じゃあ、そういうことでまた今日も全部買わせていただきますわ」


「ありがとうございます!」


「ここのパンは本当に美味しいですわ。私も孤児院に持っていく時についつまみ食いしてしまいますもの。絶対絶やしてはダメよ?」


お嬢様のその言葉に、私は思わず泣きそうになる。お嬢様の気持ちがとても嬉しい。私は大きく頷いた。


「はい、ありがとうございます!」


そして私は馬車に乗って孤児院に向かうお嬢様と坊ちゃんを見送った。いつか、きっと何かしらお嬢様と坊ちゃんの役に立ちたい。その思いを胸に、今日も私は店に立つ。

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